一緒に助かるために

遠慮せずに助けを求める

「視覚障害があるので、人に迷惑をできるだけかけたくない」。 緑内障のため目が不自由な吉田千壽子さんは、一人では到底避難できないと、一度は死を覚悟した。 しかし、子どもたちの顔が頭をよぎり、生きることを決断。向かいに住む女性の名を叫び、手を借りながら避難を始めた。 津波が迫る中、夢中で走って転倒もしたが、「誰か!」と助けを求め、近くの男性に高台まで引っ張り上げてもらった。「遠慮しないで、手を貸してもらうことが一番だと思う」

吉田千壽子さん

職場の同僚の理解、手助けが必要

地震後のひび割れた道、高台への上り坂を、車いすでどう素早く避難するか。 地震発生時、海に近い工場で、作業用のいすに座って仕事をしていた葉澤健一さん。 同僚が車いすを用意してくれ、避難を始めることができた。目指す高台まで、およそ10分。 道は陥没、横切りたい道路は車で渋滞し、なかなか前に進めない。同僚に車いすを押してもらい、かろうじて難を逃れた。 障害のある人にとって、「こういうことをやってください、と意思表示することが課題」だという。

葉澤健一さん

本人も、助かるための準備を

筋ジストロフィーのため電動車いすで生活する駒場恒雄さんは、津波の犠牲になった仲間の話を聞いて衝撃を受けた。 「助けて」と言い出せず、「私はいいから、みんな逃げてくれ」と言ったという。自分の命を諦めてほしくない。 駒場さんは、障害者自身も助けてもらうための準備をしておく必要があると訴える。 自分を背負ってもらえる“おんぶひも”、充電がいらず軽量な手動の車いす。 「誰かがやってくれるだろう、ではいけない。当事者から発信していかないと」

駒場恒雄さん

課題は・・・

 東日本大震災で犠牲になった人のうち、障害のある人の死亡率は、被災住民全体のおよそ2倍だったと指摘されています。そして、証言からは、障害のある人が、自ら助けを求めることに“遠慮”や“ためらい”を持っていることがうかがえます。
 一方で、周囲の人たちは、支援をしようという気持ちはあるものの、どうしたらいいのかわからない、ということもあるのではないでしょうか。災害時に助け合えるために、日頃から何をしたらよいのでしょうか。

考えるポイント

1.「受援力」を発揮する
「助けてください」「手伝ってください」、と言うのは勇気がいります。 この援助を求める力を「受援力」と言います。 「助けてください」と言われれば、多くの人はできる限りの支援をしようとします。 自力で避難することが難しい人は、できるだけ平常時から「受援力」を発揮し、「助けてください」「手伝ってください」と声をかけるようにします。
2.具体的に何が必要かを伝える
高齢者、障害者の介助や支援の経験をしていない人は、何をどう支援すればよいかわかりません。 「目が見えないので、手を貸してください」「車いすを押してください」など、具体的に援助してもらいたいことを伝えます。 また、自助として「おんぶひも」を用意しておき、「このおんぶひもで私をおんぶしてください」と手伝ってもらいやすくするのも効果的です。
3.平常時の支援者と避難訓練をする
災害時に頼りになるのは、日頃から支援をしてくれている地域の人や福祉関係者です。事前に話し合って、避難場所、避難方法、避難支援者などを決め、訓練をすることで、本人も支援者もより安全に避難をすることができます。

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