「ロング・グッドバイ」ドラマのみどころ

孤高の探偵が一人の男と出会ったとき、事件は静かに幕を開ける…。

平成26年度の土曜ドラマ第一弾は、ハードボイルドの最高傑作と呼ばれ、
フィリップ・マーロウという名探偵を世に送り出したアメリカの小説
「ロング・グッドバイ」(レイモンド・チャンドラー作)のドラマ化です。

脚本家のことば
 … 渡辺あや

その人を想うと、世界が輝けるものだと思い出す。夢をみる気持ちにも似て、恋と違うのは、何も奪われることなくただ与えられるばかりであるところ。心から誰かに「憧れる」ことができたとき、その恩恵は憧れられているあちらにではなく、憧れているこちらに降り注ぐものである気がします。

レイモンド・チャンドラーによる原作を一読するなり、どうにかこれを映像化したいと願ってしまったのはきっと、長く忘れていた「憧れ」という感情を、あまりにも鮮やかに思い出したからです。

「何の見返りも求めず、ただ自分が正しいと思う方を選ぶ」

そんな人間として生きていると、いったいどんな目に遭い何をどれだけ失うのかということを主人公・増沢磐二が身をもって教えてくれる、つまるところ本作はそういう話です。それでも彼の傷だらけの横顔、それをいつでも胸に思い出せるというだけで、なんだか百万の味方を得たような気持ち。なんなら自分もいつか「そっちを選ぶ人間になれるかもしれない」、そんな気さえしてくるのです。

演出にあたって
 … 堀切園健太郎(NHKエンタープライズ)

日本版『ロング・グッドバイ(長いお別れ)』!?

なんつー企画。んな無茶な。すでにアルトマンが映画化しているし、『ハゲタカ』や『外事警察』で企業や組織の中でのハードボイルドを描いてきたとはいえ本家本元とは……ハードルが高すぎる。

ハードボイルドの大家の先生には「何てことしてくれるんだ!」と言わんばかりに門前払い。とある映画のプロデューサーには「ハードボイルドは絶対にヒットしないよぉ」と耳打ちされ……。

しかし、アメリカの戦後の喪失感を描いた原作に強く魅かれた。戦後からの復興と震災からの復興が重ね合わされ、原発問題から東京オリンピックへの流れが奇妙に符合する今、価値観が大きく揺らぐ時代に、個人としてどう生きるべきかというテーマに切り込めるのではないかと―――。

脚本は今一番仕事がしたかった渡辺あやさん、音楽は演出デビュー作からの付き合いである大友良英さん、日本のマーロウはこの人しかいないとオファーした浅野忠信さんほか綾野剛さんや小雪さん冨永愛さんなど豪華俳優陣に、『外事警察』を支えてくれたスタッフが再結集し、最強の布陣に。

もう怖いものはない。

「今までに見たことのないドラマ」を目標に、戦後の資料を漁った上でスタッフを鼓舞したキーワードは三つ。「無国籍に」「時代を超えろ」そして「毒と不純物を盛り込め」。日本版『ロング・グッドバイ』とくとご覧いただきたい。

制作にあたって
 … 城谷厚司 チーフ・プロデューサー(NHKエンタープライズ)

このドラマのスタイリスト・北村道子さんは、チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を10年に一回読み返しているという。

実際ドラマの準備を進める中で、「ロング・グッドバイ」は人生のバイブルだ、という熱狂的なファンに少なからず出会った。

ドラマの企画が生まれたのは約2年前。カーネーションの脚本を書き上げてしばらくたった頃、渡辺あやさんが「コレ、面白いですよ」と勧めてくれたのが最初だ。「貫く、ということをやりたいんですよね」と渡辺さん。最近は現実と安易に折り合うことを「成長」だとするドラマが多い中、ぶれず、動ぜず、信じたものを貫いていく主人公がとても魅力的でドラマチックに見えた。今の日本には絶対にこういうヒーローが必要だ!

さて、この「魔物」のような原作を、しかも文化や価値観が全く違う日本を舞台に再構築する作業は一筋縄ではいかなかった。とは言えこれはフィクションである。その強みを存分に生かし、時代の再現にとどまらない世界観を追求した。

スタッフが血眼になって探し出した小道具、そこに差し込んでくる清らかな光・・・そうした表現の積み重ねに、浅野忠信さんをはじめ「日本でこの役をやらせたら、この人しかいないでしょ」と思わせる俳優のみなさんたちの破壊力がかけ合わさって、リアリティーを越えた真実に導いていく。そんな作品に仕上がったと確信している。

ロング・グッドバイ

 土曜ドラマ『ロング・グッドバイ』

2014年4月19日(土)~ 5月17日(土)
 総合 毎週土曜 午後9時00分~9時58分放送 [58分・連続5回]

【原作】
レイモンド・チャンドラー
※キャッチコピーはレイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」(村上春樹訳)から引用しています。

【脚本】
渡辺あや

【音楽】
大友良英

【出演】
浅野忠信 綾野剛 小雪 古田新太 冨永愛 太田莉菜 滝藤賢一
田口トモロヲ 福島リラ 岩松了 でんでん 泉澤祐希 やべきょうすけ
高橋努 渡辺大知 遠藤憲一 吉田鋼太郎 柄本明 ほか

【演出】
堀切園健太郎(NHKエンタープライズ)

【制作統括】
 城谷厚司(NHKエンタープライズ)、谷口卓敬(NHK)