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いま語りたいこと、聞きたいこと... 「あまちゃん」スタッフ座談会

いま語りたいこと、聞きたいこと...
「あまちゃん」スタッフ座談会

いよいよ年末!
「あまちゃん」で沸きに沸いた一年を締めくくる番組として、「あまちゃん総集編」(2013年12月22日・23日)と「あまちゃん祭り」(2013年12月30日)が放送になります。
番組をさらに楽しんでいただくために、そして、ドラマを応援してくださった皆様への感謝として、「あまちゃん」の訓覇プロデューサー・井上ディレクター・吉田ディレクターに、収録の際のエピソードやイチ押しのみどころ、そして「ドラマにかける思い」など、貴重なエピソードをあれこれお聞きしてきました!

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広報・福島(以下、広報)
進行役のあまちゃん広報担当(ポスターやWEBを担当)の福島です。きょうは、インターネットでお寄せいただいた質問を軸に、スタッフのみなさんに、あれこれお伺いしていきたいと思います。
まず、ひとつ目の質問。ネットでは「あまロス」という言葉が流行りましたが、スタッフのみなさんも「あまロス」になりましたか?


「あまちゃん」グッズやパネルを囲みながら、思い出話に花が・・・
左から訓覇プロデューサー・井上ディレクター・吉田ディレクター

 

井上ディレクター(以下、井上D)
次のドラマがありますから、ロスしている場合ではないですね(笑)

吉田ディレクター(以下、吉田D)
僕もですね。今は、バラエティ番組などを撮っています。
でも、そうですね。「あまちゃん」の撮影が終わってから風邪をひいたので、それは「あまロス」なのかもしれません。撮影中は風邪とか、まったくひかなかったんですが…。

広報
収録中は緊張で、病気をしないのかもしれないですね。井上さんも何かのインタビューで「3つのドラマを同時に収録しているくらい忙しかった」と話しておられましたが、撮影で一番大変だったことって、何でしょうか?

訓覇プロデューサー(以下、訓覇P)
僕は「心配する」というのが仕事なんで、本当に大変なのは、現場のみんなだったんじゃないかな、と思います。
制作にあたって心配したことといえば、東京編のストーリーですね。東京に行ってアイドルになる…というのは、ある意味、賭けだなと思っていたので。
三陸の気持ちのいい世界から、東京へと世界が激変しますから、視聴者のみなさんに受け入れてもらえるだろうか、というのが気がかりでした。編集されたものを見て「これ、面白いんじゃない!」と思えるまでは、不安がありましたね。

井上D
三陸から東京に移って、キャストも総入れ替えに近いですからね。あと、セットや音楽も、すべてが新しくなりますから、今までのリズムがブッ壊れるな、とは感じていました。だから東京編の演出には、「自分のノリ」を変えて挑みましたね。

訓覇P
井上さん、故郷編と東京編で、演出的に「違ったなあ」というポイントはあったりしますか?

井上D
もう、すべてが違いました。言葉が違う、場所が違う、セットが違う。今まで慣れ親しんだものから、新しい場所に移るというのは大変なことで、イチからリズムを作らなきゃいけない。いったいどんなリズムなら受け入れられるのか、笑えるのか。それを再構築するのが難しかったですね。
たとえば故郷編だと、海女軍団がワーワー喋っているだけでも面白いじゃないですか。ここで話がこうなって、ここで笑えて、みたいなリズムがある。ところが東京編の女の子だと、同じようなリズムで喋らせても、同じようには笑えない。もちろんこれは逆もそうで、東京の女の子が面白く喋っているときのリズムで、海女さん軍団に喋ってもらっても、いつもの面白さは出てこないんです。

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広報
なるほど。吉田Dはいかがですか?

吉田ディレクター(以下、吉田D)
故郷編は、登場人物の気持ちがオンになっているシーンが面白かったですよね。でも東京編は、いわゆる「業界モノ」だから、オフの話のほうが面白い。なので、演出もオフビートにしないと、わざとらしさが際立つんじゃないか…と思っていました。
だからトークに「間」ができるように意識しましたね。特にハートフルとか、事務所関係のシーンは。
あとは、東京編では劇画っぽい感じのステージングもしてみました。有馬めぐが入ってくるシーンとか、そうですね。そんなことも意識していました。

井上D
僕は「話のきっかけ」になるパートを撮ることが多かったから、吉田さんは内容というか、中身の濃いパートを撮ることが多かったので、その影響があるのかもね。

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広報
吉田Dは、アキとずぶん先輩(編注・種市先輩)とのキスシーンも担当されていますよね。オフビートというわけではないですが、あそこはすごく、サラリとされていましたよね。

訓覇P
なんですか、広報的には不満なんですか(笑)

吉田D
アッサリしているな、とは自分でも思いました。でも「濃密なキスシーンを朝から見るのって、どうなの?」という気持ちもありましたね。
そもそも「キスするかしないか」に至る部分がドラマなのであって、「キスした!」っていうところは「しました!」っていう結論の部分なので、そこを生々しく見せるのは、あんまり趣味じゃなかったですね。でも、もっと見たかったのだとしたら、すいません(笑)。

広報
いやいや、僕はあれで良かったと思います(笑)。
ところで井上Dは以前、雑誌のインタビューで「あまちゃんはテレビのおもちゃ箱」と話しておられましたよね。吉田Dは普段、ドラマではなく「サラリーマンNEO」やバラエティの演出をされているわけですが、そういう意味では、「あまちゃん」は吉田Dと一緒に撮りたかった作品なのでは…?

井上D
そうです。一緒にやりたいと思っていましたね。
「あまちゃん」はドラマドラマしてない、テレビ的なものにしたいと思っていたので。
吉田さんはドラマのディレクター以上に、ドラマにも精通しています。そして、ドラマのディレクターにない視点や発想を持っているわけですから、そういったものを取り入れたかったんです。

訓覇P
ドラマとバラエティーでは使うテクニックが違うので、テクニックという面だけ見ると、吉田さんは大変だったと思います。だけど「何が面白いのか」を見極める感覚があるわけだから、バラエティのディレクターにドラマを撮ってもらうのは、決して冒険ではなくて、テレビの原点に帰るという意味合いでは、むしろ当然のことでした。

井上D
吉田Dに入ってもらったことで、確実に変化がありましたね。このチームが何を目指そうとしているのか、役者さんにも伝わったんですよ。うまくは説明できないんですが、純粋にドラマのディレクターだけで撮っていたら、「あまちゃん」は少し違った作品になっていたと思います。

広報
「あまちゃんチームは熱気が半端ない!」というご意見がネットからも来ていましたが、意気込みというか、こういうドラマにするんだっていう思いが、うまく共有されていたんでしょうね。

訓覇P
正確には、熱量じゃなくて、労働量が半端なかった(笑)
毎日ギリギリの状況でも、一杯一杯までやる。走り続ける。それが大事でしたね。

井上D
撮影は本当にギリギリだったけど、ダサイ映像は出ていないっていうか、ダサイんだけどダサくないというか、出来上がりは良いものになっていると思います。

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広報
話は変わりますが、視聴者の方から「ジオラマを使おうと初めから考えていたのですか」という質問が、けっこう来ています。確かに、ジオラマを使った説明や演出は話題になりましたね。

訓覇P
誰が言い出したのかは忘れたけど、相当初期からアイデアはあったよね。

井上D
ジオラマが観光協会にあって、日々発展していく…というのは、宮藤さんのアイデアでしたね。だから「これはなんですか」「ジオラマです。平成27年完成です」「完成なんかするわけねぇ!」みたいな大吉と菅原の掛け合いが、だいぶ初期の台本からあったんですよ。

広報
ジオラマを使った震災の表現、についても反響が多かったですね。質問の仕方が悪いかもしれませんが、震災のシーンの演出に際して、気を配られたことや、心がけられたことはありますか。

吉田D
さっきも話が出てきていましたが、はじめに言っておくと、ジオラマはかなり初期からアイデアがあって、震災を表現するために登場させたものではないんです。

訓覇P
震災をどう描くかについては、じっくりと考えました。ドラマの中で、ジオラマも被災します。その被災したジオラマを、説明という作為的な行為に使うわけですから、どう受け止められるかは、やはり気がかりでした。

井上D
重要なシーンですから、ジオラマの壊し方、ジオラマの見せ方というのも、本当に悩みました。いつもはセットの一部を壊すとき、美術さんに「壊してください」とオーダーするんですが、普通に壊してもらっただけでは、乱暴で、単に壊れたようにしか見えないんです。ガラスを割ってジオラマに立てかけてみたり、自分で試行錯誤しました。
そして、被災した劇中の町と、被災したジオラマでは、どこがどう壊れているとか、状況がまったく同じというわけではありませんよね。つまり、町とジオラマで、時間が二重に進んでいるんです。
視聴者のみなさんに違和感を感じさせないために、ジオラマのシーンは動画用のカメラではなく、デジタル一眼レフで静止画を撮りました。かなり被写体に近づいて撮って、時間を止めたように、部分部分をクローズアップで見せました。

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広報
ありがとうございます。次の質問ですが、「演出と演出の間で、申し渡しというか、引き継ぎなどの作業をされるのでしょうか?」というのが、これも結構来ています。

訓覇P
確かに、若い人にはけっこう聞かれますね。

井上D
申し渡し、やらないですね。昔はお互いのカット割りを見るなんて文化があったらしいですが。個人的には、これで良いと思います。

吉田D
例外は座り順ですね。初めてキャラクターが出てきた時は、どこのセットではどこに座るのか、そういったことは申し渡します。たとえば、無頼鮨であれば、誰がここで、誰がここ、みたいな感じですね。次に出てきた時に、座る場所が違うと混乱しますからね。

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広報
なるほど。これも沢山質問が来ているのですが、スタッフのみなさんが好きなキャラクターとか、キャラクターに関するエピソードとか、あるようでしたら教えていただけますか?

井上D
難しい質問ですね(笑)。
ドラマの撮り始めって、放送がない状態で撮ってるじゃないですか。それが進んでいくと、放送しながら撮っていくようになる。そうすると、現実とドラマの内容が重なり出すことがあるんですよね。たとえば今年のゴールデンウィークなんか、久慈に人がいっぱい来て、ドラマと同じようなことになったりしました。
現実とドラマが混じり始めて、東京編が始まって、小泉さんと薬師丸さんとが前に出てきて、歌番組のシーンを作ったりして、過去に飛んで、震災につながっていったりして…現実とドラマ、過去と未来のバランスが、どんどんめまぐるしく変わるんですね。
これは結構大変なことで、ふと「春子と鈴鹿ひろ美は、小泉さんと薬師丸さんじゃなかったら、いったいどうなっていたんだろうか。あの二人じゃなかったら、出来ないシーンがあったんじゃないだろうか」って、思うことがありました。

吉田D
僕はそうですね…勝地涼さんですかね(笑)

広報
前髪クネ男、大ブレイクしましたね。もっと見たかった!という声が凄く多かったです。

吉田D
一回きりの登場であのインパクト、やっぱり凄いですよね。やはりキャスティングがハマったのかなと思います。勝地さんでなかったら、あそこまでの衝撃はなかったと思います。もっと言えば、勝地さんでなければ、あそこまでは、やらせられなかったですね。勝地さんの素直さがハマったんです。
素直に演じてくださるから、笑わせてやろう的な、いやらしさがクネ男からは出なかったんですよ。だから、キャスティングの妙という観点から言えば、勝地さんのエピソードが頭に浮かびますね。
ちなみに、古田新太さんと一緒になって、クネクネの演技指導をしていました(笑)

井上D
あれは子鹿のバージョンアップなんだ!

吉田D
どうなんでしょうね。ただ、クネクネするのはタテなのかヨコなのか、という点については、「タテだけで言って下さい。ヨコはないです」と、はっきりと勝地さんにお願いしました。そういう演出はしましたが、後は古田さん。

吉田D
「前髪いけます!」と言ってましたね。よく憶えてます。あの前髪は、ご本人の地毛なんですよ。
今から思うと、演技、髪の毛の長さ、演出、本当に色々なバランスが取れていて、あのクネ男になったんです。作りっぽさというか、いやらしさが出ていたら、ダメだったと思います。
でも、一番は勝地さんの人柄ですね。スーパーアイドルという設定ですから、本当にイヤなキャラになっていたら、それは成立していないんです。勝地さんの人柄が、最終的にキャラクターを成立させたんだと思います。

井上D
言葉が悪いかもしれないけど、「ガラ」ってあるよね。こういう人柄だからこう撮れる、っていう。

訓覇P
現場をああいう雰囲気に出来るというのも、吉田さんの持ち味なんでしょうね。

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広報
それでは次に。雨が降っているシーンは、雨が降っている日を狙ったのですが、という質問が…。

訓覇P
表参道で春子とアキが傘をさしてるシーンかな?

吉田D
雨は、たまたまです。表参道のシーンについて言うと、あの雨のおかげで傘を出すことになって、その傘のおかげで、二人以外の背景が隠れてくれたので、いい効果が出たなと思います。
二人を遠くから撮りたかったんですが、そうすると、やっぱりいろんなものが映り込むんですよ。傘のおかげで、二人の世界にフォーカスできる感じがして、雰囲気がよくなりましたね。傘の色もいいアクセントになりました。

井上D
天候の話で言うと、2月に真夏のシーンを撮る必要があって、それはみんなキツかったと思うんですね。

吉田D
そうそう、上野駅で夏ばっぱを迎えるシーンも、実は表参道と同じ日に撮ったんです。だから本当は雨が降っていて、雨の合間を縫って、30分くらいで一気に撮りました。編集が2日後に迫ってたんで、もうこの日に撮るしかなかったんですね。
そしてもっと言うと、雨のシーンといえば、アキが子ども達に囲まれるシーンがありましたよね。これも同じ日に撮ったから、雨なんです(笑)。急いで雨合羽を買いに行ったりしましたね。
あと、アキがトンネルで「アイドルになりてえ!」と叫ぶシーンも同じ日。地面が濡れていたり、車が少なかったりで、これも雨がいい効果を出してくれました。

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広報
鈴鹿スペシャルはどんな味、というのもよく聞かれるんですが、実際はどうでした?
みなさん飲まれたんですか?

井上D
飲みましたよ。実際にすごくマズい! 濃ゆい!

吉田D
鈴鹿スペシャルは、僕の担当回で登場したんですよ。
あと鈴鹿スペシャルの味付けですが、本当はちょっと美味しくなるように、レシピがあったんです。でも、薬師丸さんがお芝居でガンガン材料を追加するので、結局まずくなってましたね。あと、飲んだ後に「ワーーーーーーーーーーー」ってみんなの声がハモるじゃないですか。これも実は、薬師丸さんのアイデアです(笑)

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広報
吉田さんは、ユイが「アイドルになりたーーい」と叫ぶシーンが好きだと仰ってましたよね。

吉田D
アキは「海女」にあこがれていたわけですが、ここでユイが「アイドル」っていう道を提示するわけです。大事なシーンですよね。そして、震災でトンネルや鉄道がどうなるか、僕たちは知っています。しかも宮藤さんが、ト書きに「トンネルに向かって叫ぶ」と書いてあったので、これはすごく大事なシーンなんだと、気を引き締めて撮影しました。
このシーンは心配だからか、井上Dも現場に来てましたね。

井上D
いいシーンだし、大事なシーンだよね。前半の象徴というか、アキとユイの物語の出発点というか。

訓覇P
このシーンは第3週だけど、ずいぶん後の第16週で、このシーンについて二人が話すんだよね。あの時、「ダサいって思ってたんだぞ」って。

井上D
「過去まで否定されたらやってらんねえ…」これ、凄くいいセリフですよね。

訓覇P
宮藤さんの脚本は、その場で劇的なことを言わないところが面白い。人って、その場でなく後になってから思うことが多い。伏線を張るという意味ではなくて、ストーリーが自然と後につながっていくんですね。

井上D
宮藤さんは「毎日15分ぶん書く」というスタイルなので、その結果かもしれないですね。

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広報
ナレーションが変わる、というのもあまり例がないですよね。
 

井上D
ドラマの全体がまだ見えていなかった頃に、「じゃあ2部は、ぜんぜん違う感じで」「なんだったら、ナレーションも変えて」みたいな意見が出てきたんですよね。
「週割り」という作業をまずやるので、第何週くらいから誰がナレーションをやる、というのも、かなり初めから決まっていました。ストーリーがどうなっていくか解らないと、誰がどこに登場するかも解らないから。そして、この作業で三部制になるっていうのが決まって。
だから、ナレーションが変わるというアイデアは、かなり最初からのものだったんです。やっているうちに、ハマったというか、自然になりましたね。

訓覇P
有村架純さんが、能年さんのお母さん役ですよね。だから2部に行ったときに、「ママはあの時こうでした」というナレーションが、能年さん、アキの声で入ってきたことで、ドラマがとても見やすくなりました。
ただ、宮本さんのナレーションが本当によかったので、宮本さんから変えない方がいいんじゃないか、というのは、プロデューサーとして少し悩みました。後から周りの人に聞くと、変えたのは大冒険だったねと言われましたね。

井上D
変えるというのは、大冒険だと思います。2部の出だしの、アキが絡まれるところなんか、ドキュメンタリータッチですからね。

訓覇P
2部についていうと、当初の予定より北三陸が残っている形になった。これだったらアキのナレーションでいい、と思いました。

井上D
2部は芸能界の話で、徹底的にアキが中心の、アキ目線の話で、アキがナレーション。そして、震災を迎えて、またナレーションが変わる。このおかげで、東北から取り残されてしまったアキ…というのが、見やすくなったと思います。

訓覇P
ナレーションの存在は、本当に大きいよね。
昔、「テレビドラマは電気紙芝居だ」ってバカにされていたわけだけど、そもそも紙芝居って、面白いものじゃないですか。ナレーションで語っていくのは好きじゃ無い…っていう人もいると思うんだけど、紙芝居的な面白さや、リズムも楽しんで欲しいと、思っていました。

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広報
「あまちゃん」の撮影では、ロケ地・久慈市のみなさんに色々とサポートしてもらったそうですが、地元ロケでの思い出や、エピソードなどはありますか。たとえば、撮影に関係なく、プライベートで行ったりはしましたか?

井上D
撮影が終わってから、行きましたよ。地元の方に案内してもらったんですが、「使ってれば良かった!」という、素敵な風景を発見できましたね。あれだけ回ったのに、まだあったのか!って。

広報
単なる残念な町じゃなくて、みどころが一杯あったんですね。エキストラのみなさんも、すごく協力的だったそうですが、こちらも何かエピソードはありますか。

井上D
そうですね。開通式のシーンの撮影で、エキストラのみなさんが、1980年代っぽい衣装を着てきてくださったのが、ありがたかったですね。当日は300人くらいに集まっていただいて、みぞれが降るくらい寒い日だったんですが、みなさんノリノリでやってくださって。嬉しかったです。
鉄道といえば、三陸鉄道のみなさんには、信じられないくらいのサポートをしていただきました。もう、分刻み、秒刻みでダイヤを対応してくださって。うちの制作部のH君なんか、自分でダイヤグラムが書けるようになっていました。
彼が「ここを、これくらいの速度で走っていただいて…」みたいな打ち合わせを三陸鉄道さんとするんですが、先方もロケのたびに、なんというか、撮られ方を研究されていて、「こう走れば自転車と列車が併走できます」とか、こちらのオーダーを超えた対応をしてくださるんです。運行司令部のみなさんも、運転士のみなさんも、本当に協力的でした。

広報
本当にありがたいですね…。

井上D
具体的な話で言うと、三陸に戻ってきた春子を、大吉が車の中で熱っぽく口説く…みたいなシーンがあるじゃないですか。あれ、台本上は「踏切で電車が来る」と書いてあったんですが、現場に行ったら、踏切がないんですね。そこで、車庫の近くで、バックミラー越しに、電車が近づいてくるのが解る場所を使うことに落ち着いたんです。
そのシーンが本当に凄いんです。セリフにあわせて、丁度いいタイミングで電車が動いて、迫ってくるように、電車にキューを出しているんです。芝居の流れにあわせてスイッチバックをしてくれたり、もう、ここはウルトラショットなんですよ。

広報
これだけの協力体制は、ちょっとあり得ないですね。

訓覇P
ドラマを作り始めて、宮藤さんや井上さん、スタッフのみんなが久慈の町へ取材に行ったんです。そこで町ゆく女性だとか、スナックのお客さんだとか、魅力的な人に出会ってきたことで、「風景ではなく人」というコンセプトが生まれた。この町が、「あまちゃん」を作ったということですね。
久慈を訪れた宮藤さんは、自分の頭の中のイメージを、実際の久慈に、凄いスピードで書き換えていましたね。現場でまめぶと出会って、そこから「まめぶみたいな」「甘いんだか辛いんだか」という台詞が出てきたり。
この町を訪れたことで、「アキは東京出身」という設定を、宮藤さんが思いつくわけです。これが、ドラマの決定打になったと思います。アキがどこ出身なのか、僕らは迷っていたんですよ。向こうで育った人が東京にあこがれる、っていうのが、普通で自然だから…。

井上D
現地取材で、本当にドラマの内容が変わりましたね。ざっくりした設定だけで考えると、春子が主役に近い位置にいるんです。だけど現場に行って、アキのキャラクターが生まれた。そして「女子高生が二人いるのはどうですか」というアイデアが宮藤さんから出てきて、ユイが生まれた。切断された線路を見て、ユイが少し離れた場所から、電車で通っているという設定が生まれた。トンネルの話もなんとなく、その時点では出てきていました。

広報
町のにおい、風景、町、すごく影響があるんですね。そういう意味では、町ってすごいパワーなんですね。

井上D
駅舎をメインの舞台のひとつにしよう、というアイデアも、現地で出てきたんですよね。吉本新喜劇みたいに、にぎやかに。そこから駅にスナックが隣接しているというアイデアも出てきて。

訓覇P
町が、世界観に大きく影響を与えましたね。本当に、町がドラマを作ったんです。

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ちょっと漠然とした質問ですが、「自分だけが知っている笑いどころ」とか、「気がついてもらえなかった小ネタ」とか「話しておきたいエピソード」なんかはあったりしますか?

訓覇P
僕は自己満足的なものを落としていくのが仕事だから(笑)、吉田さんどうですか。

吉田D
前髪クネ男のシーンですけど、太巻が撮影中の映画にカットをかけているんですね。実はそのカットにあわせて、ドラマにもカットが入っています。クネ男自体に全部もっていかれて、気がついてもらえなかったですが…。

井上D
いや、気がついてるよ(笑)
僕はそうだな、これは絶対気づかれないだろう、って思ってたのがあるんですよ。こないだ気づかれちゃったんだけど。

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どういうのですか?

井上D
防波堤に「STOP」って書いてあるじゃないですか。これ、実際の場所には何も書いてないんですね。僕らが書いたんです。
84年のシーンでは「STOP」になっていますが、アキが防波堤から飛び込む時だけ、実は「STEP」になってるんです。これに気がついた人が、ひとりだけいました。凄いなあと思いましたね。
気がついてもらえたって、美術チームが喜んでいましたね。

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貴重な小ネタ、ありがとうございます。吉田さん、他にありますか?

吉田D
防波堤といえば、アキが失恋して、自転車で海に飛び込むシーンがありますよね。自転車が空に飛んでいってから、落ちてくるシーン。ここで「自転車をどれくらい飛ばすか」ということを、真面目に考えましたね。
選択肢としては、ドボーンと落とすか、普通に飛ばすか、すっごく飛ばすか、というのがあると思うんです。どれが良いかと思って、映像技術さんに3パターンを作ってもらったんです。そしたら「すっごく飛ぶ」バージョンが本当に面白くて。
このシーンがあった8週は基本的にブッ飛んでいます。アキちゃんがヒビキにキレてキャラが変わったり、潮騒のメモリーについて延々と解説したり。
このブッとんでる回ですから、アキちゃんの失恋が可哀想に見えるよりは、おもしろい方がいいなと思って。
ちょっとやりすぎではないか…と周りに言われましたが、僕にしては珍しく「これでいかせてくれ!」とこだわって頼みましたね。

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訓覇P
小ネタをふられる役者さんたちも、大変ですよね。例えば松田龍平さんの「イッパーンダーンセーイ」とか。龍平さん、普段はこういう芝居をやらないから。いったいどうしよう、脚本に挑戦されている、そんな話をしていました。

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アドリブは古田さんの子鹿くらいで、基本的に99%ない、と訓覇さんが仰っていましたが、他に何かあったりしますか?

井上D
うーん。アドリブというか、カットをかけないから「役者さんがいたたまれなくなって何かしてくれた」というのはあるかな。
たとえば副駅長が「大吉がゴーストバスターズを歌ってから、春子に会いにいくのを見送った後、スナックに戻ってくる」というシーンがあるんだけど、戻ってきてからカットを延々かけなかったら、自分でゴーストバスターズを歌い始めてくれたりしましたね。歌えないんだけど。
だから、アドリブがないってわけじゃないんだけど、アドリブってわけでもないんですよね。

吉田D
目立ったアドリブと言えば、勉さんがナポリタンを食べるユイに、「チーズかける?」って聞く場面。ここは、塩見さんが自分で言った部分ですね。塩見さんが「今までこういう風に、思わず台詞が出たことはなかった。新しい何かが開けたね」と話していましたね。
この台詞は反響がすごくて、特に女性から「勉さんカッコイイ」っていう意見が沢山来たんです。これは本当に嬉しかったですね。

訓覇P
これをちゃんと受ける橋本愛さんも凄いよね。

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ありがとうございます。最後に、視聴者から特に多く寄せられた質問をいくつか。
まず「ドラマの初回で、どうして大吉は春子のメールアドレスを知っていたのか」というのがありました。

訓覇P
台本に「同級生だから」って台詞が入ってるように、同級生ネットワークからだと思います。

井上D
これも台詞にありましたが、あんべちゃんの同級生ネットワークからゲットしたんじゃないのかな、と思います。それ以上のことは、細かくは決めていないですね。

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これが一番多かった質問ですが、「アキの背中にウニをぶつけたのは誰ですか」というのが沢山来ていました(笑)

井上D
これは、助監督の村山君です(笑)

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あまちゃんのタイトルロールの輪っかの意味は?という質問もありました。

吉田D
これは、ウニです。はじめは、「あまちゃん」という書き文字だけがあったんです。それだけだと少し物足りないので、デザイン部の岩倉さんの所に行って、マルを書いてもらったんです。ロゴを作っている当時、ウニっぽいビジュアルを他に沢山作っていた、というのも影響していると思います。


デザインの岩倉さんは“潮騒のメモリーズ”の
看板のアキとユイのイラストも担当しています!

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「名前が春・夏・秋になっている理由は」というご質問も沢山いただきました。
「夏ばっぱから始まったものを受け継ぐから秋」というご意見もありましたが…。

訓覇P
実は、初めは違う名前だったんですよ。宮藤さんは本当に名前を大事にされる方で、物語が書き上がっていく過程で、アキという名前がついたんです。なので単純に、こうだという話ではないと思います。

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大吉と春子の話がいくつか出てきましたが、「春子が北三陸に帰ってきてから、二人はつきあってる期間があったんですか?」という質問もありました。

井上D
どうなんだろう。その時期、二人は他にやることがなかったのかも(笑)

訓覇P
現場でも、そういう設定についてはあまり話さなかったですね。見る人の解釈が入る余地がある方がいいというか、見ている人が面白ければいいわけですから。

井上D
ある時期から、しなくなってきましたね。最初のうちは当然、スタッフ間でキャラクターを共有するために話し合うんですが、そこを掘っていっても面白くならないな、と気がついて。普通のドラマでやるようなことをあえてやらないで、放置してみたんです。

訓覇P
もちろん自分の中での設定はあるわけで、役者さんやスタッフも、それぞれ「こうだ」と思って考えているものはある。けど、その設定を見せたいわけではないですからね。だから設定については、聞かれても、あんまり答えない。

井上D
小泉さんの衣装合わせの際に「ブティック今野の服を着ていったら面白い」みたいな話はしましたね。大吉とどうなっていたのかは、その延長線上にあるということです。
だけど「つきあってるんじゃないの?」と思えるような部分があるからこそ、大吉が身をひいて正宗を応援する、っていうのが生きてくるわけですから、ドラマって面白いですよね。

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広報
…ロングインタビュー、お付き合いありがとうございました。
最後に、総集編や「あまちゃん祭り」をご覧になる視聴者の方、そして「あまちゃん」を応援してくださった視聴者の方に、一言いただければと思います。
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吉田D
初めて担当したドラマでしたが、楽しく撮ることが出来ました。そして、みなさんに愛されることができて、幸せでした。本当にありがとうございます。

井上D
もうとにかく、吉田さんと同じく、愛されてよかった、受け入れてもらえてよかった、ということに尽きると思います。さらに面白い作品を作っていけるよう、がんばります。

訓覇P
応援、ありがとうございました。
メッセージというわけでは無いんですが、きょう渋谷の駅で、子どもが「あまちゃん」のテーマ曲を歌っているのを見たんです。子どもが歌ってくれている…というのが、本当に嬉しかったですね。
番組がきっかけで「母親やおばあちゃんと、久しぶりに語り合いました」というご感想を頂いたりもしました。祖母と母と娘の物語ですから、番組をきっかけに、家族で仲良くしてくださっているというのが、胸に来ましたね。
重ねて、本当にありがとうございました。

…というわけで、いかがでしたでしょうか?
貴重な豆知識、番組がもっと深くなるエピソードまで、盛りだくさんのインタビューだったと思います。
そして冒頭でもお伝えしましたが、12月22日からは「あまちゃん」総集編が、30日には「暦の上ではディセンバー これで見おさめ!? じぇじぇじぇ!“あまちゃん祭り”」が放送されます。こちらもぜったいぜったい、ご覧くださいね!

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「あまちゃん総集編」前・後編
BSプレミアム 2013年12月22日・23日 午後3時30分から

「暦の上ではディセンバー これで見おさめ!? じぇじぇじぇ!“あまちゃん祭り”」
総合 2013年12月30日 午前8時から午後6時まで
※途中ニュース等の中断あり


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