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死者急増! 肺炎の真実
健康

死者急増! 肺炎の真実

2007年2月21日(水)
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肺炎による死者はなんと年間10万人以上! 実はいま、薬が効きづらい細菌(さいきん)が増え、治療が難しくなっているのです。しかもガッテンが調べると、健康な人でも肺炎の原因になる細菌が住み着いている人がたくさんいるとの結果が。

そこで徹底的に調査すると、意外な場所に細菌から肺を守るポイントがあることがわかりました! 全国11の介護施設で肺炎による死亡率を半減させた新予防術を伝えます。

今回のお役立ち情報
01

「肺炎ってこんな病気」

肺炎の死亡者は戦後激減したにもかかわらず、この20年間でなんと2倍以上にまで増加しています。その原因のひとつは高齢化。そしてもうひとつの理由は、薬が効きづらい細菌が増えていることです。

まずは、肺炎という病気そのものについて見ていきましょう。

肺炎ってどんな病気?

肺が炎症を起こす病気が肺炎です。その最大の原因は細菌。細菌は炎症を起こすだけでなく、ひどくなると毒素を出して肺に穴を開け、ウミで肺が機能しなくなる場合もあります。さらに全身に菌が広がると、死に至ることもあります。細菌は炎症だけではなく、さまざまな症状を起こすおそれがあるのです。

こうした症状を起こす細菌には、たくさんの種類があります。これが私たちの体に住み着いていたら嫌なモノ。そこで大調査を行いました。

02

「まさか私が!?細菌大捜査線」

全く健康な人には、肺炎の原因になる細菌が住み着いていないのでしょうか? そこで大調査を行いました。

10代~50代で10人、高齢者10人、保育園児10人と、年代別に合計30人のノドや鼻の奥を調べ、肺炎の原因になる細菌がいないかどうかを調べました。すると、肺炎を引き起こす毒性の強い細菌が発見されたのはとっても元気な保育園児のAちゃんでした。いったいなぜ?

肺炎の原因菌調査の結果

  • 一般(10代~50代)の10人中 肺炎の原因になる細菌が見つかった人: 5人
  • 高齢者(65歳以上)の10人中 肺炎の原因になる細菌が見つかった人: 5人
  • 保育園児の10人中 肺炎の原因になる細菌が見つかった人:  10人全員。うち8人には、肺炎を引き起こす強い毒性を持つ「肺炎球菌」が見つかりました。

ここで疑問なのは、肺炎にかかる人や亡くなる人には高齢者が多いにもかかわらず、幼児のほうが細菌を持っている率が高かったということです。その理由を知るために、まずは肺炎球菌の正体を探ります。

幼児と肺炎の原因菌

専門家によると、幼児はほぼ全員が何らかの原因菌を保菌していると考えられます。これは、幼児の免疫が未熟であることが原因です。しかし幼児は後ほど述べるように、肺に細菌を入れないシステムがしっかりしているため、なかなか肺炎にはなりません。

幼いお子様がいて心配な方は、[1] 毎日のうがいや歯磨きをしっかりする、[2] 風邪やインフルエンザなどに罹患した場合にはすぐ医師の診察を受ける、などの対策を行ってください。

03

「肺炎球菌って何?」

私たちの体を細菌などの外敵から守ってくれるのは「免疫細胞」。肺炎の原因になる細菌が増えるのを防いでくれます。

しかし肺炎球菌の場合、肺炎球菌の周りを夾膜(きょうまく)という膜が囲っているために、免疫細胞が認識できず退治できないことがあります。こうした原因のため、肺炎球菌によって肺炎になると重症化しやすいのです。

このように、肺炎球菌は恐ろしいものですが、これを持っている幼児はなぜ肺炎にならないのでしょうか? その理由は私たちの体の仕組みにありました。

肺炎を起こす細菌が住み着くのは、鼻やノドの奥です。実は、細菌はここにいるうちは、ワルサをすることはほとんどありません。細菌が肺に入って増殖すると、初めて肺炎が起こるのです。

ノドの奥と肺は、「気道」という管でつながっています。管でつながっているのに、普段細菌は肺に入ることがありません。実はここにこそ、私たちの体の驚くべき仕組みがあったのです。

04

「肺に入らぬハイクオリティー」

ノドの奥に特殊なカメラを入れてみてみると、途中から2つにわかれていることが分かります。一つは肺につながる「気道」。そしてもう一つは胃につながる「食道」です。

試しに水を飲み込んでみると、カメラが何かに押され、映像が真っ白になりました。先生に聞くと、これは「ノドにフタができた」状態だといいます。

ノドの「フタ」とは?

ものを食べたり飲んだりをした際、それらは食道へと向かいますが、気道には入りません。食べ物や飲み物が分岐点に来た瞬間、ノドにあるフタが閉まって、気道への入り込みを防いでくれるからです。

フタが閉まるスピードを特殊なMRIで見てみると、ノドの奥に水がぶつかった瞬間、フタを閉める動きが始まっていることが分かります。そこからフタが閉じきるまで、なんと0.7秒! 私たちの体はこれほどの早業を行って、肺を菌から守っているのです。

私たちが生きていくためには呼吸しなければならないので、ふだん気道は開いている必要があります。一方で、食べたり飲んだりすることも生きるためには必要です。しかし口の中には菌が一杯。もし食べ物が気道に入ったら、細菌が肺に侵入してしまいます。

そこで、フタを必要なときだけ閉め、その後食べ物が通ったら瞬時に開きます。そうやって「呼吸」と「食事」を両立させ、なおかつ細菌から肺を守っているのです。

しかし、このフタのシステムが少しでもおかしくなると、大変な結果につながってしまうこともあるのです。

05

「細菌侵入!そのとき何が」

10年以上肺炎の治療に関わってきた医師によると、肺炎を繰り返す人には「食べ物を上手く飲み込めない」人が多いといいます。

そこで水を飲むときにかかる時間(フタが閉まる時間)を調べてみると、肺炎にかかったことのある人は確かに遅れていました。このとき何が起こるのかコンピューター上でシミュレーションしてみると、実はフタのしまりが1秒遅れるだけで、肺にモノが入ってしまうことが分かりました。

ある調査によると、肺炎を起こした人の7割にこうしたフタのしまりの遅れが見られました。さらに、眠っているときはこのフタのしまりが遅れがちになるため、危険が高くなります。

肺炎というと風邪の延長と考えられることが多いのですが、こうしたフタの遅れによりおこる肺炎があったのです。番組ではこれを「飲みこみ肺炎」と名付けました。

自分のフタが閉まる時間を測定できないか?

残念ながら、できません。また、「モノを飲み込みづらい」などの自覚症状だけでは本当に遅れているかどうか判定できません。「食事をするときに必ずむせる」などの自覚症状があれば、まず医療機関で診察を受けることをお薦めします。今回番組で行った実験は専門家のもと安全に最大限の配慮をして行いました。決してご自分でなさらないようにお願いします。

06

「発見!これが最新予防法だ」

ここからは対策編です。このフタの遅れを改善する方法があります。それは「歯みがき」。でも単なる歯みがきではありません。口の中の“ある場所”をみがくのが大事なのです。

全国の介護施設で行われた研究で、肺炎の死亡率を半減させた方法を教えてもらおうと向かったのは静岡県の歯科クリニック。しかし実際にその歯みがき法を見せてもらっても、単に歯をみがいているようにしか見えません。一体どこをみがけばいいの?

脳と歯ぐきの関係

脳の一部に損傷があると、フタのしまりが遅くなる人が多いことが分かっています。この場合、フタのしまりを早くする方法として、間接的に脳に刺激を与える方法が考えられます。

ある研究では、歯ぐきを刺激すると脳が活性化し、フタのしまりが早くなることがわかっています。そこで番組では、歯ぐきを刺激すると脳がどうなるか、実験を行いました。

脳の活動を調べる特殊な機械で、口などの感覚をつかさどる部分を調べてみます。歯だけをみがいたときに比べ、歯と歯ぐきを同時にみがいたときにその部分が活性化することが分かりました。歯ぐきには神経が多く通っているため、刺激により脳が活性化したと考えられます。

グラフ「飲みこみ時間の変化」

「歯と歯ぐきをみがく」──これが肺炎の最新予防法だったのです。

“歯と歯ぐきみがき”の注意点

  • 柔らかめの歯ブラシを使って下さい。
  • 歯ブラシをあてるのは歯と歯ぐきの境目です。
  • 力を入れず、優しく小刻みに歯ブラシを動かして下さい。
  • 歯ぐきだけではなく、舌や上あごなど口全体をみがくと効果が高まります。
  • 通常の歯みがきと併せて3分~5分が1回の目安の時間です。
  • 入れ歯の方の場合でも、歯ぐきや口全体をみがくことで予防の効果が期待されます。その場合、入れ歯を外してみがいてください。

※注意:決して力を入れないで下さい。血が出るほど行うと炎症が起きる原因になります。また歯周病などがある方はその治療を済ませてから行って下さい。

肺炎予防の鉄則

  1. インフルエンザ・かぜに注意
  2. “歯と歯ぐき”をみがく
  3. 65歳以上の場合、肺炎球菌ワクチンを接種する

なお、この肺炎球菌ワクチンについて気になる情報があります。

07

「肺炎球菌ワクチンの真実」

いま話題の最新兵器、肺炎球菌ワクチン。肺炎球菌による肺炎を予防する効果があるということで、高齢者を中心に打つ人増えています。しかし医師からは、「ワクチンでは肺炎そのものは予防できない」ともいわれています。

実は肺炎球菌ワクチンは、肺炎の発症そのものを完全に予防することはできません。しかし、肺炎が重症になるのを防ぎ、入院するまでひどくなることや死に至るケースを減らすことができます。

肺炎球菌ワクチンの注意点

  • 接種を勧められるのは、高齢者(65歳以上の方)、慢性呼吸器疾患・心不全・腎不全・肝硬変・糖尿病の患者さんなど肺炎にかかりやすい方々です。
  • 肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの両方を打つことによって、肺炎の予防効果が高まることが確かめられています。ただし両方のワクチンを接種する際は、時期をずらして打つことが勧められています。
  • このワクチンには健康保険がききません。費用は病院によっても違いますが、1回8000円程度です。(自治体独自になんらかの補助制度を持っている場合もあります)
  • 1回ワクチンを打てば、5年間は効果があるというデータが出ています。また、以前はワクチンの接種を受けたことのある人は、再接種ができませんでした。
    しかし、2009年10月に厚生労働省が再接種を認めたことにより、接種後5年程度経過していれば、医師の判断でワクチンの再接種を受けることができるようになりました。
    詳しくは、かかりつけの医師にご相談ください。

先生のまとめのお話

高齢になるとフタのしまり以外にも、咳の反射や免疫力など肺炎から体を守るシステムがどうしても衰えます。「歯と歯ぐきみがき」や「肺炎球菌ワクチン」など予防の手だてをとることが大事です。