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認知症!介護の新技で症状が劇的に改善する
健康

認知症!介護の新技で症状が劇的に改善する

2010年9月15日(水)
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いま、急増する認知症。患者さんの数は、200万人を超すと言われています。

それとともに問題になっているのが、「介護」の負担。
認知症になると、「もの忘れ」など有名な症状のほかに、「徘徊(はいかい)」や「妄想(もうそう)」、「暴言」などの症状が出やすくなります。
これらの症状が、介護をする家族を精神的にも肉体的にも、追いつめてしまうんです。

今まで、こうした症状を「良くする」のは難しいと言われてきました。ところが今年の3月に出された報告書で、介護の「新技」を使うと、半分以上の患者で症状が改善することが判明したんです!

認知症の症状を改善し、介護の負担をラク~にする「新技」とはどんなものなのか?大公開します!

番組ディレクターからひとこと

認知症の介護の、「誤解」

今回の番組を作る過程で、本当に本当に、たくさんの方にお話を伺わせていただきました。

本当なら隠しておきたい介護の悩みやつらさをお話しくださったみなさま、そして、「同じ悩みを持つ人の助けになれば」とカメラを入れることを許可してくださった3組のご家族に、心からの感謝を申し上げます。

その取材の中で気づいたのは、認知症という病気、そしてその介護に対する一般的なイメージに、たくさんの「誤解」があることでした。

 「認知症になると、何にもわからなくなる」
 「介護する方はツライが、されるほうはラクだ」
 「認知症の症状は、よくならない」

そんな「イメージ」を、少しでも変えることができたら・・・。そんな思いで、番組を作りました。ご協力いただいたみなさまに、少しでもご恩返しできる番組になっていればと、切に願っています。

今回のお役立ち情報
01

認知症 介護の現実

87歳のAさんは、3年前に妻がアルツハイマー病による認知症と診断されました。時間と共に、妻には
「もの忘れ」「買い物ができない」
「料理などの家事ができない」などの症状が現れます。

Aさんはやむなく、家事をすべて担当するなど、献身的に介護していたのですが・・・
その後、なぜか妻の様子が変化します。

Aさんのせっかくの介護を拒絶してしまったり、
汚した下着を隠してしまったりするようになったんです。

こうした行動はAさんにとって、大きなストレスになりました。そこでAさんは悩み抜いた末、近所の介護施設の専門家に相談をすることにします。

そこで伝えられた、衝撃的な言葉とは・・・

 「Aさんが良かれと思ってしている介護が
  奥さんの症状の原因の一つ」というものでした。

良かれと思ってしている「必死の介護」が症状を引き起こすとは・・・、どういうことなのでしょうか?

02

認知症でも忘れない?

認知症になると、記憶の機能が衰えやすいことはよく知られています。でも近年の研究で、この記憶に関する意外な事実が明らかになりました。

研究では、アルツハイマー病による認知症と診断された患者に、いくつかの写真を見せながら、以下のような物語を聞いてもらいました。

 (1)「ある日、お母さんと子どもが歩いていました」
 (2)「途中で 車を見ました」
 (3)「その後、ふたりは病院へ行きました」

5分後、物語の内容を思い出すテストを受けてもらうと、ほとんど思い出すことができませんでした。
しかし別の日に、話の筋を少しだけ変えて聞いてもらうと、成績が急激にアップしたのです!

話の内容を変えたのは、実は(2)の部分だけ。
 「途中で 子どもが交通事故にあってしまいました」
と変えたんです!なぜこれだけで、急に覚えられるようになったのでしょうか?

実はこの現象には、脳の中で感情をつかさどる
「扁桃体(へんとうたい)」という部分が関わっていると考えられています。

話を「交通事故」という、感情を動かされる内容にした結果、扁桃体が反応し、記憶が可能になったと考えられるんです。

実は最近の研究で、この「感情」こそが、認知症の介護を考える上でのキーワ-ドだということがわかってきました。

03

認知症 不思議な行動のメカニズム

さきほど紹介したAさんのケースでは、認知症で料理ができなくなった妻の代わりに、Aさんが家事を担当していたところ、妻の元気がなくなり、介護への拒否などが増えてしまいました。

専門家によると、このケースは以下のようなメカニズムが原因のひとつになったと考えられます。

料理ができなくなった妻の代わりに、「料理をしてあげるよ」と言った場合。
実は妻は認知症のため、「自分が料理をできない」ということを良く理解できません。そのため、家事を「やらせてもらえなかった」という思いが生まれます。
この思いは感情を伴うため、一見忘れたように見えても長く残ります。

また、もしこの記憶が失われたとしても、扁桃体が感じた「悲しい」という感情は蓄積されてしまいます。
一方で、「夫が料理を代わりにやってくれた」という事実は忘れられてしまいます。

この結果、夫が料理を作るたびに
「悲しい」という感情だけがどんどん蓄積されることになります。
妻が元気を失ったり、介護を拒否したりした背景には、こうした「感情の蓄積」があったと考えられるのです。

★認知症の人の症状の背景にはさまざまな原因が存在します。
今回の番組では、「興奮」や「暴言」などの背景として考えられているメカニズムのひとつをご紹介しました。

04

介護をラクに! 「新技」大公開

「感情」を大切にすることが、認知症の介護のポイント。でも日々病気が進行する中で、患者さんがどのような気持ちを感じているかを気づくのは簡単なことではありません。一体、どうすれば良いのでしょう?

今年3月、ある介護の方法を使うことで、「徘徊(はいかい)」や「興奮」などの症状を半分以下に減らすことができた、という報告が出されました。

その介護の方法とは「センター方式」と呼ばれるもの。
シートに患者さんの情報や気づいたことを書き込んでいくことで、患者さんの気持ちに気づき、介護の方法を見直せるように工夫されています。
番組では、3つのポイントをご紹介しました。

(1) 介護される人の姿を「絵」に描く
絵を描くことを通じて、本人のいまの状態を客観的に見直すことができます。

(2) 介護される人の「言葉や口癖」をそのまま書く
一見無意味なように見えても、本人の言葉の裏には必ず「そのとき感じた気持ち」などの理由があります。言葉をそのまま書き出すことで、裏にある気持ちを考えるきっかけになります。

(3) (1)・(2)から気づいたことや介護のアイディアを書く
認知症になると「失われた」機能が目立ち、感情など「保たれている」機能があることになかなか気づきません。上記の(1)・(2)を通じて「保たれている」機能に気づき、それを介護に生かすことで、患者さんの症状を減らすことにつながります。

※この方法で、認知症による全ての症状を改善できるわけではありません。また、病気の進行の度合いなどにより、効果には個人差があります

センター方式
正式名は「認知症の人のためのケアマネジメントセンター方式」。全国に3カ所ある「認知症介護研究・研修センター」が開発したためこの名前がついています。
詳しくは右のホームページまで http://itsu-doko.net/(NHKサイトを離れます)

05

介護のポイントは「笑顔」

去年発表された研究で、意外な事実が判明しました。
進行したアルツハイマー病の患者さんに、「笑顔」「泣き顔」「驚いた顔」など様々な表情の写真を見せて、「この人はどんな気持ちか?」と聞いたんです。
すると「驚いた顔」「怒った顔」はあまり認識できませんでしたが、
「笑顔」は大部分の人が認識できました!

認知症になると、他人の表情から気持ちを読み取る能力が低下してしまいます。しかし笑顔、つまり「相手が幸せか、幸せでないか」を読み取る能力は最後まで衰えないことがわかってきました。

介護する人が疲れたり、精神的に追い詰められたりして笑顔になれなくなってしまうと、介護される人もそれを感じて不安になってしまうことが考えられます。

専門家によると、「いま介護に疲れている人や、これから始める人は、介護保険のサービスを利用して少しでも“自分の時間”を持ち、笑顔になれる余裕を作ることが、介護される人のためにも大切だ」とのことでした。

※お住まいの市町村にどのようなサービスがあるかは、
「地域包括支援センター」で相談を受け付けています。

06

世界で注目!コミュニケーション法

認知症が進行すると、コミュニケーションがとりにくくなることがあります。すると、本人の「気持ち」や「何を望んでいるか」などがわからなくなるため、介護する側にとって大きな問題になります。
そこでいま注目されているのが、「バリデーション」と呼ばれる認知症の人とのコミュニケーション法です。日本語で「価値を認める」というような意味があります。

ポイントは、認知症の人の気持ちに共感し、理解しようとすること。そのうえで下記のようなテクニックを使うことで、認知症の人とコミュニケーションをとりやすくなります。

※バリデーションのテクニック(一部)

1)アイコンタクト
アイコンタクトを取ることで、安心感を持ってもらうことができます。
2)言うことをそのまま繰り返す
つじつまの合わない言葉であっても否定せず、そのまま疑問形にして繰り返します。すると「自分の言うことを聞いてくれた」と感じてもらうことができます。
3)思い出話をする
認知症になっても、昔の記憶は残りやすい傾向があります。昔の思い出を話すことで、感情的に落ち着くことが期待できます。
4)やさしく触れる
完全に会話ができなくなった人でも、やさしく手を握ったりして「ここに家族がいる」と知らせると安心できます。

※上記のテクニックは、あくまで相手の気持ちに寄り添うことが目的です。介護する側が疲れていたりするときには、無理に行う必要はないとのことです。

詳しくは下記ホームページを参照して下さい
※公認日本バリデーション協会
 http://www.clc-japan.com/validation/(NHKサイトを離れます)