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つかむ!歩く!脳卒中 夢のリハビリ最前線
健康

つかむ!歩く!脳卒中 夢のリハビリ最前線

2012年6月6日(水)午後8時
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脳出血、脳梗塞、くも膜下出血。これら脳卒中による後遺症の麻痺(まひ)。発症直後ならリハビリによって、腕や足などの機能はどんどん回復します。しかし、6か月を過ぎる頃になると、ピタッと改善が止まり、それ以降、麻痺は改善しなくなってしまいます。「6か月の壁」と呼ばれています。

今まではこの6か月の壁を越えて麻痺を改善させる方法はありませんでした。しかし近年、この壁が崩されてきているんです!ある薬で治療すると、ほんの数日後には、全く動かなかった手が動きました!車イスに頼らざるを得なかった人が立てるようになりました!また、ある治療を脳に施したところ、10年も物をつかめなかった手が、つかめるようになったんです!

もう発症後6か月たったからと諦めることはありません。何年たっても、年齢がいくつでも、麻痺を改善することは可能!そんな時代がやってきたのです!

番組ディレクターからひとこと

リハビリの意外な敵

麻痺のリハビリは、正しい運動を繰り返すことによって新しい神経ネットワークを作ることを目指します。ところが、実際には患者さんの多くは筋肉が硬くこわばり、ひじもひざも伸びません。拳も開きません。

この状態を専門用語で「痙縮(けいしゅく)」と言います。腕や足が動かないのではリハビリにもなりませんから、麻痺のリハビリは痙縮との戦いなのです。皆さん、温めたり、マッサージをしたりして筋肉を何とか柔らかくし、その隙にリハビリをするのです。

今回紹介した治療法は、この痙縮を和らげます。リハビリの歴史が変わる。そんな時期にさしかかっているのかも知れません。

 

今回のお役立ち情報
01

6か月の壁とは?

脳卒中の発症後、6か月まではリハビリによって麻痺は改善します。病院ではできるだけ早い時期からリハビリを開始して、この6か月というリミットが来るまで精一杯の機能回復を目指します。

しかし、6か月を過ぎると急激に改善しなくなり、これ以降は退院して自宅などでのリハビリに切り替わります。リハビリの目的も機能回復ではなく「今ある機能の維持」が目的となります。

徳島県にお住まいのAさんも、脳卒中を発症し、一時は立てなくなりました。その後、入院中のリハビリによって、杖をつきながらも歩くことができるまでに回復しました。しかし、退院してからは、施設でリハビリしても、自宅のトレーニング機器で運動しても、体力は回復するのに、麻痺した腕は一向に動くようになりません。それどころか、腕の筋肉は硬くこわばり、拳は硬くにぎられたまま。本人曰く「手の動かし方を忘れてしまった」というほどです。どんなにリハビリを続けても決して越えることができない。それが「6か月の壁」なんです。

それにしても、いったいなぜ6か月たつと改善しなくなってしまうのでしょう?

02

6か月の壁の意外な犯人とは?

手足の麻痺が改善しない理由。それは何だと思いますか?ダメージを受けた脳は回復しないから?確かに壊死(えし)した脳の神経細胞は二度とよみがえりません。しかし、周りの神経細胞たちがどんどん伸び、新しいネットワークを作ります。運動の指令を出す脳の機能は、発症から6か月を過ぎても、改善の速度は落ちるものの、全く改善しなくなるわけではありません。

それでは、元凶は何なのか?

実は「反射」です。「熱い!」とか「痛い!」とか刺激を感じた瞬間に腕を縮めますよね?あの状態がまさに麻痺患者さんたちに起こっているのです。

ただし、熱さや痛みを感じているわけではなく、筋肉の伸びすぎを感知するセンサー「筋紡錘(きんぼうすい)」が引き起こす反射です。筋肉は伸びすぎると傷めてしまいますから、いつも筋紡錘が見張っていて、必要なら「危ない!縮めて!」と信号を出します。

しかし、脳卒中になると脳からのコントロールが効かなくなり、筋紡錘が故障してしまうんです。過敏になった筋紡錘は常に「縮めて!」と信号を出し続けるようになります。やがて腕の筋肉は縮まり、硬くこわばり、リハビリもできなくなってしまうのです。

リハビリさえできれば新しい神経回路がつながるチャンスはあるのに、その大事な神経の中を「縮めて!」の信号が暴走して邪魔していたのです。

03

麻痺は毒で改善!?

反射の暴走で筋肉がこわばり、麻痺も改善できなくなったAさんの腕。しかし、ある治療をした数日後には、上がらなかった肩が大きく回るようになり、動かなかった手で物をつかめるようになりました。いったい、どういうことなのか?

実はAさんは注射を受けていました。そして、その注射に使った薬。なんとボツリヌス菌の毒素から作ったものでした。この毒素を1000倍以上に薄めて薬として精製したものを注射して、神経の働きを一時的に止めたんです。こうなれば反射の暴走も止まります。「縮めて!」の信号が止まった筋肉は柔らかくなり、こわばりが取れます。ここでリハビリをすれば、機能の回復が期待できるんです!

この治療はボツリヌス療法と呼ばれ、薬は保険適用です。病院では神経内科やリハビリテーション科が主な診療科です。一回の注射の効果は3か月ほどで、打てる量が決まっているため、手、肩、足など少しずつの治療になります。しかし、発症後何年たっていても、高齢になっていても効果は期待できますので、もう諦めることはないんです!

※改善の程度は、個人差があります。

04

脳が活性化すると良くない?

もう一つ全く別のアプローチで麻痺を改善する治療法が研究されています。

この治療を受けたBさんは、10年前に脳卒中を発症。それ以来、右手はわずかに動くだけになっていました。ところが、この治療とリハビリを2週間受けたところ、なんと右手で物をつかめるようになったんです!

受けた治療は磁気刺激治療。この治療法が何とも不思議で、なんと脳卒中を起こしていない元気な側の脳に磁気刺激を与えて、脳の活性を抑えるというのです。麻痺を改善したいのに脳の活性を抑えるのは逆な気がします。

実は、脳には「大脳半球間抑制」という働きがあり、右脳や左脳が働きすぎないようにお互いに相手を抑え合っているんです。Bさんの場合、左脳で脳卒中を起こしていますが、右脳が元気すぎると左脳を抑えてしまうので、リハビリには都合が悪いんです。そこで、磁気刺激で右脳を少し抑えて、左脳が自由に働けるようにしたんです。

この治療法でもリハビリが必要になります。研究に参加するには麻痺した手の指が最低でも3本動くことなどが条件になりますが、現段階で受けた患者さんの7~8割に効果が見られています。

05

「6か月の壁」とは?

脳卒中は発症直後はリハビリによって麻痺(まひ)は改善します。しかし、6か月を過ぎると急激に改善しなくなります。これが「6か月の壁」です。

06

ボツリヌス療法について

ボツリヌス菌の毒素を薄めて精製した薬を注射して、硬くこわばった筋肉を柔らかくします。
もともと筋肉が硬くなっていない人には効果がありません。
筋肉が柔らかくなったところでリハビリを行い、手や足の機能回復を目指します。

  • 一回の注射で3か月ほど効果が続きます。
  • 注射できる量が定められているため、指や腕、足など少しずつ順番に治療します。
  • 保険適用ですが、一回の注射で数万円かかります(量によって多少異なります)。
  • 主な診療科は神経内科やリハビリテーション科です(施設によって多少異なります)。

07

磁気刺激治療について

研究段階の治療ですが、頭部に磁気刺激を与えることによって硬くこわばった筋肉を柔らかくします。 筋肉が柔らかくなった状態でリハビリを行い機能回復を目指します。

08

磁気刺激治療の受診について

全国8か所の病院で行っており、研究への参加(受診)には適用条件があります。

  • 脳卒中を原因として上肢(腕)の麻痺がある。下肢(足)への効果は確認されていません。
  • 最低でも麻痺側の指3本の曲げ伸ばしが少しでもできる。
  • 日常生活が自立している(自分で移動できるなど日常生活では介助がいらない)。
  • 頭蓋内にクリップなど金属が入っていない。心臓ペースメーカーが入っていない。
  • 認知機能に問題がない(認知症ではない)。
  • うつ病ではない。
  • 透析をしていない。
  • 少なくとも一年間は痙攣(けいれん)がない(脳波検査で異常がない)
  • 全身状態が良好である(発熱、栄養障害、重度心疾患、体力低下などがない)
  • 16歳以上である。

など。