クローズアップ現代

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No.38552016年8月31日(水)放送
どうするマンショントラブル!?“新ルール”で住民激震!?

どうするマンショントラブル!?“新ルール”で住民激震!?

マンショントラブル!! “新ルール”で住民激震!?

都市部では、マンションや団地などの共同住宅が多く、東京では住宅の7割を占めています。
さまざまなトラブル、人ごとではありません。

中でも、特に深刻なのが、老朽化です。
築40年以上の分譲マンションは今後、急増する見込みで、平成に入って建てられた住宅も、近い将来必ず「建て替え」か、「修繕」かの選択を迫られます。
しかし、分譲マンションで建て替えが済んだのは、この40年で、わずか227件。
老朽マンションの2%にも満たず、ほとんど進んでいないのが実情です。

こうした中、国は所有者の5分の4以上の同意がないと進められなかった建て替えを、一定の条件を満たせば、3分の2以上の同意だけで進められるよう、法律を改正しました。
合意を促そうという、この新たなルールの導入に、現場では波紋が広がっています。

どうする老朽マンション! “新ルール”で住民激震!?

東京都内にある、築40年以上の団地。
老朽化の問題に直面しています。
今、費用をかけて建て替えるか、修繕でしのぐか、意見が割れていました。

建て替え派住民
「私の持論なんですけどね、まず建て替えありきで、建て替えを前提にして。」

修繕派住民
「丁寧に(修繕して)使って、長生きさせて、何が何でも立て替えなきゃと思わなくてもいい。」

全部で200世帯以上。
代表による議論が、3年以上続いていますが、結論は出ていません。
「建て替えが望ましい」と考えている男性が、匿名を条件に話を聞かせてくれました。

建て替え派 Aさん
「あそこが膨らんでコンクリートが爆裂します。」

団地は劣化が進み、ひび割れやさびが目立っています。
耐震基準も満たしておらず、建て替えは待ったなしだと考える人も多いといいます。
そうした中、飛び込んできたのが、建て替えを促そうと、国が法律を改正したという知らせ。
建て替えに必要な条件を、「所有者の5分の4の賛成」から「3分の2」に引き下げたのです。
合意できる可能性が広がった今、男性は新たな費用を負担してでも、団地の再開発を進めたいと考えています。
敷地内には、高齢者施設などを開設。
団地の世帯数も大幅に増やし、新たな住民も呼び込むといいます。

建て替え派 Aさん
「資産価値、やがては孫や子が引き継ぐものだと思うから、立て替えることによって、相乗効果が得られるのなら、そのほうが絶対にいいと思って、3分の2以上とればいいわけですから。」

一方、以前より少ない3分の2の世帯の意見で建て替えが進められる事を懸念している人もいます。
建て替えずに、修繕して住み続けたいと考えている、佐久間博さんです。
建て替えの条件が緩和された今、ご近所と、ある問題を心配していました。

住民 女性70代
「建て替えすると(お金が)大変なので、うちなんて遺族年金ですからね。
遺族年金になっちゃいましたからね。」

修繕派 佐久間博さん(仮名)
「借金が簡単にできるんだとか(建て替え派は)いろんなこと言ってらっしゃるんで。
結局、借りたら、返さなきゃいけないですしね。」

一般に、修繕より費用が大幅にかさむ事が多い、建て替え。
それを推し進めれば、多くの住民が団地を出ていかざるを得なくなる恐れがあるといいます。

修繕派 佐久間博さん(仮名)
「(法改正で)5分の4から3分の2という話も、無理矢理でも、数の論理で追い出しができる。
そうすると長くお住まいの方々が結局、諦めて出ていくことになるんじゃないかな。」

さまざまな人が暮らす団地での合意形成。
その難しさを身にしみて感じている住民がいます。
5年前、団地に越してきた会社員の冨田隆さんです。
団地の将来を話し合う委員会のトップを引き受け、議論をまとめようとしてきました。しかし、賛成と反対双方の意見を聞けば聞くほど、そのはざまで思い悩むようになったといいます。

団地再生委員会 元委員長 冨田隆さん(仮名)
「病気の方とか、悩みを抱えているんだなとか、こういうふうに思っているんだなって、コミュニケーションをとればとるほど、むげにできないものが増えていった。
もっと強硬的に進めなければいけないのかもしれないですけど、そういうふうには、個人的にはできない。」

1人1人の事情も尊重しながら、合意も取りつけなければならない。
冨田さんは、次第に追い詰められ、今年(2016年)春、委員長の職から身を引く事にしました。
8月上旬、これまで30回以上開催されてきた委員会が再び開かれました。
提案されたのは、強引に推し進めるのではなく、住民1人1人の意見に、改めて耳を傾ける事でした。

建て替え派 Aさん
「住民のアンケートというんですかね、ニーズ(の把握)を並行して進めていかないと。」

建て替えや修繕ありきではなく、ふだん声をあげない人の意見も共有するところから、やり直す事にしたのです。
合意への遠い道のり。
果たして、この先どうなるのでしょうか。

マンショントラブル多発!! “新ルール”で住民激震!?

ゲスト 室井佑月さん(作家)
ゲスト 平山洋介さん(神戸大学教授)

視聴者の方より:「エレベーターについて、低層階と高層階で同じ管理費なのは納得できない」「共有地の樹木を切りたい人と、残したい人で意見が割れている」
「ペット禁止だったマンションで、多数決で『許可』となってしまった」「駐輪スペースが画一的に割り振られていて、お子さんがいる世帯で増やしたいけれども、新たにもらう事ができない」

室井さん:まず、駐輪スペースというのは、どこかの住宅で、例えば全然使ってない家があれば「お宅の(駐輪スペースを)うちに1台分回してもらっていいかしら」って聞くべきだと思うし、ペットの事で許可になったのが嫌だと言うなら、こっちもロビー活動して、票を増やして、もう1回覆すしかない。

実際にこうした相談が、管理会社の業界団体に寄せられる件数が12年間で、ほぼ倍増している。どうしてこういう問題増えている?

平山さん:マンションがどんどん増えていまして、今、もう620万戸を超えるぐらいあります。
そうしますと、いろんなマンションがありますし、住んでいる方もいろいろになってきます。
低層階の方から高層階の方までいますし、子供さんを育てている方と高齢者の方がいたり、ちょっと住んで売ろうという人もいれば、ずっと住もうという方もいるわけで、意見が合わない場面が増えるといいますか、意見が合わないのが普通というか、自然というか。
だから意見が合わないという事で大変だってことでしょうけど、意見は合わないものだというふうに考えることも大事かなと思います。

室井さん:でも、多くの人数が、いろんな世帯が住んでいるものだから、もう多数決で決まって、そこで負けちゃったら、もう合わせるしかないわけで。

平山さん:案件によって、パッパッと決めた方がいいものは多数決でどんどん決めればいいと思いますが、さっきあったのは、建て替えをどうするかとか、修繕積立金どうするかとか、かなり重要な問題になりますと、もうちょっと慎重になった方がいいのかもしれませんね。

こうした中、国は今年、相次いで新たなルールを導入しました。
1つ目は、一定の条件を満たせば、3分の2の賛成で建て替えを可能にする法改正。
もう1つが、価値の高い部屋の持ち主に、総会などで多くの議決権を与える規約の改正。
これは「標準管理規約」という、「マンションの憲法」とも言われる規約の改正ですけれども、どういう事かといいますと、例えば、タワーマンションの高層階の日当たりのいい部屋と低層階の部屋の価値に3倍の違いがあった場合、総会で議決する際の票数も最上階の世帯には3倍与えるという考え方です。

室井さん:これはすごい、いろんな家が住んでいるマンションの中で、余計にもめ事が起こりそうな感じだと思いますけど。

こうした考えに賛成反対それぞれの立場の専門家に意見を聞きました。

あなたは賛成?反対? マンション“新ルール”

反対派の人たちが心配しているのは、こんなケース。
「マンション内で盆踊りをするため、管理費を使おう」と提案。
しかし、3倍の票を持つ高層階の富裕層は、「自分は興味がないので、自己負担すべき」と拒否。
たとえ、盆踊りに賛成する人が多くても、否決される事になるといいます。

“新ルール”反対:全国マンション管理組合連合会 会長 山本育三さん
「平等という点で言うと必ずしもそうじゃないでしょう。
人の価値を倍にするようなものだからね。
(部屋の)価値だけでいろんな物事を決めていくルールの基本になるというのはいかがなものか。」

一方、賛成派からはこんな主張も出ています。
地震でマンションが全壊した場合、残った土地を売った代金が持ち主に配られます。
これまでのルールでは、面積が同じなら高層階の人も低層階の人も同じ額となっていました。
しかし、これでは部屋の価値が3倍高い高層階の人にとっては理不尽。

お金も票も3倍認められるべきというのです。

“新ルール”賛成:政策研究大学院大学 教授 福井秀夫さん
「ペントハウス(最上階)と2階だと、3倍とか5倍(価値が)違うんですよね。
負担した価値に見合う発言権を行使しようと考える人が出てくるのは自然ではないか。」

あなたは賛成?反対? マンション“新ルール”

室井さんは、この新ルールをどう思う?

室井さん:やっぱり私は、もめ事を作る、大きい事だと思いますよ。
だって、地震でタワーマンションが壊れるぐらいの事があるとしたら、その周りの一戸建ての住宅なんて、破壊されて、そんな事を言っている場合じゃないと思うし、あとは高層マンションが建っている敷地なんて、すごく微々たるものでしょ。
みんなで分けるっていったって、本当にもうほんのちょっとずつなわけですよ。

平山さん:資産価値に応じて、発言力を変えるという事ですが、それはマンションの経済上の資産価値に注目したやり方です。
マンションというのは、もちろん大事な資産価値ですけども、同時に、日常の生活の場で、細々した事を決めていくわけですよね。
ペットをどうするとか、ピアノ弾いていいか、そういう事に資産価値の大きい人の発言力が大きいというのはちょっとなじまないのではないか。

室井さん:嫌らしい感じがしますよね。
私、マンションの一番上に住んでいるんですよ。
それは、お金に困った時に、いつでも売りやすいと聞いたのでそうしたんですけど、でも発言権を多くしたいかっていうとそんな事はない。
どっちかというと、角を立てずに、みんなと仲良くやっていった方がいいと思うから。

合意形成は本当に難しいことですけれども、住民たちが自らの知恵と工夫で合意形成を成し遂げたケースもあるんです。

マンション問題解決!? 住民合意の秘けつ

都内にある、500世帯余りの高層マンション。
駅から4分という立地の良さが人気を呼び、7年前に売り出されると、瞬く間に完売しました。

管理組合の初代理事長、應田治彦さんも環境の良さにひかれ、購入した1人です。

管理組合 初代理事長 應田治彦さん
「ちょうど隅田川が正面にあって、眺めがすごく気に入って買いました。」

しかし、入居から2年たった時、應田さんたちに深刻な問題が発生しました。
東日本大震災。
損傷した部分の修理費用が、予想以上にかさむ事が分かりました。

その10年後に予定されていた修繕工事の費用が、当初の予定より2億円多い、10億円に膨れ上がったのです。

應田さんは、月1万円の修繕積立金を、2倍に引き上げる事をマンションの総会に諮る事にしました。
しかし、異例の引き上げは大きな波紋を呼びます。

当初反対していた住民
「月々に出るコストが倍になって、というふうになると、かなり負担になることは間違いはなくて、困るとしかないですよね。」

管理組合 初代理事長 應田治彦さん
「ほとんどの方の反応は『えー』という感じでしたから、すぐ賛成ですという方は誰もいなかった。」

このままでは、十分な修繕ができず、マンションの資産価値も落ちてしまう。
應田さんたちは、住民たちに「これは自分たちの問題だ」という気持ちを持ってもらうため、説明の場を何度も設けました。
たった1人だけのために説明会を開いた事もあったといいます。

さらに、仕事で忙しい現役世代向けには、ホームページで情報を発信。

配布用のチラシは、お年寄りも読みやすいよう、文字を大きくしました。
小さな工夫を積み重ねる事で、住民たちにも問題意識が共有されていったといいます。

住民
「熱意とか手間をかけてるなと思ってて、この方々が考えている間に、早めに結論を出さなきゃいけないのかなと。」

活動を始めて2年。
その努力は住民の心を動かし、最終的に9割の賛成を得て、修繕金の引き上げを可決できました。

管理組合 初代理事長 應田治彦さん
「とことん説明すれば分かってもらえると思ってやっていましたので、必ずできると信じていた。」

さらに老朽化した建物をどうするのかという大きな問題でも、この春、全会一致で合意した団地があります。
埼玉県狭山市の770世帯。
建て替えではなく、修繕しながら、このまま住み続けていく事を決めました。

管理組合 元理事長 毛塚宏さん
「1番大きいのが7号棟かな。」

修繕して住み続ける方針を打ち出した1人、毛塚宏さんです。
動き出したのは、20年ほど前。
そのころ、世帯数が減り始め、団地が立ち行かなくなる可能性さえありました。
どうすれば、住民に残ってもらいながら修繕に対する理解も広げていけるのか。
毛塚さんが大事にしたのは、住民が共に楽しめる場を作り、団地に魅力を取り戻す事でした。

住民
「ギンギンに冷えてねぇな。」

例えば、これは、週末になると必ず開かれる「語らいの場」。
誰もが自由に参加でき、団地の事から、家族や仕事の事まで、ざっくばらんに話し合えるようになっていきました。

住民
「井戸端会議ですよ。
井戸端ですよ。
だからこれがお互いに言いたいこと言って、次何か(話し合いを)したら、お互いの顔が見えてるから。」

毛塚さんの周囲の人たちも、団地の集会所で、定期的にカフェをオープン。
ひとつ屋根の下で暮らしているという一体感が生まれていきました。
団地に越してくる若い家族も増え、世帯数が増加に転じています。

住民
「こういう“たまり場”のおかげですよね。
いいかなって。」

住民
「そう言ってもらえると、うれしい。」

「この団地で、ずっと暮らしていきたい」。
そんな声が、あちこちで聞かれるようになった今年。
団地では、建て替えず、修繕で使い続けていく方針を全会一致で確認しました。
合意を急がず、20年以上の歳月をかけた結果でした。

管理組合 元理事長 毛塚宏さん
「いきなり投票のようなものをやるのは、つながりを持ちにくいんじゃないでしょうかね。
もっと人がつながるということを信じたほうがいいと思うんですよ。」

マンショントラブル多発! “新ルール”で住民激震!?

合意を成し遂げたケースをどう見た?

室井さん:私にはちょっと無理です。
マンションに暮らしているっていうのは、会った時に会釈するとか、挨拶する程度で済ませたいと思っているから私はマンションに住んでいるわけで。
家って、そんな何軒も買えませんよね、高くて。
そしたら買う時って、一番働き盛りの30代とか、40代でローンを組んで買うわけですよね。
そこから先、40年で建て替えするかどうかなんて問題が出てくると、30代の時に買ったとしても、40年で70歳で、その後があるわけですよ。
ちょっとずつ、少し直したら死ぬまで暮らせるっていう家じゃないと問題があるのではないでしょうか。

建て替えにしても、引っ越しにしても、負担はより大きくなってくるわけだが、その点をどう思う?

平山さん:合意形成とかを急ぐ前に、選択肢を増やす必要があると思っています。
最初にありましたように、政府は今、建て替えを促進しようという事ですよね。
新しいルールが今年、相次いで導入されています。
建て替えがなかなか進まないので、建て替えを応援しようという事なんですが、一方で、建て替えが可能な団地というのは、実はそんなに多くない。
むしろ少ないわけですね。
多くのマンションでは、修繕しながら住み続ける事になるんですけど、こちらを助けようという政策・制度の検討はあんまり進んでいないように思います。
ですから、1つの選択肢に向けて合意形成するのではなくて、複数の選択肢を用意して、多角的に検討して、急がずにゆっくり落ち着く。
合意形成というよりは、落ち着くところに落ち着く。
そのための選択肢を用意するというような政策が必要だと思います。

室井さん:先生、私の疑問はどうですか?
40年でですよ。
家なんて、一生に一回ぐらいの買い物なのに。
住めない、建て替えなきゃいけないぐらいボロボロって、ちょっと厳しいのではないかと。

(長く住める家になってほしいが?)

平山さん:そうですね。
そもそも40年で建て替えないといけないというのはおかしいですよね。

今回のグラレコ

番組の内容を、「スケッチ・ノーティング」という会議などの内容をリアルタイムで可視化する手法を活かしてグラフィックにしたものです。

質問
コーナー

Q1

改正された「標準管理規約」は、必ず採用しなければならない?

「標準管理規約」は国交省が定めたもので、マンションの管理規約を決める際のひな型となるもので、これを参考に規約を決めるマンションも多くみられるようです。しかし個々のマンションでは実状に応じたルールを定めることができ、必ず採用しなければならないものではありません。また、既存の規約を変更したり新たに規約を取り入れたりする場合は、一般的に総会で議決をとるという流れになります。
Q2

月々の修繕積立金が、値上がりするのはよくあること?

修繕積立金は、計画的な大規模修繕工事などに備える積立金です。当初は低く設定し、大規模修繕の後に値上げする例がみられます。理由を何人かの専門家に尋ねると、「売主が積立金を安く設定した方が分譲時に売りやすくなる」という狙いあるとのことでした。修繕工事に不足する分は後に値上げするか、一時金を集めるなどの対策が取られます。しかし区分所有者の合意形成が難しく、しばしばトラブルになることもあるようです。また十分な修繕が出来ないマンションが増えることも予測されるため、政府は平成23年に修繕積立金に関する知識や額の目安を示した『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』を策定しました。これを活用することで、修繕計画のための知識が得られ、計画的な積立が行われることを狙いとしています。

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