クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
格安商品のウラに何が? 大企業による「下請けいじめ」の深層

格安商品のウラに何が? 大企業による「下請けいじめ」の深層

2017年7月14日

大企業による「下請けいじめ」がまん延している。一方的に安い契約を強いる「買いたたき」や、不当な「労務要求」などが横行。昨年度、公正取引委員会が下請け法違反で指導した件数は、6,302件と過去最悪だ。働く人の7割を占める中小企業。事態を重く見た中小企業庁は、今年(2017年)4月、専門の調査チーム「下請けGメン」を発足させ、約2,000の下請け会社を対象に調査を開始した。クロ現+はこの調査に密着。見えてきたのは、優位な立場を利用して不当に利益を得る大企業の姿だった。

ノーと言えない下請け業者 取り引きが“人質”に…

全国に80人が配置された下請けGメン。取材班は、大手スーパーに豆腐を納めている業者への聞き取り調査に同行した。
「これ、中身はいっしょなんですけれど…」豆腐製造業者が差し出したのは、パッケージが異なる2つの豆腐。1つは98円、もう1つは30~45円ほどで、スーパーで売られている。

98円の豆腐は、この豆腐製造業者がスーパーに卸している自社商品。一方、30~45円のものは、スーパーのブランド名で製造したプライベートブランド(PB)商品だ。スーパーなどがみずから企画開発を行ったPB商品は、流通コストを抑えられるため価格が割安。そのため人気が高まり、市場規模は3兆円にまで拡大している。ところが、このPB商品で「下請けいじめ」が横行しているというのだ。

PBの豆腐の卸値は24円で自社商品の半額以下、しかも原価割れを起こしている。スーパーが売値を先に決め、自分たちの利益を確保したうえで、一方的に値下げを要求する結果だという。それでも、生産する豆腐の8割をこのスーパーに卸しているため、要求に応じるしかないのが実情だ。

「スーパーにお金をどれだけ差し出すかが貢献度になっている。その値段で出さなかったときは『おたくは企業努力がたりませんね』、それで取引は終わってしまう」

さらに、無償で業務の肩代わりをさせられている実態も分かった。豆腐製造業者の日報によると、社員がスーパーの店舗に呼ばれ、書類作成や商品データの打ち込みなどで、長時間にわたって拘束されていた。

これは下請け法上の「不当な役務提供」に当たると見て、下請けGメンは、他の事業者も含め実態調査を進めることにしている。

「根が深いのかなという感じはもちました。実態を確認しなければいけなが、極めて“クロ”に近い話」(下請けGメン)

こうした事態について、スーパーが加盟する業界団体は、「以前から取引の適正化を呼びかけてきたが、今回の事態は把握していない」としている。

業界は好調のはずなのに… 毎年1%の値下げ要求

Gメンを管轄する中小企業庁が特に注目しているのが製造業だ。その理由は、年々広がる大企業と中小企業の利益の格差。アベノミクスによる円安や株価上昇で、2015年度の大手自動車メーカーの経常利益率は9.3%とリーマンショック前の水準を上回っているが、中小企業は2.3%と伸び悩んでいる。

自動車関連の下請け企業6,000社がひしめく愛知県。ここでGメンの調査に同行した。多くの企業が口を閉ざす中、「業界全体の取り引き改善につながれば」と、2次下請けの部品加工会社が取材に応じた。

「円安になったら戻るかなっていう期待も少しはあったんです」と話すのは、社長の金田和久さん。かつては、1次下請けである親事業者との関係は良好だったという。好景気の時には利益を分かち合い、不景気になると効率化の道を共に探った。その関係はこの10年で様変わりしたという。

2008年、リーマンショックと急激な円高で不況に見舞われた自動車業界。下請け会社はギリギリのコスト削減努力を続けてきた。その後、アベノミクスによる円安で大手自動車メーカーと多くの1次下請けの業績は大幅に回復。しかし、2次下請けのこの会社は、今も毎年1%の値下げを求められている。厳しい要求に応える中、売り上げは落ち込み、赤字傾向にある。社員の給与まで抑えたが、それも限界だと言う。

「平気で値下げ1%って、皆さん言ってきますが、やれないと思いますよ。やれるところはなんか変です。もう絞るところがない」(金田社長)

毎年の値下げ要請は、大手自動車メーカーから下りてくる。そこでメーカー側を取材したところ、「原価低減はグローバルな競争力を維持、強化する。今後も下請け企業と丁寧なコミュニケーションを図りたい」と回答があった。
今回のケースについて、中小企業庁では指導を出すまでには至ってない。しかし、大手自動車メーカーが加盟する業界団体を通じて、取り引きの改善を要請した。これを受けた業界団体では行動指針を策定、下請けGメンが、改善が進められるか注視していくことになった。

大企業の利益はどこに…下請け業者の苦難が続く理由

業績好調な大企業。その利益はどこに使われているのか。製造業での内訳はこうだ。社員の賃上げが31.7%、利益を社内に蓄える内部留保が25%、そして海外投資が20.3%を占めている。一方で、下請け業者などへの取り引き改善に使われたのは、わずか2%。その理由を経済学者の山口義行さんは次のように分析する。

「大手企業の利益の大半は、実は為替。円安でもうけている。そのためちょっと円高になると、利益が急減する。その急減分をなんとか補おうとして、下請け企業に値下げを要請するという構造になっている。そして、内部留保が非常に多いのは、経営が不安定であるのと同時に、先行きが見えない。例えば、自動車業などが、これから電気自動車化が進んでくると、業界全体ががらりと変わってしまう可能性がある。それに合わせて内部留保していかなくてはいけない」

事態を改善する手立てはないのか。山口さんが提言するのは中小企業の「脱下請け」だ。

「なんといっても営業力を強化する。営業というと物を売りに行くように思うが、実は、営業しながら情報を収集している。今、必要なことは、一歩踏み出して、いろんな所から、いろんな企業の情報を集めてくること。そういう積極的な経営者がたくさん出てこないと事態はなかなか変わらない。経営者が自分で売り先を選べるような環境を作る動力も必要だと思います」

取材の中で、強く耳に残った言葉がある。買いたたきによって、やむなく商品の質を落とした豆腐製造会社の社長のつぶやきだ。
「水の味しかしない豆腐もあるわけですよ。私どもがしていることは、最終的にはお客様が不利益になっている思いますし、日常が貧しくなったということじゃないか」

下請けいじめは中小企業だけでなく、我々消費者にも突きつけられた問題なのだ。

この記事は2017年7月10日に放送した「密着!下請けGメン 中小企業いじめの深層」を元に制作しています。

もっと読む