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“残業・給料・プライベート” 「週休3日」でどう変わる?

“残業・給料・プライベート” 「週休3日」でどう変わる?

2017年8月25日

「週休3日」に踏み切る企業が増えている。背景は深刻な人手不足だ。週に3日以上の休みを導入している企業は全体の5.8%、10年前の倍以上に広がっている。企業にとっては人材が集まりやすくなったり、従業員にとっては働き方の選択肢が増えたりと、メリットがある一方で、様々な課題も取材を通じて見えてきた。「週休3日」の現場から「働き方改革」の方向性を探る。

「週休3日」で結婚!? 社員にも会社にもメリットが

去年から今年にかけ、大企業が続々と導入した「週休3日」。そのタイプには主に2種類ある。一つは、1日の所定労働時間を2時間増やし10時間としたもの。1週間の労働時間は40時間のままで給料も変わらない。もう一つは、1日の労働時間は8時間のままにしたもの。週の労働時間は32時間に減り、給料もその分減る。

福岡県北九州市の介護施設「さわやか清田館」の正社員、豊澤妙子さん。去年から1日10時間タイプの「週休3日制」で働いている。豊澤さんは自宅で認知症の母親を介護しているが、この働き方になってから介護と仕事との両立がしやすくなったという。

「結婚できたのは、週休3日のおかげ」という同僚もいた。宇津巻進さんは、同じく介護職の妻、宏美さんと今年6月に結婚した。お互い就業時間が不規則で会える時間も限られていたが、宇津巻さんが週休3日になり、一緒にいられる時間が一気に増えたという。

施設の側にも大きなメリットがあった。1人の1日の所定労働時間が2時間延びたことで、業務が時間内にこなせるようになり、残業が大幅に減ったのだ。全体で、年間850時間分の残業代、およそ90万円を削減できた。しかし、この制度を活用した社員は、介護職員への国の交付金が増えたため、給与はほとんど減らされずに済んだという。また一方、施設はシフトを埋めるために人員を1人増やした。週休3日にすると必要な人員は増えるが、「週休3日」で働きたい人は多いため、今後の人材確保のうえで有利だと、この施設では考えている。

人事コンサルタントの西村創一朗さんは、「週休3日」の導入企業が増える背景は大きく2つあるという。まず短期的には、人材の売手市場の中で、働き手を確保し離職を防ぐ必要があること。もう一つは、中長期的なイノベーション創出のねらいだ。休日が増えることで、インプットやリフレッシュの機会が増え、斬新なアイデアにつながると期待されている。

「週休3日」の落とし穴?  収入減をどうする?

いいことずくめに見える「週休3日」だが落とし穴はないのだろうか?「週休3日」で労働時間が減れば、当然収入が減るケースも考えられる。それをカバーするひとつの手が「副業」だ。

外資系企業の営業マンだった中村龍太さん(53)は、4年前、都内のIT企業に「週休3日社員」として転職した。休みは土日と月曜。このうち主に月曜を副業にあてている。農業生産法人に所属し、希少種のニンジンを栽培、販路開拓にも取り組んでいる。そもそも50歳を前に転職を決意できたのも、この副業で収入減をカバーできる見込みがあったからだ。働き方を変えたいとの思いはあったものの、当時、娘2人は大学生で妻は専業主婦。収入が大きく減るのなら、転職には踏み切れなかったという。副業の農業には本業のITもフル活用している。畑に設置したセンサーで温度と湿度を計測、最適な収穫時期を予測し、安定的な出荷体制を実現させた。中村さんが使ったのは本業のIT企業のソフト。これが他の農業法人にも売れるようになり、本業の営業成績もアップした。

ただ、中村さんのようにうまくいくケースばかりではない。働き方について長年研究を続けてきた、中央大学大学院教授の佐藤博樹さんは、副業を持つうえでの注意点を指摘する。

「2つの仕事のそれぞれは長時間ではなくても、足してみたら70時間、80時間働いていた、それで過労死が起きてしまうようではいけない。その時どこに責任があるか。別の仕事へ移動する時、通勤途中の災害をどうするのか。この辺りの課題の整理も大事です」

企業トップの決断で「給料の減らない週休3日」を目指す

「週休3日」の導入で労働時間を減らしながら、給与水準は維持している企業もある。神奈川県にある吉原精工。金属の部品を特殊なワイヤーで加工する社員7人の町工場だ。一部の社員が週休3日で働いている。その社員は、夕方から夜間までの8時間、週に32時間の勤務だが、週休2日の場合と給与は同じで年収は600万円を超える。会長の吉原博さんは、全社員が週休3日で労働時間を週32時間にしつつ、給料も下げない体制作りをめざしている。

実はこの会社では、全社員の残業ゼロという「働き方改革」を実現してきた。それまで支払ってきた残業代を基本給に組み込んだのだ。早く仕事を終えても、給与を削られなくなった現場からは、次々と改善のアイデアが生まれるようになった。生産性も上がり、売り上げはこの5年で倍増したという。経営者側も、納期に無理がある注文は思い切って断るなど、全員週休3日体制に向け、業務改善に日々取り組んでいる。

この町工場の取り組みを、中央大学の佐藤さんも高く評価する。
「単に残業削減する、それだけじゃないんですよね。それができるような仕事のしかた、ビジネスモデルを選ぶ。これをトップが決断した。ここもポイントだと思います。実は、大企業でもやはり残業削減じゃないんです。仕事のしかたを変え、時間生産の負荷率を高めるほうに持っていくような決断をトップがすれば、大企業でもやれると思います」

新たな働き方「週休3日」は広がるか

注目を集める「週休3日」だが、導入する企業はまだまだ少ないのが現状だ。今では当たり前になった週休2日も、導入当初は大きな反発にあった。人事コンサルタントの西村さんは「週休3日」が広がっていくためのカギについて、こう語る。

「松下幸之助は『一日休養、一日教養』というスローガンを使って、つまりインプットを高めて本業に生かせと言いました。それと同じように、週休3日制では『一日休養、一日教養』、そして『一日活用』ということで、今までインプットしていたものを、さらにアウトプットしていく、そういったことから広がっていくのではないか」

「週休3日」を実のある形で定着させるには、残業をいかに減らすか、業務の効率化をどう図るかという「働き方」をセットで考えていかなければならない。限られた時間でいかに効率よく業績を上げるか。そして、1人1人のライフスタイルに合った働き方をどう実現するのか。企業と働き手が共に考える時代にきている。

この記事は2017年8月2日に放送した「『週休3日』最前線 収入はどうなる?残業は?」を元に制作しています。

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