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広がる遺骨の“処分” 行き場を失った末に…

広がる遺骨の“処分” 行き場を失った末に…

2017年9月5日

今、遺骨の「処分」を選択する人が相次いでいる。墓を買えない人や、「墓じまい」をした人が、遺骨の置き場に困り、処理を業者に依頼するケースが増えているのだ。日本人の死生観はどこへ向かっていくのだろうか?

遺骨は郵送 拡大する散骨代行ビジネス

千葉市内にある散骨代行業者には、毎日、全国から遺骨が送られてくる。骨つぼ1つあたり2万5,000円で、家族に代わって海に散骨する。客は電話かメールで申し込み、遺骨を郵送するだけだ。

この会社では、届いた遺骨を業界のガイドラインに沿って2ミリ以下の粉末にし、水にすぐ溶ける紙に包んで散骨する。あくまで葬送として行うため、法律には触れないという。サービスを始めて2年、利用者はすでに1,000人を超えた。

この会社に父親の遺骨を送ることにした40代の女性。墓を買う経済的余裕がなく、父親の遺骨は10年間母親が手元で保管してきた。しかし、1人暮らしの母親が長期入院することになったことから、遺骨の一部だけを手元に残して、散骨することにしたという。

もともと散骨は、多様な葬送の形の1つとして広がり、亡くなった人の希望を叶えるという意味合いが強かった。一方で、今、広がっているのは、遺骨の置き場に困った人たちが「処分の手段」として散骨を選んでいるという実態だ。代行サービスは急増。その数は100を超える。
遺骨をそのまま捨てるのは法律に触れるため、散骨以外に処分の手段はほとんどない状況だ。散骨が増えている背景を、第一生命経済研究所 主席研究員の小谷みどりさんはこう説明する。

「1つは経済的理由で、お墓が買えないという方。それから、従来のお墓は、子々孫々、継承していくことを前提にしていたので、子どもがいない、結婚していないなどの理由で、お墓に入れないという方もいらっしゃいます。ほかにはお墓があっても、家族がいても、従来のお墓に入ると家族に迷惑をかけるのではという理由で、散骨を選ばれる方もいらっしゃいます。」

「死んでから迷惑をかけたくないと」いう心理。そこには弔いに対する意識の変化があると小谷さんは指摘する。つまり、見栄や世間体といったしがらみの中で墓を守ってきたことに負担を感じ、同じことを子どもや孫にさせたくないと考える人が増えているというのだ。

コインロッカーやゴミ箱にも 置き去りにされる遺骨

お墓を管理する人がいないなどの理由で墓を撤去する「墓じまい」。でも、その後の遺骨をどこへ持っていけばいいのか。そんな相談が、「墓じまい」を代行するNPOには数多く寄せられている。
「(相談に来るのは)特に跡取りのない人ですね。ご遺骨をどうしようかという現実的な問題で、たくさんの方が悩んでいらっしゃる。」(墓じまい代行NPO代表 清野徹昭さん)

子どもたちに管理の負担をかけたくないと、墓の撤去と散骨をこのNPOに依頼した82歳の女性はこう語る。「私たちで終わりにしよう、きれいにしようという気持ちで。ほっとしています。みんなに迷惑かけないで済むかなと思って、残された人に。」
墓石の撤去に加え、4人分の遺骨を散骨する費用はおよそ50万円だった。

行き場を失った末に、置き去りにされる遺骨もある。この5年間で全国の警察に届けられた遺骨は411件。見つかった場所は、駅のコインロッカー、リサイクルショップの店先、サービスエリアなど。オートレース場のごみ箱に置かれていたケースもあった。こうした遺骨の多くが行き着くのが、自治体の納骨堂だ。

静岡県浜松市では、ここ数年、大量に届く遺骨の扱いに悩まされてきた。市が管理する納骨堂は、1000人分を納められる棚が限界に。やむなくおよそ500人分を処分することにした。市が依頼した業者によって、遺骨は溶融、圧縮され、石のような姿に変わる。

時代に合った弔いの形とは

家族の形が変わり、「処分」される遺骨が増える中で、私たちは「弔う」という行為とどう向き合えばよいのか。小谷さんは、「弔いの社会化」を取り戻すべきと提唱する。

「昔は町内で人が亡くなったら、みんなでお葬式の手伝いに行って、村の墓地にみんなで入った。お盆になるとみんなで死者の霊を慰めたわけです。それが家族に責任を押しつけられるようになって、こういう問題が起きる。これからは亡くなった方をみんなで弔うというような、社会の在り方を模索していくべきではないか。」

行き場をなくした遺骨が「処分」されるような社会はちょっと寂しい。誰もが無理なく、家族や先祖を弔うことができるような社会をどう実現できるのか。幅広い議論が必要ではないだろうか。

この記事は2017年8月29日に放送した「あなたの遺骨はどこへ!?~広がる新たな“処分”~」を元に制作しています。

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