クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
急増!高齢者のアダルトサイト詐欺被害 その背景

急増!高齢者のアダルトサイト詐欺被害 その背景

2017年5月26日

今年3月、インターネットでアダルト動画を閲覧していた75歳の男性が、5千万円以上をだまし取られる事件が起きた。いま、国民生活センターには、同様の被害に遭う高齢者からの相談が急増。60代からの相談件数は、約1万件、70才以上でも5千件を超える。その多くは、問題を1人で抱え込み、事態を深刻化させてしまうという。誰にも相談できない背景にあるのは、「気持ち悪い」「理解できない」「いい年して何を考えているのか」など、高齢者の性に向ける厳しい世間の目。肉体的に元気なお年寄りが増えるなかで、高齢者の性とどう向き合えばいいのか?

様変わりする高齢男性の性行動

今、心や体が元気なまま高齢を迎える人が増え、高齢者と呼ばれる人たちの概念が変わりつつある。それに伴い、シニアの性行動も様変わりしている。大手メーカーを退職し、今は福祉に関わる仕事をしているという70代の男性は、2か月に1度、風俗店を利用している。男性が利用している風俗店は、「60歳未満はお断り」の派遣型風俗店。料金は、60分で1万5千円だ。10年前、妻が病気になり、夫婦の営みを拒否されるようになったことが利用するきっかけとなった。男性は、70代になっても欲求が抑えられないことを妻にも友人にも相談したことはないという。

「ものすごい真面目な男で周囲には通っていると思います。でも、高齢者もやっぱり性の欲求というのはあるんじゃないですか」

実際、日本性科学会が1,000人以上を対象に行った調査によると、性的な欲求があると答えた男性の割合は、60代で76%、70代でも75%に達した。また、中高年向けの健康情報誌を出版している会社は、2年前、高齢者の性に特化した専門誌を創刊したところ、5万部を発行するヒット。現代の高齢者男性の多くは、性的な欲求をもっているといえるだろう。

夫の性欲に戸惑う妻 広がる“性ギャップ”

こうした男性の変化に女性側は、戸惑いを見せている。田園調布学園大学名誉教授・荒木乳根子さんは、40代から70代の男女1,000人に「夫婦間で、どのような性的関係が望ましいか」を調査。すると、男性は、妻との『性交渉を伴う愛情関係』という声が一番多いのに対し、女性の半数以上が、夫とは『精神的な愛情やいたわりのみ』と答えた。

高齢の男女の間で顕著になりつつある性に対する認識のずれ。その一因となっているのが、男女の性のホルモンの違いだ。性欲は男性ホルモンがつかさどるが、男性の男性ホルモンの減り方は個人差が大きく、高齢になっても性の欲求が旺盛な人もいるのに対し、女性は性ホルモンが更年期のときに急激に減る。そのため、男女の性にギャップが生まれる。

産婦人科医であり性科学者の宋美玄さんは、今のシニア世代の女性がセックスの喜びや楽しみを知らずに高齢を迎えたことにも要因があると指摘する。「今までの性生活の積み重ねで、どうしても自発的に自分からセックスをしたいと思えるような経験が少ない。セックスの喜びをあまり分からないまま高齢になっている。そのため、男性がいつまでも妻を性欲の受け皿として見るには、どうしても矛盾が生じる」

番組には男女の性のギャップについて悩む女性の切実な声が寄せられた。
「63歳の夫が、週1回必ず求めてくるが、とても苦痛。でも他人には相談できない」

性のタブー視 被害を受ける介護現場

高齢者の性をタブー視することで、ひずみが生じているが介護の現場だ。名古屋市内で訪問介護の事業所を運営する漆原治志さんは、介護サービス中に性的なトラブルを起こす高齢者を数多く見てきたという。

漆原さんは、その実態を確かめるために、市内の大学と共同で、介護士・看護師へのアンケートや聞き取り調査を実施。264人のうち、約半数が体を触られたり卑猥な言葉をかけられるなど、セクハラ被害を受けたことがあることが分かった。しかし、その高齢者の家族に問題解決へ向けて協力を頼んでも、多くの場合、家族が性的な問題を引き起こしていることを受け入れられないうえ、施設も事を荒だてたくないために問題は先送り。セクハラ被害が長く続いてしまう傾向がある。

タブー視せずに受け入れ、話し合える関係を

男女の性のギャップや介護現場でのセクハラ被害等、これらのトラブルの根底にあるのは、セックスを話題にすることがタブーになっていることに要因があると指摘するのは、ジャーナリストの田原総一朗さんだ。
「日本の平均的な家庭だと、性はどうしてもオープンに語られずに、恥ずかしいものと感じて教えられている。性というものは一生あって当たり前。なくてもいいんだけど、ある人にはずっとあるということを国民全体が受け入れていくしかないと思う」

ニューヨークにある老人ホームでは、高齢者の性と正面から向き合った結果、入居者同士の恋愛を推奨し、感染症防止の避妊具を配って、施設内で性行為を行うことを権利として認めている。このような取り組みは、社会全体の性への理解がないとできない。

性について、オープンに話せるような雰囲気が社会にあれば、性に関する悩みやトラブルを一人で抱え込むことなく、事態を悪化させるようなことも防げる。

また、前出の宋さんは、性への理解を深めるには、パートナーと話すことが重要だと説く。
「若い人たちには、今のうちからパートナーシップの一環として、性のこともお互い正直に話すことを推奨します。そうでないまま年を重ねていった方も、今からでも話し合うことが大切だと思います。」

パートナーや家族をはじめとする大切な人と、性について話し合うには、まずはお互いを尊敬し合い、なんでも話せる関係性づくりも重要だ。その上で、「いくつになっても、性的な欲求はある」と認めるところから、お互いの性について話し合ってみてはいかがだろうか?
より深い関係が築けるかもしれない。

この記事は2017年5月18日に放送した「『高齢者だってセックス』言えない“性の悩み”」を元に制作しています。

もっと読む