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わたしたちの税金が奪われる!金塊を巡る「闇の錬金術」の正体とは

わたしたちの税金が奪われる!金塊を巡る「闇の錬金術」の正体とは

2017年5月31日

いま、“金塊”を巡る不可解な事件が福岡で相次いでいる。4月20日、金塊を買い付けるための資金3億8千万円あまりが何者かによって強奪された。2016年7月には、博多駅で転売目的での7億5千万円相当の金塊が盗まれる事件も発生している。なぜ福岡で巨額の金塊取引が行われようとしていたのか? 事件の多発は何を意味しているのか? 取材を進めていくと、私たちの税金をかすめ取ろうとする「密輸組織」の実態が浮かび上がってきた。

日本の税制度が悪用されている!金塊を巡る「不可解な事件」のウラ

日本での金塊密輸による摘発は過去最多を記録している。摘発数は3年前から突如増加し、年間300件近くに上る。密輸される金の多くが韓国から運ばれていることから、クロ現+の取材班は3,000軒の店がひしめくソウルの貴金属街に足を運び、2016年まで密輸組織の幹部だったという韓国人に接触した。彼は「密輸組織は日本の税金を狙っている。日本に密輸をすると8%の利益を得られる。ばく大なカネが手に入るんだ」と、闇の錬金術のからくりを次のように明かした。

まず、密輸組織のメンバーは、世界中から金が集まる香港で大量の金塊を買い付け、飛行機で韓国に向けて出国する。韓国の空港に到着したメンバーは入国審査を受けずに、そのまま乗り換えエリアへと向かい、観光客を装った“運び役”と落ち合う。そして、トイレなど人目につかない場所で金塊を受け取った運び役は、下着や靴の中に金塊を隠し持ったまま日本に入国するという。

本来、日本に1億円の金塊を持ち込む場合、税関に申告して「消費税8%分の800万円」を支払う義務がある。しかし、運び役は金塊を体や手荷物に隠すことで、消費税を支払わずに日本に入国する。この1億円の金塊を貴金属店などに持ち込めば、消費税を上乗せした金額、つまり1億800万円で買い取ってもらえるため、組織のもとには800万円の利益が転がり込む仕組みだ。

こうした錬金術には、さらに続きがある。密輸組織によって持ち込まれた1億円の金塊は、貴金属店との暗黙の了解により、再び香港に輸出される。輸出するときは輸入時とは逆で、消費税分800万円が国から貴金属店に還付される。香港に輸出された金は、同じ手順で、再度日本に密輸される。そして、貴金属店に金を売ることで、国から還付された800万円が密輸組織の懐に入る。取材班が接触した密輸したグループのひとりは、「簡単なんですよ。ただ淡々と同じことを繰り返すだけですから。誰が損害を受けるかというと、国。」と話す。

この仕組みが巧妙なのは、買い取る側の貴金属店が「正規取引」を行っている点にある。日本では、200万円以上の金塊を売却する際、不正取引を防ぐために法人であれば法人登記、個人であれば本人確認ができる書類が必要になる。しかし、密輸組織は実態のない法人を介在させることで、密輸という実態を分からなくしているのだ。貴金属店にとっても、金を取り引きすればするほど手数料収入が得られるため、両者の間で暗黙の協力関係が結ばれていると考えられる。

犯罪の「隠れ蓑」にされる主婦や大学生

金の密輸で摘発された人の国籍を調べると、日本人が半分を占め、次いで韓国人、中国人となる。ノンフィクション作家の溝口敦さんは、「金の密輸に関わる人物は半グレ集団が中心」と話す。「半グレ集団とは、暴力団には籍を置いていないが、違法な商売に関わりを持ちやすい一般人のこと。半グレ集団は重い刑罰の犯罪を避ける傾向があり、金塊の密輸は経済犯罪ということで刑が軽く、気軽に手を染めやすい。そのため、誘いかけられる一般人も安易に応じてしまうところがある」

韓国からの運び役には、普通の主婦や大学生が関わるケースが多い。覚せい剤などと違って、金塊は所持だけでは罪にならない。数万の報酬を受けられる上に、韓国から日本までの旅費を負担してもらえるため、軽い気持ちで運び役を引き受ける人が増えているというのだ。

密輸組織の元幹部は、「そもそも日本の税関は、観光客だと思い込んでいるので、チェック自体が甘い。もし見つかったとしても金塊はあとで取り返せる。日本は処罰がなまぬるい」と話す。特に福岡などは外国からの観光客が急増していることもあり、運び役を紛れ込ませるのは簡単だともいうのだ。

金塊の密輸を巡る制度の見直しを

私たちの税金を間接的に奪い取るという許しがたい実態。こうした状況に、空港での取り締まり意識も年々高まりつつある。入国時には金属探知機などの検査を強化し、密輸を見つけたときはより厳しく処罰する方針も示し始めている。しかし、密輸組織も新たな手口を次々と生み出しており、日本への金の密輸はこれまで以上に巧妙になってきている。

日本は金塊を密輸しても没収されるケースが少なく、罰金も最大で1,000万円にとどまる。韓国の場合、密輸した金塊は必ず没収され、罰金は最大で1億円だ。悪質な犯罪に対応していくには、税関や警察など関係する機関が緊密に連携を取ることに加え、法制度の見直しも含めながら検討していく必要がある。

この記事は2017年5月23日に放送した「金塊 闇の“錬金術”~私たちの税金が奪われる~」を元に制作しています。

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