クローズアップ現代

毎週月曜から木曜 総合 午後10:00

Menu
「墓があってもはいれない!?」 相次ぐ“墓トラブル”

「墓があってもはいれない!?」 相次ぐ“墓トラブル”

2017年5月15日

自分が死んだ後のために、生前に墓や葬儀を準備しておく“終活”がブームだ。ところが「墓をあらかじめ用意しても、入れない」という“墓トラブル”が相次いでいるのをご存知だろうか。ひとり暮らしの高齢者が増えるなか、墓の存在を本人以外が知らないため、結局無縁墓地に葬られてしまうケース。そして、墓を販売する会社が倒産し、金を支払ったのに、墓が建たないケースも。どうすれば、“墓トラブル”から身を守ることができるのか?

墓があるはず… しかし、行き着いたのは無縁墓地

「家族に迷惑をかけたくない」「頼れる家族がいない」 こうした理由から生前に墓を用意したにもかかわらず、死後、無縁墓地に葬られてしまうケースが相次いでいる。“終活”を巡って、何が起きているのだろうか?

横須賀市役所の一角にある倉庫には、行き場を失った遺骨が安置されている。その9割は身元が分かる一般市民。故人の名前や住所は分かっていても、墓がどこにあるのか確認できないため、ここに運ばれてくる。遺骨の管理を任されている福祉部課長の北見さんは、遺骨が入れるお墓を探し出しているが、確認できないことも多い。
「お墓がどこにあるのか、戸籍謄本や住民票には書いていない。そういったところに書いてあれば多少は違うだろうけど。」と北見さんは、亡くなった人のお墓を探し出す難しさを吐露する。

墓が見つからなかった遺骨は、まず市が管理する納骨堂に移される。しかし納骨堂が満杯になると遺骨は骨つぼから出されて袋にまとめられ、最終的に市の無縁墓地に葬られる。自治体は特定の宗教を選ぶことができないため、供養は一切行われない。遺骨を無縁墓地に葬る際に、よく骨つぼと一緒に見つかるのが預金通帳だ。北見さんは、無縁墓地に葬られた人の中には、生前、死の備えをしていた人たちも少なくないのではないかと話す。

墓があっても、利用者がひとりで亡くなった場合は、情報が業者に届かず、その結果、希望の墓に入れない。このようなトラブルが増加する要因を、第一生命経済研究所の小谷みどりさんは次のように指摘する。
「周りの人が、その方の死後、そのお墓がどこにあるのか知らないケースや、亡くなった後、誰かが遺骨をそのお墓まで運ばなくてはならないが、その誰かがいないケースが多発している。」
また、認知症などの理由で墓の存在を本人以外が知らないため、墓が見つからないケースも起こっている。

こうした中、終活サービスを始める自治体も現れている。一般的に終活サービスの利用者は、葬儀社などと墓や納骨について直接契約を結び、生前に支払いを済ませる。そこで横須賀市は利用者と業者の橋渡しをするサービスを開始。市は利用者から墓などの希望を聞き取り、利用者と葬儀社が契約するとこまで見届ける。利用者が死亡すると、市が速やかに葬儀社に知らせ、納骨されるまで市が見届ける仕組みだ。

終活サービス競争激化の果て 業者の破たん、使い込み…

今や1兆円規模ともいわれる「終活」ビジネス。小売業、サービス業などさまざまな業種が参入し、競争が激しくなる中で低価格化が進んでいる。そのため、破綻する業者が相次ぎ、代金を支払ったのにお墓が建たないケースなど、終活を巡るトラブルも起きている。

2016年11月、後継ぎがいなくても入れる墓を売りにしていた会社が倒産した。負債総額はおよそ7億円。もともと先祖代々の墓を販売していたこの会社は、終活ブームに乗って共同墓を建設するなど、新たな霊園を開発。しかし価格競争が激しくなり、倒産したと見られている。倒産したこの会社は、「先払いしてもらった墓の代金は返せない」とし、被害者は200人を超えた。

なぜ、このようなことが起きたのか? クロ現+の取材に応じた墓販売会社の元社員は、資金繰りに苦しむ会社が手っ取り早く売り上げを増やすため、墓の完成前に客から全額を先払いさせるように指示していたと告白する。
「契約と同時にできれば、全額入金してもらえるように。お客さんには申し訳なくて。もしお客さんの立場だったら、だまされたという気分はあります」

終活ブームにのって新規参入する会社が増える中、死後の不安につけ込む悪質な業者も出始めている。会員の葬儀や納骨などを行うNPOが、預かっていた預金通帳から1,800万円を無断で引き出していたことが発覚。そのお金はNPOの幹部が車の購入や、自宅の修繕などに使っていたという。

終活トラブルを回避! 理想の終活とは?

業者の破たんや使い込みといったトラブルも起きている“終活”ビジネス。こうしたトラブルに巻き込まれないためには、どうすればよいのか?

墓を購入する際は、頭金として半額程度の前金を先払いすることが一般的。反対に墓が完成する前から全額の支払いを要求されるような業者には注意が必要だ。また、終活サービスを利用したり、墓を購入したりする際には、ひとりで決めず、周囲に相談することが大切だ。相談する人が周りにいない場合は、役所へ相談するという方法もある。役所には悪徳業者の情報などが集まっているため、“墓トラブル”を回避するのに役立つからだ。

『死後、迷惑をかけたくない』と思う方は多いが、亡くなったあと、自分のことは自分でできない。どのような人でも誰かに手間をかける。核家族化が進み、子々孫々で墓を見るという従来のスキームが崩れつつある中で、小谷さんは、「子どもだけでなく、近所の人でも、行政のサービスでもよいので、自分の死後を安心して託せる人を見つけることが大切」と話す。終活は単に墓や葬儀の準備をするだけではなく、残された時間、最後に誰とつながり、自分の思いを託すのかを考える縁作りの時間でもあることが見えてきた。

この記事は2017年5月10日に放送した「相次ぐ“墓トラブル” ~死の準備の落とし穴~」を元に制作しています。

もっと読む