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「監禁」「暴行」 ひきこもり“自立支援”施設で何が

「監禁」「暴行」 ひきこもり“自立支援”施設で何が

2017年5月30日

いま、39歳以下のひきこもりの人数は、全国で約54万人。ひきこもりで悩む家庭に対し、「問題を解決し、子どもの自立を支援する」というビジネスが拡大する一方で、トラブルが相次いでいる。人々の救いとなるはずの“自立支援”施設で何が起きているのか。

“ひきこもり家族の孤立に入り込む”自立支援施設

「就労支援プログラムを受けられずに500万円を請求された」、「外出を制限され、殴る蹴るの暴行を受けた」など、一部の自立支援施設でトラブルが起きていることが明らかになった。

過去、自立支援施設で働いていた元職員2人が取材に応じた。2人は暴行に加わったことはないが、入所者が抵抗したり、逃げ出そうとしたりした際には、腕を後ろに取って入所者の体を拘束する方法は教えられていたという。施設には、通常10人程度が入所し、アパートや一軒家に入れられる。窓には特別な鍵がつけられ、中から自由に出られない仕組みになっていたそうだ。また、施設では就労訓練などを行うこともなかった。元職員は「これで入居者が本当に、ここから自立できるのか、ずっと思っていた」と話す。

一方、施設側は取材に対し、あくまで運営は適切で、外出制限や暴行の事実はなく、特別な鍵は今はかけていない、などと回答。両者の意見は対立し、トラブルは解消されていない。

実際に、どの程度のトラブルが起きているのか。ひきこもりの家族会にアンケート調査を行った。支援施設などの利用経験がある人は、全体の84%。その中で、金銭トラブル、暴行、脅迫などの不適切な扱いを受けた人は、25%となった。

ひきこもりの問題を長年取材しているジャーナリストの池上正樹さんによると、すべての施設に問題があるわけではないと前置きした上で「こうした事例は後を絶たず、また、トラブルが起きても、立証することが難しい。例えば、監禁や暴力などの違法な扱いがあっても、証拠が残っていない。そのため、被害を受けても声をあげられず、隠されてしまうことがある。」と語った。

トラブルの背景には、ひきこもっている人だけでなく、その親も社会的に孤立してしまうことにある。ひきこもり支援などを研究テーマとしている、白梅学園大学教授の長谷川俊雄さんは、「家族の問題は、家族で解決しなければならないという思いが、とても強い。親が、世間体や社会的な評価を気にしていることが影響している。」と指摘する。

前出とは別の元職員は、次のように語った。
「ひきこもり家族は、家が崩壊寸前。裕福だったり、地元の名士だったりすれば、そのことを近所に言えず、立場は弱い。その意味では、値段がつけ放題。社会問題化しているマーケットと考えたら、すごいドル箱、大きなビジネスチャンス。」

さらに、ひきこもりが長期化すると、新たな不安と焦りが生まれる。親自身の高齢化に加え、ひきこもる家族を養う経済的な問題が差し迫るためだ。こうした状況での、「必ず連れ出します」「社会復帰させます」といった支援施設からの言葉は、問題を抱える家族には、非常に魅力的に映ってしまう。

こうした支援施設に対する法的な規制はないのだろうか。実は、ひきこもりなら厚労省・内閣府、不登校なら文科省、家庭内暴力なら警察というように、管轄官庁がバラバラなため、法的規制やガイドラインが存在しない。行政側には、支援内容等を逐次チェックする機能がなく、施設で行われている支援の内容を把握するのは難しいのが現状だ。

孤立を防ぐ、受け皿はどこに?

自立支援施設を巡るトラブルが相次ぐ背景には、周囲に相談できずに孤立してしまうことにある。問題を解決するにはどうすればいいのか。ひきこもりを抱える家族を孤立させない地域ぐるみの取り組みを取材した。

大阪府豊中市では、「断らない福祉」を掲げ、ひきこもりや家庭内暴力などの問題を気軽に相談できる「福祉なんでも相談窓口」を設置。小学校の校区ごとに、36か所で運営している。

窓口で相談に乗るのは、研修を受けたボランティアの住民。ご近所のつながりを生かして話を聞き、寄せられた情報は、地元の社会福祉協議会に集約される。社会福祉士など専門的な知識を持った職員が、訪問支援などで対応に当たる仕組みだ。

支援を通じて「自立したい」という意欲がわいてきた人には、パソコンのデータ入力など簡単な作業から徐々に仕事に慣れる「中間的就労」というプログラムを用意。さらに地域の事業所と連携し、働きながら最終的な就職先を探す。社会福祉協議会を軸に、行政、住民、企業が一体となった自立支援に取り組んでいるのだ。

実は、こうした豊中市のように、ひきこもりの悩みなどを相談できる窓口は、2年前に施行された「生活困窮者自立支援法」によって、全国の市町村に存在している。「家族のことで悩んでいる」「病気で働けない」など、生活全般にわたる困りごとの総合相談窓口が全国の市町村に設置されている。

しかし、ひきこもり家族会へのアンケートで「どこに相談すればいいのか分からない」と答えた人は45%。豊中市のような取り組みは広がっておらず、支援窓口の設置にとどまり、支援ノウハウ持つ人材が不足しているケースが少なくない。

豊中市のような地域ぐるみの取り組みを、その他の自治体でも取り入れていくには、私たちひとりひとりが、ひと事ではなくみずからも関わる問題として認識する必要がある。池上さんは、「本人の目線で考える、みんなで考えていくことが大事。ひきこもっていたとしても、生きているだけでいいんだという空気を、周囲や地域で持てるかどうかがカギを握っている。」と話す。

自立支援施設を利用する際の注意点

最後に、自立支援施設を利用する際の注意点を紹介したい。全国の施設を調査したこともあり、40年にわたって施設を運営している工藤定次さんは、次の3点を挙げる。

①拙速に契約をしない、事前に施設の見学をする。
②閉鎖的でないか。例えば地域の人や外部講師など、職員以外が定期的に施設と関わり持っているか確認すること。
③「すぐに解決できる」という言葉は要注意。施設は特効薬ではないことを自覚したうえで利用すること。

自立支援施設でのトラブルに巻き込まれないないように、最低限、上記3点をチェックしてほしい。

この記事は2017年5月22日に放送した「トラブル続出 ひきこもり “自立支援”ビジネス」を元に制作しています。

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