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「今夜、何にしよう」から解放!食卓“カンタン”進化論

「今夜、何にしよう」から解放!食卓“カンタン”進化論

2017年5月16日

共働き世帯が増え、育児や仕事に忙殺される現代。いまや家族が揃う「共食」は1割ほど。それにも関わらず、出来合いのお総菜ではなく、家庭の手作り料理を大切にしたいと考える人は多い。なぜ日本人はそこまで「家庭の味」にこだわるのか?そして、 進化しつつある日本の食卓の“新常識”に迫った。

手間=愛情?日本人が「家庭の味」にこだわる背景

調理時間と手間を徹底的に効率化した“簡単食”が食卓を席けんしている。共働き世帯を中心に「料理キット」の利用者は急激に増え、週に50万世帯が利用している。食材はすべてカットされ、メニューに応じて調味料も配合済み。1品10分程度で調理できる手軽さも魅力だ。こうした料理キットが人気の背景には、日本人の「家庭の味」への根強いこだわりがあるという。

番組の取材に応じてくれた田中早紀さん(仮名)もそのひとり。どんなに忙しくても家族には手作り料理をふるまいたい気持ちが強く、「買ったものをそのまま出すわけではないので、料理キットには罪悪感がない。味付けは自分でやっているので、これは手作り料理」と話す。

共働き世帯が増えたいまでも、出来合いのお総菜に抵抗がある人は多い。民間会社の調査によると、30年前は8割近くが「市販のお総菜をそのまま食卓に出すことは気が引ける」と回答しており、現在でも約6割の人が同じように感じているという。

なぜ、日本人はこれほど「家庭の味」にこだわるようになったのか。日本で最も古い料理番組の一つ『きょうの料理』のレシピの変化から読み解きたい。番組が開始した1957年は、ちょうど高度経済成長のさなか。全国で核家族化が急速に進み、専業主婦も増える中、料理研究家の土井勝さんが打ち出した「おふくろの味」というキーワードが主婦たちの心をとらえ、それまで比較的シンプルだった食卓に「一汁三菜」「一汁四菜」という新しい常識が持ち込まれた。

その後、日本の経済成長と比例するかのように、食卓に並ぶ品数は1985年でピークとなり、「手間暇かけたメニューこそ、愛情たっぷりの家庭の味」という認識が浸透する。日本人の「家庭の味」へのこだわりには、こうした時代背景も関係しているのだ。

こんなに簡単でいいの?変わる食卓“新・常識”

共働きが増えたことで、料理を取り巻く環境も大きく変化した。なるべく簡単に、だけど手作りにはこだわりたいという人たちから、手間を省いた簡単な料理が好まれ、便利な調理器具を使って20分/10分/7分と短時間を強調したレシピが人気を集めている。しかし、それでも「おかずは3品ぐらいないといけないのではないか」という従来の家庭料理の体裁に縛られている人は多く、「今夜は何にしよう」と毎日の献立への悩みはつきない。

このような状況に料理家の土井善晴さんは、新しい家庭料理のスタイル「一汁一菜」を提唱している。一汁一菜とは、ごはん、みそ汁というシンプルな献立。みそ汁を具だくさんにすることで、おかずの役目も兼ねるという。しかし、本当にこれだけで栄養は足りるのだろうか?

土井さんによると、「戦後、日本人の栄養が足りないということで、豊かな時代に向けて『一汁三菜』という家庭料理を作ろうと努力してきた。でも、もともとは『一汁一菜』こそが、和食の伝統的なスタイル」といい、具だくさんのみそ汁にすることで栄養価を高め、心もお腹も満たす食事になると説明する。「みそ汁というのは、濃くても薄くても、全部おいしく仕上がります。ダシをとらなくてもちゃんとうまみも出るし、一椀の中に主菜と副菜と汁物の要素が全部詰まっているんです」

土井さんが提唱する「一汁一菜」は、子育て世代や若い世代を中心に注目を集め、SNSでは、1万件を超える写真が投稿されている。そして、「一汁一菜」により、これまで負担になってきた「今夜は何にしよう」「おかずは3品ぐらいなくては」等の料理のストレスから解放された人は多い。
「結婚して10年、料理することを重荷に感じるようになっていたが、品数や体裁など気にしなくてもいいという土井さんの言葉に勇気をもらった」(神奈川県 30代の女性)

料理のキホンは「楽しく、自由に!」

手づくり料理が理想とはいえ、女性たちに多大な負担をかけている。海外と比較しても、日本女性が「炊事にかける時間」は突出して長く、イギリスやオランダと比べて2倍近くに及ぶ。土井さんは「今の時代は、食べる人が主役になっている。しかし、実際は料理をつくる人が食文化を担ってきた。おかあさんやおばあちゃんが担ってきた食文化を守るためにも、家庭料理というものを、男性にも一緒に考えてもらいたい」と指摘する。

SNSに投稿されたコメントの中には、「夫から『一汁一菜』の提案を受け、今では夫婦2人で手分けして料理を分担しています」という方がいた。

家庭の味を維持していくためにも、従来の品数や体裁にこだわらず、もっと自由に楽しく料理をすること。それには男性の支えが必要であることを、社会がもっと共有すべきなのかもしれない。

この記事は2017年5月11日に放送した「一汁一菜に1分料理動画!食卓“簡単”進化論」を元に制作しています。

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