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熊本地震“つぶやき2600万”から見えた明と暗

熊本地震“つぶやき2600万”から見えた明と暗

2017年4月14日

2016年4月14日に発生した熊本地震。実はこのとき、かつてない事態が起きていた。SNSによる“情報爆発”だ。SNSの情報によって救われた命がある一方で、あいまいな情報の拡散によって災害現場では混乱が発生。私たちは何を教訓にし、今後の災害で必ず起きる“情報爆発”にどう備えればいいのか。

災害で浮き彫りになったSNSの可能性と課題

熊本を2度にわたって襲った震度7の激震。このときインターネット上の膨大な発信、“情報爆発”というかつてない事態が発生した。その数は東日本大震災時の約20倍。わずか1週間でSNSへの投稿は2600万件以上にものぼった。どんな声が投稿され、どう広がったのか? 膨大な情報の分析と発信元への取材から、情報爆発が救助や支援活動に大きな影響を与えていた実態が浮かび上がってきた。

熊本県嘉島町に住む男性はSNSによって命を救われた1人。就寝中に本震に襲われ、全壊した自宅の下敷きになったが、家族がツイッターで男性の救助を求めたところ、情報は瞬く間におよそ2万人に拡散。現場に駆けつけた人からの電話が消防につながり、投稿から1時間あまりで男性は無事救助された。SNSの発信が役立ったのは、救助活動だけではない。ある病院は、地震発生直後から近隣住民約500人が避難に訪れ、食糧備蓄が懸念される事態に。フェイスブックで支援を呼びかけたところ、翌日には企業や個人から物資が届き始め、食糧不足は一気に解消した。多くの避難所ではまだ物資が著しく不足し、政府が対策を急いでいた時だった。

一方で、SNSで救助を求めたが、命を救えなかったケースがあった。益城町に住む母親を亡くした女性は、当時、母親から助けを求める電話を受けて消防に通報。しかし「すぐに対応はできない」と言われたため、ツイッターで救助を呼びかけた。情報は拡散され、ツイッターを見て119番通報をした人という人も現れた。結局、母親が救助されたのは本震から14時間後。その後、母親は病院で息を引き取った。

なぜ助けを求める投稿は救助につながらなかったのか? 本震直後、熊本市の消防には膨大な数の救助要請が寄せられ、ギリギリの対応が続いていた。加えて、SNSを情報源とした第三者からの通報も相次いだが、SNS経由の情報はあいまいなものが多く、出動を断るしかなかったという。真偽が定かでない通報への対応に追われた消防は、関係機関との連絡など本来必要な業務にも支障をきたしていた。

独り歩きする情報 現実とのズレが・・・

“情報爆発”によるマイナスはそれだけではない。分析からは、SNSの情報が被災地のリアルタイムの実態を正確に伝えていないケースが少なくないことも見えてきた。

熊本市に住む10代の女性は本震で自宅が停電。「救助を待っています。すごく怖い」とSNSで訴えたところ、たちまち2500人以上に拡散。3時間後に「安全が確保できた」と投稿するが、一部の人にしか伝わらず、その後も、「怖い」という不安な情報だけが広がり続けた。また、ある病院が地震翌日に物資の支援を呼びかけたところ、 「透析、出産患者が生命の危機!」と、病院機能が麻痺していると受け取られかねない情報がいつの間にか付け加えられていた。被災地を助けたいという善意によって誇張され、独り歩きした情報。簡単にシェア、拡散、コピーできるSNSの特徴がマイナスに作用した例と言える。このようなSNSの落とし穴を防ぐ方法として、法政大学准教授の藤代裕之氏は「どこから出ている情報なのか、いつ発信された情報なのかを確認するだけでも、不確実な情報は減っていく」と指摘する。

今後も起きる?“情報爆発” どう備えるか

SNSの膨大な情報を災害時に生かすことができるのか? SNSの情報を分析し、被災状況を把握する最新のシステムでは、ツイッター上のあらゆる投稿から災害に関するものだけを文章の意味を読み解いて抽出。被災地で何が不足しているのかを検索すると、地図上でひと目で把握することができる。災害時にこうしたシステムを機能させるためにも、藤代氏は「情報トリアージ」を提唱する。「トリアージ」とは、多数の患者が運ばれてきた際に、優先順位をつけて患者を治療するという救急医療の現場で使われる考え方。これを災害時にも適用し、ネット上の情報を収集・分析して、現地を支援する専門家によるチームをつくる必要があるという。

SNSで飛び交う大量の情報。災害から命を守るために、そして被災地の暮らしを一日も早くすべての人が取り戻せるために、それらを有効に使うための仕組みを考えていく必要がある。

この記事は2017年4月13日に放送した「熊本地震 知られざる“情報爆発”~追跡・SNS2600万件~」を元に制作しています。

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