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理解されないオキナワ 若者が悩む本土との“溝”

理解されないオキナワ 若者が悩む本土との“溝”

2017年5月18日

沖縄が本土復帰を果たして45年。NHKが実施した世論調査により、沖縄と本土の深い“溝”が浮かび上がってきた。「本土は沖縄の気持ちを理解していない」と答えた沖縄県民は7割に上り、さらに、6割近い沖縄県民が「この5年ほどの間に沖縄に対する誹謗中傷が増加した」と感じていることが明らかになった。沖縄の人々は何を“溝”と考えているのか?どうすれば埋めることができるのだろうか。

「沖縄のことばかりしゃべって」「売国奴」誹謗中傷を受ける沖縄

NHKが実施した世論調査の結果、「本土は沖縄の気持ちを理解していない」と答えた沖縄県民は70%に上り、「理解している」と答えたのはわずか19%だった。取材を進めると、本土への不信感を募らせる背景には、沖縄の人の基地に対する複雑な思いが、本土へ正しく届いていないという実態が見えてきた。

沖縄の若者の本音を伝えたいと活動している、大学生の仲村颯悟さん(21歳)。名護市辺野古をモデルにした架空の町を舞台に、基地を巡り葛藤を抱え苦悩する、沖縄の若者の姿を描いた映画を制作した。しかし、公開前から仲村さんのツイッターに「日本の国防とか考えずに沖縄のことばかりしゃべって」などという誹謗中傷が寄せられる。内容も見ずに、基地反対の映画だと決めつけた人たちからのコメントは、多いときは1日に50件に上った。

この状況に、仲村さんは、沖縄の中にも「賛成」「反対」と簡単に割り切れない、基地に対してさまざまな考えがあることを理解してほしいと訴える。「僕らとしては基地反対でもなく、賛成でもない。答えが出せなくてモヤモヤしながらも、どっちって言えばいいのか分からない。」

ある沖縄の大学生も「基地の収入で生きている親戚がいる。『賛成ですか、反対ですか』ってなったときに、周囲の人の顔が浮かび過ぎて分からなくなる」と話す。

しかし、こうした沖縄の人の基地に対する複雑な感情は、正しく本土に届かないのが現状だ。複雑な思いは、「基地賛成派」と「基地反対派」に二極化され、単純化されて本土に伝わってしまう。そのため、基地に反対すれば本土の「基地容認派」から叩かれる一方、容認すれば、「基地反対派」から批判される。

さらに、負担軽減を訴える沖縄を否定するかのような、一部の差別的な言動が先鋭化している。日本の安全保障を担ってきた思いがある一方で、基地負担の軽減を訴えてきた沖縄県東村の伊集盛久村長。オスプレイ配備撤回を求める都内でのデモ行進中、一部の人たちから「売国奴」「日本から出ていってくれ」などと、差別的な声が次々と投げかけられた。

伊集村長は「驚きで胸がいっぱいだった。沖縄の基地の現状の在り方を全く理解してないことによる行動ではないか」と話す。

実際、6割近い沖縄県民が「この5年ほどの間に沖縄に対する誹謗中傷が増加した」と感じているとNHKの世論調査に答えている。

「賛成・反対」だけに単純化できない、複雑な沖縄の思い

今回の世論調査で辺野古への基地移設に対する複雑な思いも見えてきた。沖縄のアメリカ軍基地について「本土並みに少なくすべき」が「全面撤去」の2倍近くに上り、半数を超えた。また、日米安全保障条約について65%が「重要」だと答えた。

 
この世論調査から、沖縄の人は、基地をすべて否定しているわけではないこと、そして日米安全保障条約は重要だとしていることが見えてくる。しかし、普天間基地の辺野古への移設について、沖縄の人の63%は「反対」と答えた。基地をすべて否定しているわけではないが、辺野古への移設には多くの人が反対の意思を示している。

 
本土では「辺野古への移設反対」という声と「基地すべてに反対」という声を同じように考えている人は多いのではなかろうか。しかし、ジャーナリストの津田大介さんは、辺野古の位置づけが、他の基地と違うと指摘する。

「沖縄の基地は、今までほとんどのものが強制的に奪われ基地が作られてきた。しかし、辺野古の場合は、前知事の仲井真さんが承認をし、その承認に従って作る。基地というのは「奪われたものだったから返還される」という思いがあったが、自分たちで作ってしまうと戻らない。返還されないということは、基地負担軽減につながらない」

地元大学生が自ら伝える「等身大の沖縄」の声

沖縄の人の複雑な思いを伝える取り組みが、若い世代で始まっている。本土から修学旅行生に平和学習を行う活動をしている国仲瞬さん(24歳)。これまで沖縄からの情報発信は主義主張が色濃く反映されたものが少なくなかったのではないかと感じ、地元大学生自身との対話を通じて、等身大の沖縄の歴史や現状を知ってもらう取り組みをしている。そこでは、本土の修学旅行生に、基地についての複雑な思いが、大学生自身の経験やプロフィールを通じて伝えられていく。修学旅行生は、何人もの大学生から話を聞くことで、多様な沖縄に触れることができる。国仲さんは、本土の修学旅行生に、「その人の考えとか、その人の背景に何があるんだろうとか、目の前の人に向き合ってほしい」と語りかける。

沖縄の人の多くが、基地負担軽減を願いながらも、日米安保は重要だと考え、苦しみながら基地の負担を背負っていることが今回の世論調査で見えてきた。そして、基地「賛成」「反対」では簡単には割り切れない現実が沖縄にはある。

基地は、本来、沖縄だけの問題ではない。本土の側も“わがことだ”というふうに思い、考える必要がある。ジャーナリストの津田大介さんは「本土の人間が沖縄に行ったときに、単なる観光地ではない、他のいろいろな場所に行って、いろいろな人と話すこと。例えば、ひめゆりの塔に行くことも1つの手だ。いま、ひめゆりの展示は、リニューアルして、すごくいい展示になっている。」と提案する。沖縄の複雑な思いを本土に持ち帰ることが、沖縄と本土の“溝”を埋めるきっかけになるはずだ。

この記事は2017年5月15日に放送した「沖縄復帰45年 深まる本土との“溝”」を元に制作しています。

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