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天体衝突は現実に起こる!? 人類はその時どうする?

天体衝突は現実に起こる!? 人類はその時どうする?

2017年6月6日

今月(5月)、地球への天体衝突の可能性や影響などを議論する国際会議が東京で開催された。最も注目されたのは、小惑星の接近を想定し、衝突回避の方法をシミュレーションするプログラム。実は、今、地球への衝突が懸念される天体が次々と見つかり、その数は、1万6千にものぼっている。天体衝突は回避できるのか。研究の最前線に迫る。

地球への衝突が懸念される小天体は1万6千!

1994年、木星に小天体が衝突した。それは人類が初めてリアルタイムで観測した大規模な天体衝突の瞬間だった。この衝突をきっかけに、地球でも同様の衝突が起こるのではないかと、世界中の天文台で観測が行われた。

こうして世界中の天文台で観測した結果、警戒すべき小天体が次々と見つかり、その数は16,000。しかも毎日5個のペースで増え続けている。JAXA宇宙科学研究所の吉川真准教授によれば、今、見つかっている16,000個に関しては軌道が計算されているため、今後数十年から100年ぐらいは地球にぶつからないことが確認されているという。しかし、見つかっていない小天体の数は多く、ハワイ大学のリチャード・ウェインスコート博士は「注意が必要な小天体は、たくさん潜んでいる」と警告する。

地球への衝突が懸念される多くの小天体は、火星と木星の間からやってくる。火星と木星の間には数十万個の小惑星と呼ばれる小さな天体が存在するエリアがあり、木星や火星の引力の影響で軌道が変化すると地球に接近する。先月(4月)には、全長約650メートルの小天体が地球からわずか180万キロまで接近。宇宙の距離感でいえば、かなりの至近距離だ。

被害の大きさは、衝突する小天体の大きさによって変わる。恐竜絶滅を引き起こした小天体は、吉川さんによると「大きさが10キロメートルぐらいで、頻度は恐らく1億年に1回程度。」4年前にロシアの中部、チェリャビンスク近郊に落下した小天体の大きさは20メートルぐらいの小さなものと言われているが、怪我人は1,500人以上。7,400の建物が被害を受けた。こうした直径十数メートルの小天体は、推定1,000万個ぐらいはあるといわれ、数十年に1回、100年に1回程度で落ちる可能性があるという。実際、世界各地に見られるクレーターの多くは天体衝突の痕跡で、現在確認されているもので170以上。地球は天体衝突の脅威に絶えずさらされている。

迫り来る小天体! 人類はその時どうする? 白熱の議論

ひとたび起きれば地球規模での被害をもたらしかねない天体衝突に備え、NASAをはじめとする世界24か国、約200人の研究者が日本科学未来館(東京・お台場)に集結、『地球防衛会議』を開催した。そこでは架空の小天体の接近を想定したシミュレーションが行われ、熱い議論が交わされた。

架空の小天体の大きさは直径100から250メートルで、10年後、東京近郊に落ちる可能性があるという想定だ。

研究者たちは小天体の組成の分析や衝突した時の衝撃の予測、そして衝突回避の方法など、いくつかのグループに分かれてさまざまな角度から対策を話し合う。中でも激しい議論となったのが、衝突回避を検討するグループだ。

真っ先に挙がったアイデアは、小型の爆弾等の人工物を小天体にぶつけ、軌道を変更させる「衝突方式」だ。2005年、NASAは小天体へ「インパクター」と呼ばれる人工物を命中させることに成功しており、この技術を応用すれば実行可能な対策だと考えられている。しかし、衝突方式には砕けた破片の制御ができないため、地球に衝突する恐れがぬぐえない。

緩やかに軌道を変える「スロープッシュ」も提案された。そのうちの1つ、「けん引方式」では、まず小天体の近くに探査機を送る。すると小天体と探査機の間に引力が働き、その後、探査機で少しずつ小天体を引っ張り、衝突軌道からそらすというものだ。

さらにNASAは、探査機を使って小天体に特殊な塗料を吹きかけるユニークなスロープッシュのアイデアも検討している。小天体は太陽の周りを回りながら、同時に自転もしている。太陽によって温められた面が影に入ると熱が放射されるが、これがわずかな力となって、天体の軌道に影響する。そこで小天体に色を付けて熱の吸収率を変えることにより、軌道を変化させるという方式だ。しかし、こうしたスロープッシュ方法は数十年単位の長い時間が必要となる。

今回のシミュレーションでは、小天体の落下は10年後。地球の到達まで時間が限られているため、破片のリスクは取ってでも「衝突方式」を試すという結論に至った。

「天体衝突は現実の脅威」と心構えを

今のところ、衝突方式が一番有効的な手段とされているが、天体衝突を回避する方法はまだまだ研究が必要だと言われている。吉川さんは「まず発見する。これは、今、順調に続いているので、近い将来には多くの危ない天体が見つかると思う。問題なのは、どうやって回避するか」と話す。

アメリカでは、天体衝突は警戒すべき自然災害だと位置づけ、年間50億の予算をNASAなどに投じ、地球に接近する危険な小惑星の発見や監視に取り組んでいる。また、ヨーロッパではEUの支援を受け、大学や民間企業などが連携。国の垣根を超えたネットワークが作られている。日本では、地球に接近する小惑星「イトカワ」の素性を、はやぶさプロジェクトで正確に知ることができ、衝突回避のための重要な情報源を得ることができたほか、JAXAでは一般の天文ファンを巻き込み、警戒すべき小天体を見つけようという試みも始まっている。

「地球防衛会議」に出席した欧州宇宙機関の研究者は言う。
「天体衝突は現実の脅威だ、甚大な被害につながるので、前もって準備しておく必要がある。」
私たちも天体衝突はSFの世界ではなく、いつか必ず起こる自然災害として関心を持ち続けることが必要だ。

この記事は2017年5月31日に放送した「人類のピンチ!? 天体衝突を回避せよ」を元に制作しています。

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