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他人ごとではない!?「テロ等準備罪」

他人ごとではない!?「テロ等準備罪」

2017年4月10日

法案審議が始まり、後半国会の最大の焦点になっている「テロ等準備罪」。政府・与党は、オリンピック・パラリンピックを控え、テロ対策に万全を期すために必要だとするのに対し、市民団体などからは、「内心の自由」が侵されかねないという不安の声が上がっている。そもそも「テロ等準備罪」とは、一体どういうものなのか?一般の人が対象となることはないのか?ポイントを整理する。

何が処罰されるのか?“内心の自由”は?

日本の刑法では、原則として犯罪が実行されて初めて処罰の対象となる。実行前に処罰できるのは、相当な危険性がある場合に「予備罪」が適用されるケースなどに限られている。

2003年に初めて国会に提出された「共謀罪」を設ける法案では、犯罪を計画して事前に合意、つまり「共謀」があれば処罰できるとしていた。しかし合意だけで処罰を可能にすることは、「内心の自由」を侵すとの懸念の声があがったこともあり、これまでに3度廃案となった。

そこで今回、政府・与党は、名称を「テロ等準備罪」に変更。「共謀罪」の構成要件を改め「組織的犯罪集団」が犯罪の計画で合意し、資金調達や現場の下見など犯罪の「準備行為」を行った場合に処罰できるようしたとして、「共謀」だけで処罰されることはないと強調している。また対象犯罪も殺人や放火など277に絞ったとしている。与党内で法案を取りまとめにあたった公明党の漆原良夫議員は「処罰の対象になるのは、合意だけでなく客観的・外形的な準備行為を行ったとき。目くばせしただけで犯罪になるとか、酒場で1杯飲んで上司をぶん殴ってやろうと言っただけで犯罪になる、という心配はまったくない」と言う。

しかし民進党などは、準備行為の具体例の中に「その他」という文言があり、拡大解釈が可能と指摘している。表現の自由を守る活動を行う「日本ペンクラブ」も、法案に対して反対声明を発表。吉岡忍専務理事は、準備行為の定義があいまいな点などを挙げ「今回ほど拡大解釈ができる余地のある法律はない」と批判している。

「テロ等準備罪」では、犯罪の準備行為などを要件に処罰が可能に

団体の目的が“一変”で「組織的犯罪集団」に。その判断基準は?

「テロ等準備罪」の対象について、政府はテロ組織・暴力団・薬物密売組織等の組織的犯罪集団としている。さらに一般団体であっても目的が正当なものから、“一定の犯罪を目的とする集団”に一変した場合、組織的犯罪集団に認定する可能性があるとしている。この「一変」と見なされるのは、どのような場合なのか。たとえば、市民団体が、拡声器を使ったり、会社に申し入れをしたりする行為が、「会社の業務妨害に一変した」と見なされ、組織的犯罪集団に認定されることはないのか、不安の声が上がっている。

また日弁連 共謀罪法案対策本部 事務局長の山下幸夫弁護士は、目的が一変したと見極める過程で、捜査権限が乱用される恐れがあると懸念する。

「(組織的犯罪集団に)一変するということを、捜査機関である警察が判断するところが問題。どこかの段階で一変した、変わったと判断しないといけないため、結局、日常的に特定の団体構成員を尾行したり、行動を監視したりすることになる。」

これに対し、法務省の加藤俊治審議官は、「捜査というのは、犯罪の疑いがあって初めて行われるもの。犯罪の疑いが生じる前の正当な活動の段階から見張ったり監視したりすることは、捜査活動としてはありえない」とし、捜査権限が乱用される懸念は当たらないとしている。

政府は分かり易く説明を

「テロ等準備罪」は犯罪前に処罰可能な範囲を一気に広げるため、組織的犯罪対策には効果的だという見方がある。一方、市民団体から、組織的犯罪集団と認定する判断基準があいまいで「自由な活動が萎縮される」などと、法案を不安視する声も少なくない。

「テロ等準備」新設を推進する立場の中央大学名誉教授の椎橋隆幸さんは「市民運動、労働組合などは、これは健全な民主主義社会の正当な活動なので、そもそも対象となっていない」とする。一方、慎重な立場のジャーナリストの江川紹子さんは、「法律を解釈するのは、捜査機関であって、捜査機関の偏った判断、解釈が可能というところにこの法案の怖さがある」と指摘する。

今国会での成立について、与党内にも容易でないという声もあり、審議の先行きは不透明。民進党などの野党側は廃案に追い込むとして、与党との対立は強まる中、組織的犯罪集団の定義や、一般市民への影響など、焦点となっている点について、国会審議でどのような議論が交わされるのか、注目していく必要がある。

この記事は2017年4月4日に放送した「あなたは賛成?反対?徹底検証 テロ等準備罪」を元に制作しています。

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