クローズアップ現代

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No.07 クロ現を支える

18年以上にわたって「クローズアップ現代」(以下、クロ現)の冒頭を飾って、番組をぐいぐいと引っ張り、エンディングでは番組をまとめ上げてきたテーマ音楽。「あの曲を聞くと、きょうもクロ現が始まった気がする」という方も多いことと思います。
クロ現の歴代"テーマ曲"は18年間の放送のなかで 7曲 ありますが、どの曲も印象に残る名曲ばかりです。
今回の特集では、クロ現を支え続ける"テーマ曲"の歴史を振り返ってみたいと思います。
まずは18年前、クロ現の放送が始まった当初の、この曲から・・・

初代テーマ音楽 「クローズアップ現代テーマ曲」

クローズアップ現代テーマ曲
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この曲は「"時代の不協和音"をイメージしてテーマ音楽をつくってほしい」という依頼で、サックス奏者であり、作曲家でプロデューサーの 本多俊之さん に作曲していただいたものです。
この曲のタイトルはズバリクローズアップ現代テーマ曲という、シンプルなもの。
クロ現は、1993年4月5日の夜9時30分(※最初の7年間は夜9時30分からの放送でした)、本多さんのソプラノサックスが奏でる「♪チャーッチャ、チャチャチャチャ、チャーチャーチャという音色で始まったのです。

「クローズアップ現代テーマ曲」作曲:本多俊之さんのお話

本多俊之

このときはサックスで演奏する曲にすることは最初に決まっていました。作曲にあたってクロ現の音楽担当者から依頼されたのは「"時代の不協和音"と"スピード感"を意識して作ってほしい」ということでした。また番組は21時半というやや遅い時間から始まるものなので、「7時のニュースのような"本流の番組っぽい感じ"ではなく、"ある種、ゲリラ番組のようなイメージ"で攻撃的にいってほしい」という要望がありました。

作曲は、いつもそうなのですが、まず担当の方から、番組全体についてのお話、音楽の長さのメド、さらに「音楽の長さを編集で調節しやすいようにしてほしい」などの注文を聞くところから始まります。その後は普通に生活しながら、無意識のうちに自分のなかで「あの曲、どうしようかな?」と頭の後ろのほうでずっと考えている感じです。この曲を作ったときもそんなふうに過ごして、やがて仕事部屋に入ってサックスを吹きながら「こうかな?いや、こうかな?」と考えながら決めていきました。

このときは2~3曲デモを作って、"いかにも報道番組"という無難な曲も作ったのですが、やはり担当の方が選んだのはいちばん攻撃的な感じのこの曲でした。音楽は、はっきりした正解はないものなので、意見を聞いたり自分で考え直したりして、「やっぱり、こうかな?」と探っていって完成に至ったという感じです。この曲は、わたしが演奏しているソプラノサックス以外はすべてシンセサイザーによる打ち込みの演奏です。いま聴くと、"1993年当時のデジタル感"という感じですね。

クロ現のテーマ音楽は、番組の冒頭のCGと一緒に流れますが、曲を作っている時点ではCGはまだコンテの状態でした。コンテを参考にして曲を作って、いつも音楽のほうが先にできていました。

2代目テーマ音楽 「STRAY-SAX」

STRAY-SAX
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番組開始から2年が経った1995年度から、本多さんに新たに作っていただいたSTRAY-SAXという曲が2代目のテーマ音楽となりました。

「STRAY-SAX」作曲:本多俊之さんのお話

この曲は、「93年の曲よりも、もっと"スピード感"を出して、もっとミスマッチ感というか、スタンダードではないことをやっていきましょう」という依頼で作ったものです。

このときも音楽担当者の方とイメージをすり合わせるために3曲のデモを作りました。1曲目は、自分としては依頼通りに、93年の曲をさらに過激にしたもの。2曲目は、自分としては、93年の路線と同じもの。3曲目は93年よりもマイルドにしたものです。曲の「こんな感じでいきましょう!」っていう感覚は、すぐに共有できるようで実際には感じ方は人それぞれ違うので、なかなか難しいのですよね。でもこのときは、その3曲を担当者に聴いてもらうと自分と同じ感覚で感じてもらったようで、1曲目の"過激バージョン"でいこうということになったのです。

この「STRAY-SAX」という曲もわたしが演奏するサックス以外はコンピュータ打ち込みです。いま聴いてみると、この曲はスタンダードジャズでは全然ないのにスタンダードジャズのベースラインになっています。

自分で作った曲ですが、いま改めて聴いてみると、とても"挑戦的な曲"になっていますね。

3代目テーマ音楽 「Touch Down」

Touch Down
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続いて、1997年度からはTouch Downという曲が、3代目のテーマ音楽になりました。

「Touch Down」作曲:本多さんのお話

この曲は「クロ現らしいテーマ音楽でお願いします」というオーダーだったのです。番組開始から4年が経って、番組が熟成したというか、「クロ現ってこんな感じ・・・」というイメージがすでに共通理解になりつつあった時期だからだと思います。たとえば93年に番組が始まる前に「クロ現らしい音楽で」と言われても困ってしまうと思うのですが、このときにはもう、そういうオーダーでもいけるくらい、番組のイメージの共有ができていたように思います。

できあがった「Touch Down」は、いまこうして改めて聴いてみると、93年の最初の曲と「STRAY-SAX」のちょうど中間というか、スピード感はあってもどこか安定した感じの曲だと思います。ただ、いま改めて93年の曲とくらべて聴くと、同じように自分がサックスを演奏してコンピュータでドラムを打ち込んでいるのですが、まったくドラムの音色が違うというか、時代に合わせたリズムになっていますね。

4代目テーマ音楽 「Quiet Blossom」

Quiet Blossom
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1998年度からはQuiet Blossomという曲が、4代目のテーマ音楽になりました。

「Quiet Blossom」作曲:本多さんのお話

このときは一転して、「番組を全然ちがう顔にしたい」というお話があったのです。CGのコンテも「蓮の花が、花開いて・・・」という、とても落ち着いた感じでした。それまではずっと"攻撃的"な感じの曲だったのですが、ガラッと変えて、むしろ"癒やし"の曲にしたいということだったのです。

Touch Down」までの3曲はサックスで演奏することが決まっていたのでサックスで作曲していたのですが、この「Quiet Blossom」はピアノで作りました。このときまでのクロ現のテーマ音楽とはまったく違う曲ですが、こうした"内省的"な感じの曲もそれまでよく作っていたので、「じゃあ、こんな感じかな・・・」というふうに作りました。
この曲のメインのパターン「♪タン、タン、タン、タン、タタタン」はピアノを弾きながらいろいろと考えて、「・・・あ、これだ!」と思いついたメロディーです。このパターンが先にあって、導入部のキャッチーなメロディーを作りました。

この曲はシンセサイザーではなく、弦楽器などを演奏家の方に弾いていただいた生演奏を収録しました。いま改めて聴くと、ラストの部分などは思わず「まあ、ステキ」と感じてしまうほど、いい感じです。

5代目テーマ音楽 「Millennium」

Millennium
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そして2000年からは、まもなくやってくる21世紀を前に、その名もMillenniumという曲になりました。
この年からクロ現は「夜9時30分からの放送」から「夜7時30分からの放送」に変わりました。Millenniumは、いまと同じ夜7時30分に移ったときの曲で、歴代のテーマ音楽のなかで最も長い期間(5年間)流れていた曲でもあります。

「Millennium」作曲:本多俊之さんのお話

このときは、まもなく21世紀を迎えるというタイミングで、CGも「蓮の花」からもっと「日常的な感じ」になるということでした。

そこで、"日常のテンポ感"を意識して、基調はアコースティックな感じで、でも"いい意味で耳につく"というか、印象に残る曲にしたいと思って作りました。

この曲もピアノで作りました。演奏は、フルート、クラリネット、オーボエなどの管楽器を使った室内楽オーケストラとピアノの生演奏です。

Millennium(『SMILE!』版)
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この曲は自分でも気に入っています。

わたしは、クラシック・サックス奏者の彦坂眞一郎さんとともに、サックス2本とピアノの『 SMILE! 』というユニットを作って活動していて、ジャズ、クラシック、ポップとジャンルの垣根を超えて"ハイパー室内楽"という感じでやっていますが、このユニットでも「Millennium」を演奏しています。サックスで弾いた「Millennium」です。

Millennium」は"曲の時代感"がいまと同じなのですよね。それまでのテーマ音楽の4曲は、どちらかといえば80年代の音を引きずっているというか、いま聴くと「ちょっと違うかな」という感じもするのですが、「Millennium」は"いまっぽい"というか、いまも聴ける感じがします。5曲のなかでいちばん印象に残っているし、いちばん好きな曲ですね。


いま5曲を振り返ってみると、「クローズアップ現代テーマ曲」「STRAY-SAX」「Touch Down」までの3曲は、"サックスプレイヤー兼作曲家"の本多俊之の世界。そして「Quiet Blossom」「Millennium」は、より"作曲家"的な本多俊之の世界、という感じです。クロ現のテーマ音楽5曲を通じて、本多俊之のいろいろな面を出すことができたように思います。

それぞれの曲を作っているときは、そのときそのときのオーダーで作っているので、自分としては"時代"だとか"世相"だとかはあまり意識していないのです。でもテレビでクロ現を見て、そこに自分の音楽が流れているのを見ると、「ああ、いまの時代っぽい音だなあ」と思うことがよくありました。作曲家のわたし自身も「"現代"という時代」のなかに生きている、というか、わたし自身も無意識のうちに「なにか大きなものに突き動かされているのだなあ」と改めて感じています。

6代目テーマ音楽 「Truth」

Truth
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2005年度からは新たに、作曲家の 五木田岳彦さん にテーマ音楽の作曲をお願いしました。

「Truth」作曲:五木田岳彦さんのお話

五木田岳彦

クロ現の音楽担当者からは、まずは"報道番組のテーマソング"なので、「明るいニュース」から「暗いニュース」まで「幅広いテーマに合うような曲であってほしい」と言われていました。

またクロ現を長く担当してきた本多俊之さんからバトンを受けてわたしに変わるということで、ある程度は「変わった感」というか、新しさ・斬新さが求められてもいました。ただここは難しくて、放送時間が19時30分という、家庭では夕食を食べている時間であり、時には団らんの時間であり、とにかく普通の時間なので、「あまり奇抜すぎないように」とも言われていました。でも、一方では「だからと言って、あまりにも"わかりやすい"テーマソングにはならないように」という要望もあったのですけれども。

そこで7~8曲のデモテープを作って、担当の方と相談して、最終的に「Truth」になる曲を選びました。この曲は、最初の10秒の「導入部」と、そのあとの「メイン部分」の2つにわかれています。担当の方からは「視聴者をひきつけるには、最初の5秒が大事」と言われていて、この「導入部」をどうするか?という点がいちばん大変でした。

わたしは最初にグランドピアノでザクッと弾きながらアウトラインを作って、それをコンピュータに落として作曲を仕上げていきます。頭の中に国谷裕子キャスターがスタジオに座っているイメージを思い浮かべながら、「こういう感じかな?」「ああいう感じかな?」と何度も書き直していました。"斬新さ"と"わかりやすさ"のさじ加減というか、バランスがなかなか納得できなかったのですね。

それで結局、仕事部屋では最後の最後、納得できるとことまでは行き着かなくて、うーん・・・と思いながらその日も寝室で眠ったのですね。すると5分か30分くらいか、すこし寝てから「あれっ!」と思って、バッと起きあがって「やっぱり導入部はこんな感じなのではないか?」って気付いて、枕元に用意しているメモ帳にバーッと楽譜を書きました。よくこうなるので、枕元にはメモ帳を用意してあるのです。この「Truth」の導入部も、寝つきに空から降ってくるように生まれた曲なのですね。

この曲は3拍子か4拍子かわからない、ちょっと変わった感じで進む曲で、でも耳になじむような気もする曲ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

自分が作った「Truth」が流れるクロ現を家で見るときは「音楽が邪魔にならずに、視聴者に受けとめてもらえているかなあ」とよく思っていました。

7代目テーマ音楽 「クローズアップ現代オープニングテーマ2009」

クローズアップ現代オープニングテーマ2009
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そして2009年度からは、いまも流れている現在のテーマ音楽に変わります。
クロ現の7代目のテーマ音楽はズバリクローズアップ現代2009というタイトル。
この曲も、五木田岳彦さんの作曲です。

「クローズアップ現代2009」作曲:五木田岳彦さんのお話

この曲は「Truth」よりもさらに"キャッチーな感じ"を追求するというか、「とにかく"つかみ"だ。もっと短く、10秒に"凝縮"してほしい」という依頼でした。

2005年の時点よりも、もっと時代が変わっている、時代にあわせてもっとキャッチーにするにはどうすればいいのか?と考えて、ピアノでいろいろ弾いているうちに思い浮かんだのが、この曲です。「Truth」はまだクラシック音楽的な感じもあったのですが、この「クローズアップ現代2009」は、出だしの10秒にすべてが込められている、というか、そこにすべて"凝縮"して作りました。

クロ現のテーマ音楽は週4回ゴールデンタイムに流れる曲なので、広い意味で社会に対する責任が大きいとも思っています。音楽は、聞いているひと、特に子どもの感性に直接訴えるというか、脳みそにインプットされるものだと思います。自分自身も子どものころからテレビ番組の音楽を聴いて、いろいろな影響を知らず知らずのうちに受けてきました。なので、今度は自分の音楽がいまの子どもたちにどんな影響を与えることができるのか。そうした責任もあると感じているのです。


ミュージシャン仲間にもテーマ音楽はよく知られています。だからわたしがピアノでテーマ音楽を弾くと、「あっ聞いたことある!これ五木田さんの作曲だったの!」とよく言われています。みんな、曲は知っていても作曲者は知らないですから。わたしのコンサートでもクロ現のテーマ音楽を弾くことがあるのですが、テーマ音楽はとても知られているので、とても人気があるのですよ。

クロ現の番組の終わりに次回予告をやってくれることがありますよね。これはクロ現を見ている視聴者のなかで、わたしだけだと思うのですが、わたしはこの予告編がとても好きです。というのも、予告編が出るときはテーマ音楽をすこし変えたエンディングテーマが割と長い時間流れるのですよね。予告編がないときは、エンディングテーマはほんの数秒しか流れませんが、ごくたまに予告編が長く出るときは「わー、エンディングテーマがこんなに長く流れているー!」とちょっと嬉しくなりますね。

今回、本多さん、五木田さんにお話をうかがいながら、また特集の文章を書きながら、かつての"テーマ音楽"を何回も聴き直しました。聴くたびに、一気に、その曲が流れていた当時に連れて行かれるというか、タイムスリップしているような感じになりました。それぞれの"テーマ音楽"の持つ力を、いま改めて感じております。
これからも、すばらしい"テーマ音楽"に恥じぬよう、クロ現の新たな歴史を切りひらいていきたいと考えております。

五木田さんが「流れると嬉しくなる」というエンディングテーマ。きょうは、そのエンディングテーマを聴きながら、お別れしたいと思います。ありがとうございました。
「クローズアップ現代エンディングテーマ2009」