2016年04月19日 (火)

避難生活 知っておくべき5つの事

0419_01_kisha.jpgのサムネイル画像「もし自分の町で大きな地震が起こったら・・・」熊本県や大分県で相次ぐ地震のニュースを見て、被災地を心配するとともに、このように考えた人も多いのではないでしょうか。地震の危険とともに心配になることの1つが避難生活です。今回の地震では、4月19日の時点で9万5000人が避難していて、生活環境の悪化から体調を崩し、なかには亡くなる人まで出ています。去年9月、鬼怒川の堤防が決壊するなどした「関東・東北豪雨」や、おととし8月、70人以上が犠牲になった広島市の土砂災害など、国内では毎年のように大きな災害が起きています。もしあした自分が避難しなければならなくなったら。自分と家族を守るためにどんなことに気をつければいいのか、5つの項目をまとめました。科学文化部の稲垣雄也記者と出口拓実記者が解説します。

自宅を出たところから注意!

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地震などの災害で避難するときは、自宅の外に出た直後から注意が必要です。避難するとき、慌てて転んだりしてけがをすると怖い病気にかかるかもしれないからです。地震や大雨などで家屋が倒壊したり、土砂崩れが起こっていたりするといつもは土の中にいる「破傷風菌」が家屋の柱の表面に付いたり、地表面に出てきたりして触れることで感染する恐れが出てきます。 
この細菌は小さな傷口などから体の中に侵入し、3日から3週間ほどの潜伏期間のあと、口がしびれて開きにくくなったり、顔面が硬直するなどの症状が起こり、治療が遅れるなどすると発症した人の30%が亡くなったという報告もあります。日本では昭和43年に発症を予防するワクチンの定期接種が始まったため、40代後半以降の人を中心に免疫がない人も多く、東日本大震災のときにはこの年代の患者が10人報告されました。 
専門家は、避難するときや家屋の倒壊に巻き込まれるなどしてけがをした人は傷口などの土をきれいにふきとり、速やかに消毒する事、また自宅の後片づけなどを行うときにも手袋をしてけがをしないよう気をつけてほしいと話しています。

車の中だけじゃないEC症候群

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次は、避難生活が始まってから注意するポイントです。 
今回の地震でも注目されているいわゆる「エコノミークラス症候群」。車の中で避難を続ける人の中で相次いで報告されていますが、実は避難所で生活するときにも注意が必要です。エコノミークラス症候群は、飛行機や車の中などで長時間同じ姿勢でいると足の血液の流れが悪くなって血の塊ができてしまうとされるもので、なかには、その塊が血管を通じて肺の動脈まで運ばれ、最悪の場合、血管がつまって亡くなることもあります。 
車の中だけでなく、避難所でも体を動かさずに座ってばかりいると発症するリスクが高まるとされていて、東日本大震災でも地震の発生から4か月後までに宮城県内の32の避難所で検診したところ、足の血管から血の塊が確認された人が190人見つかったという報告があります。このうち女性2人は肺の血管でも血の塊が見つかったため入院して治療を受けたということです。血の塊が見つかった人のうち、70歳以上の高齢者は、60%以上を占めていて、調査をした石巻赤十字病院の植田信策医師は「人が密集する避難所では、特に高齢者にとっては、起き上がって体を動かしにくいし、気付かないうちに脱水気味になって血流が停滞しやすい状況になる。断水などの状況下では避難所でも意識的に体を動かすことを心がけてほしい」としています。

集団感染にも注意

そして、避難所で注意しなければならないのは、感染症です。 
地震の発生から1週間が経過すると、被災地ではさまざまな感染症の報告が増える傾向にあります。今回の地震でもすでに避難所でノロウイルスの患者が報告されていますが、東日本大震災ではインフルエンザの集団感染が起き1つの避難所で10人以上が数日の間に相次いで感染する集団感染も起きています。避難所では、水や食料が不足して体力が落ちている人が増えるうえ、限られたスペースで多くの人が長時間過ごすために感染が広がりやすいほか、断水や消毒液の不足などの影響で手洗いなどの予防策も不十分になりがちです。 
水や物資が限られた中での対策について専門家は、手洗いの代わりに水でぬらしたタオルで手を拭き取ったり、食事をするときはラップでくるんだり、割り箸を使ったりして、直接手で触れないように工夫するだけでも一定の効果があるとしています。また、定期的な換気をしたり、スペースに余裕がある場合は隣の人との間隔を1から2メートルほど開けることも有効な対策だということです。

子どもへの影響は

避難生活はお年寄りだけでなく、子どもの健康にも影響を与える可能性が指摘されています。 
厚生労働省の研究班が、東日本大震災で被災した当時3歳と4歳の子ども合わせて840人を対象に1年半後の健康状態を調べたところ、家が全壊、または半壊した子どもの6.3%がぜんそくになっていて、被災しなかった子どもに比べ発症する割合が2.11倍高くなっていました。 
また、アトピー性皮膚炎と診断された子どもも、発症する割合が被災していない子どもの1.67倍に上っていて、カビやダニが生じやすい避難所や仮設住宅で生活したことが影響しているのではないかとされています。 
さらに、もともとぜんそくやアトピー性皮膚炎などアレルギーなどがある子どもは避難生活で環境が変わると症状が悪化するおそれも指摘されています。 
そのため、日本小児アレルギー学会では、毛布や布団にダニやほこりがついている可能性があるため、顔と布団の間に清潔なタオルを入れたり、布団をたたんだり敷いたりするときにはマスクを着用するなどの対策を勧めています。 
また、学会では今回の地震を受けてメールでの相談窓口を開設しています。 
メールアドレスはsup_jasp@jspaci.jpで、名前、年齢、性別、住所、電話番号を書いて送ると、緊急性や症状に応じて医師から連絡があり相談できるということです。

善意が病気を生む?

避難生活を巡っては、被災した人たちだけでなく、避難している人を助けようとボランティアをする人たちにも注意しなければならないことがあります。 
宮城県南三陸町の65歳の町民およそ4000人を対象に行われた調査では、震災前に元気だった人のうち東日本大震災からおよそ半年後の時点で歩けなくなっていたり、歩きにくくなったまま回復していない人の割合は24%に上ることが分かっています。 
同時に行ったアンケート調査では、生活の変化について家の外や中ですることがないと答える人が多く、運動する機会などが減ることで筋力や心肺機能などが衰えるこうした病気は「生活不活発病」と呼ばれていています。 
調査をした産業技術総合研究所の大川弥生招聘研究員は、災害時、特に高齢者で生活が「不活発」になる原因について、「ボランティアなど支援する人たちが『高齢者だから』と手伝いすぎてしまうことで、体を動かす機会を奪ってしまうケースが多い」と指摘しています。

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大川研究員が被災地で聞き取り調査をしたところ、他にも▽家族から「危ないから外に出ないで」と言われて外出が減ったりするなど、周囲の善意が生活の不活発につながるケースが見られたということです。こうした理由以外にも災害時にはスポーツや散歩をしづらい雰囲気を感じたりするなど生活が不活発になる状況が生まれやすいということで、大川研究員は「被災者だけでなくボランティアを含めた周りの人たちも生活不活発病について理解を深めることが大切だ」と話しています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:21:40  | カテゴリ:くらし
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