2016年05月15日 (日)

地震後「産後うつ病」の疑いの母親増える

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熊本地震のあと、生後1か月前後の赤ちゃんを育てる母親の5人に1人が「産後うつ病」の疑いがあることが、熊本市の病院の調査で明らかになりました。割合は地震の前の2倍となっていて、病院は「母親を孤立させない対策を急ぐべきだ」と指摘しています。

調査を行ったのは、毎年3000人以上が出産し、分べんの数が熊本県で最も多い、熊本市中央区の福田病院です。
この病院で子どもを出産してから1か月以内に熊本地震を経験した母親186人を対象に、はっきりした理由もないのに不安や恐怖にかられることや自分を傷つけたいと思ったことがあるかなどを聞きました。
その結果、産後うつ病の疑いがあると判断された母親は38人と、5人に1人、率にして20%に上ったことが分かりました。
一方、地震前のおよそ2週間に行った調査では、疑いがあるとされたのは全体の11%で、地震のあと、割合がおよそ2倍に増えたことになります。
なかでも地震が発生した直後の1週間の調査では、疑いがある母親は27%に上り、特に高い割合になったということです。
母親の多くは、強い不安感を持ち、十分に眠れないなどと答えていて、なかにはストレスで子どもに手を上げそうになったことがあると答えた母親もいたということです。
病院では、産後うつ病が深刻化すると、自殺や子どもの虐待にもつながりかねないとして、母親を孤立させない対策を急ぐべきだと指摘しています。福田病院の河上祥一院長は「産後の不安に地震のストレスが加わり、誰が産後うつ病になってもおかしくない状態だ。臨床心理士を今以上に被災地に派遣するなどして、母親を長期的にサポートする態勢を作るべきだ」と話しています。

産後うつ病 東日本大震災後も増加

産後うつ病は、出産した母親の1割ほどにみられるとされています。出産後2か月から4か月ほどが発症のピークで、軽いうつ状態から日常生活が送れないほどの疲労感など、程度はさまざまです。専門家によりますと、なかには自殺に至ったり、子どもを虐待したりするケースも報告されているということです。
また、東日本大震災のときにも産後うつ病の疑いがあるとされた母親が増加し、特に津波を経験した母親が割合が高い傾向にあったという報告もあります。
周産期医療の問題に詳しい順天堂大学の竹田省教授は、「被災地では、産後うつ病の疑いがある母親が増加するだけでなく、症状が深刻化するケースが増えるおそれもある。母親の孤立を避け、カウンセリングを十分に行っていく態勢作りが不可欠だ」と指摘しています。

避難生活で追い詰められる母親

出産後すぐに地震の被害に遭った母親の中には、強いストレスや不安を感じながら避難生活を送っている人がいます。
熊本市西区の宮本広美さん(35)は、3月27日に次男の一咲くんを出産し、1か月もたたないうちに地震の被害に遭いました。
自宅のマンションは玄関の扉が開かなくなるなどしたため、およそ3週間にわたって車中泊を余儀なくされました。夫とほかの子どもも含めた家族5人が、軽自動車の中でほとんど身動きのとれない状態で寝泊まりしていました。疲労がたまり、夜泣きや相次ぐ余震で20分おきに目を覚ます日が続いたため、精神的に不安定になり、夜1人になると、理由もないのに涙が出る日もあったということです。
日中は公園や避難所で過ごしていましたが、周りの人たちに迷惑がかからないよう、一咲くんが泣くたびに外に出てあやし、避難所で寝泊まりはできませんでした。強いストレスでいらいらし、子どもを強い口調で叱ったり、頭がぼんやりして何も考えられないときもあったと言います。
避難生活のなかで撮った家族写真は笑顔を見せていますが、子どもたちに笑ってもらうため無理やり作った笑顔で、実際はストレスと不安で追い詰められていたと言います。
現在は余震が減ったため、熊本市内の夫の実家に避難しています。宮本さんは「産後うつ病」の疑いがあるとまではされていませんが、今も赤ちゃんを抱いているときに、余震が起きるたびに強い恐怖や不安感に襲われるということです。
宮本さんは「自分のことで精いっぱいで、子どもに十分かまってあげられず、母親失格だと自分を責める日もありました。理由もないのに涙が出たことは初めてで、追い詰められていたと思います。この先どうなるのかという気持ちは今でもあります」と話していました。

母子専用の避難所でリスクを減らす

どうすれば「産後うつ病」になるリスクを減らせるのか。
熊本県助産師会などは、避難生活を送る母親などに安心して子育てしてもらおうと、先月23日から熊本市中央区に母子専用の避難所を設けています。利用は無料で、現在3組の親子が入所しています。
ボランティアの助産師が24時間態勢で付き添うほか、おむつの交換や夜泣きへの対応、それにもく浴のしかたなどを教えています。さらに、母乳がちゃんと出るよう、栄養のバランスに配慮した食事が提供されています。
西原村の自宅が被災し、その後、男の子を出産して避難所にやって来た、高本美穂さんは、「同じ境遇の母親ばかりなので、夜泣きや授乳で周りに気を遣うことがなく安心です。地震のあと母乳が少なくなりましたが、避難所に来て、ちゃんと出るようになりました」と話していました。
ただ、熊本県助産師会によりますと、こうした出産直後の母親と赤ちゃん専用の避難所は、県内ではこの施設1か所だけだということです。避難所でサポートに当たる助産師の怒留湯美季さんは「地元や家族から遠く離れたくないと、母子専用の避難所への入所をためらう母親もいると思うので、避難所をもっと各地に作っていく必要がある」と話しています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:18:22  | カテゴリ:くらし
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