2016年07月27日 (水)

子宮頸がんワクチンで副反応 国と製薬会社を提訴

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子宮頸がんワクチンを接種したあと、原因不明の体の痛みなどを訴えた63人の患者が、安全性や有効性が十分に確認されていないのに、ワクチンの接種を勧めたのは違法だなどとして、国と製薬会社に治療費や慰謝料などを求める訴えを、27日に全国4つの裁判所に起こしました。

訴えを起こしたのは子宮頸がんワクチンを接種したあと、体の痛みや記憶力の低下などの副反応が出たと訴えている全国の15歳から22歳までの女性合わせて63人です。
訴えによりますと原告たちは、ワクチンの安全性が十分に確認されていないうえ、がんの発症を防ぐ効果が証明されていないのに、公費助成の対象にしたり定期接種にしたりして接種を勧めたのは違法だなどとして、国と製薬会社に対し、治療費や慰謝料など一人当たり1500万円以上の賠償を求めています。
弁護団によりますと27日は、東京や大阪、名古屋、それに福岡の合わせて4つの裁判所に訴えを起こしたということで、原告は、今後さらに増える見込みだということです。
子宮頸がんワクチンは、国内で7年前から接種が始まり、平成25年度からは定期接種に追加されましたが、接種後、体の痛みなどを訴える患者が相次ぎ、国が接種の積極的な呼びかけを3年以上も中止する異例の事態が続いています。

原告の一人で、埼玉県に住む酒井七海さん(21)は「今も外出には車いすが欠かせず、治療のため大学には半分以上通えない状況で、友達と出かけたりする学生らしい時間も過ごせずにいます。10代で取り残されていくようなつらさや、不安に苦しんだ時間は二度と戻ってきません。なぜ自分が被害を受けたのか、適切な医療を受けられなかったのかを知りたいです。今回の裁判で問題の背景が明らかになって、同じようなことが繰り返されないことを願っています」と話しています。

厚生労働省「支援を行うことが何より重要」

厚生労働省は「訴訟については現時点では報道されている内容以上のことは承知しておらず、コメントは差し控えたい」としたうえで「接種との因果関係は必ずしも明らかでないなか、長期に苦しんでいる方々がいることには非常に心を痛めており、寄り添いながら支援を行っていくことが何よりも重要と考えている」とコメントしています。

「主張に根拠はない」とコメントする製薬会社も

ワクチンを製造しているグラクソ・スミスクラインは「訴状を受け取っていないので裁判についてのコメントは差し控えます。症状によって苦しんでいる方々の、一日も早い回復をお祈りしています」などとするコメントを発表しました。

またMSDも「HPVワクチンは世界各国で承認を受けています。訴状を受け取りましたら、MSDは法廷で証拠を提出する考えです。原告の主張の内容に根拠はないと信じています」などとするコメントを発表しました。

日本産科婦人科学会「接種の呼びかけ再開すべき」

厚生労働省によりますと、子宮頸がんワクチンの接種を受けた人の割合は、定期接種化された平成25年は対象年齢の女性の15%に上りましたが、翌年は1%にまで下がり、その後も同じような状況が続いています。
ワクチン接種の積極的な呼びかけが3年以上にわたって中止されていることについて、日本産科婦人科学会の藤井知行理事長は「ワクチンを打たないことでヒトパピローマウイルスに感染し、先進国で日本のみ子宮頸がんの患者が減らない事態となることを懸念している。子宮頸がんの患者は今、30代がピークとなっていて、これから子育てを行う母親の世代に影響が出ることは非常に残念だと感じている」と話しています。
そのうえで「一連の症状とワクチンの成分との関係を科学的に肯定するデータは今のところない。学会としては症状の出た方に対応できる医療体制を継続して取っていくとともに、積極的な接種の呼びかけを再開すべきと考えていて、接種を呼びかけるポスターを配布するなど働きかけていきたい」と話しています。

中止から3年以上 なぜ接種の判断できないのか

国が積極的な接種の呼びかけを中止してからすでに3年以上がたっていますが、なぜ、こうした事態がずっと続いているのでしょうか。
背景には、ワクチンの副反応を把握したり分析して判断したりするための仕組みの問題があると専門家は指摘しています。

ワクチンの接種後に起きた症状がワクチンと関係があるかどうかを調べる重要な方法の1つは、接種したグループと接種していないグループで症状のある人の数を比べる調査です。

日本より3年早く子宮頸がんワクチンを承認したアメリカは、医療機関が持つ900万人分のカルテなどの情報からワクチンの接種歴や症状の有無についてデータを集め分析するシステムを持っています。何か危険があればすぐに把握できるよう、アメリカではこのシステムを使って接種後に特定の症状が増えていないか毎週分析しているのです。子宮頸がんワクチンについても接種したグループだけに特定の症状が問題になるレベルで増える現象は確認されていないとして、接種が継続されています。

一方、こうしたシステムを持たない日本では、医療機関にアンケートを行うなど時間のかかる調査を一から始める必要があり、今回については調査のための専門家のグループが去年設立されましたが、最終的な分析結果をいつ出せるのか、見通しは立っていません。

ワクチンの副反応の分析などに詳しい京都大学医学部の川上浩司教授は、「ワクチンを継続するかどうかを判断するためにはデータを解析しなければならないが、日本には医療現場から情報を収集する仕組みが整っていないため、判断できないのが今起きている問題だ」と指摘しています。そのうえで「判断できない状況が続くことは国民に不利益をもたらすため、日本でも一刻も早く医療現場からデータを集めて解析する仕組みを整えるべきだ。ワクチンを安心して使えるようにするには副作用に関する情報をしっかりと可視化していくことが重要だ」と話しています。

大規模な調査の結果 見通し立たず

子宮の入口にできる子宮頸がんは、主に「ヒトパピローマウイルス」と呼ばれるウイルスの感染が原因で起きるがんです。高齢者を中心に年間およそ3000人が亡くなっていて、若い女性の間でも増えているがんです。

子宮頸がんワクチンは、この「ヒトパピローマウイルス」の感染を防ぐ効果があるとして7年前、日本でも承認されました。3年前の平成25年4月には、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に、国と自治体が費用を負担する「定期接種」に追加され、これまでに推計340万人が接種を受けています。

しかし、接種後に原因不明の体の痛みなどを訴える患者が相次ぎ、厚生労働省は、定期接種となった僅か2か月後に、「接種との因果関係が否定できない」として積極的な接種の呼びかけを中止。その後、厚生労働省の専門家会議は「ワクチンそのものが原因ではなく、接種の際の不安などの心理的な要因によって症状が出た可能性がある」とする見解をまとめましたが、詳しい原因は解明されておらず、全国で接種を見合わせる動きが広がりました。

また去年10月には症状が回復しないままの人が、若い女性を中心に少なくとも186人いることが分かり、接種との因果関係が否定できない患者については、医療費などの救済も始まっています。

厚生労働省は、現在、積極的な接種の呼びかけを再開するかどうか判断するため、ワクチンの接種を受けた人と受けていない人の間で、体の痛みなどの症状の出方に違いがあるのかを調べる大規模な調査を進めています。しかし最終的な分析結果を、いつ出せるのか見通しは立っておらず、ワクチン接種の積極的な呼びかけを3年以上中止する異例の事態が今も続いています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:18:06  | カテゴリ:くらし
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