2015年05月11日 (月)

特集・アトピーの原因は細菌の増殖?

0511_01_kisya2.jpg子どもの10人に1人に症状が出ると言われるアトピー性皮膚炎。長期間続く、皮膚の強いかゆみと炎症反応が特徴です。これまでアトピー性皮膚炎は、免疫の異常な反応によって起きるアレルギー性疾患だと考えられてきました。ところが、アメリカのNIH・国立衛生研究所と慶應大学などのグループが、アトピー性皮膚炎の原因について、皮膚の表面にいる複数の細菌が関係しているのではという新しい研究結果を発表し注目を集めています。多くの人たちを悩ませるアトピー性皮膚炎の原因について最新の研究を科学文化部の藤原淳登記者が解説します


アトピー性皮膚炎っでどんな病気?

アトピー性皮膚炎は、子どもを中心に発症する病気です。強いかゆみを伴った皮膚の炎症が、長期間続きます。症状は、良くなったり、悪くなったりを繰り返し、大人になっても続くことが少なくなく、悩む人が多い病気です。

これまでは、▽花粉症や食物アレルギー、ぜんそくなどのアレルギー体質の人に発症しやすいこと、▽また血液検査をするとダニやハウスダストなどに対する抗体価が高くなっていることから、異常な免疫反応によるアレルギー性疾患と考えられていました。

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ところが、先月、これとは全く異なる仕組みで、アトピー性皮膚炎が起きているのではないかという研究結果が発表され、注目を集めています。

細菌が鍵か?

研究を発表したのは、アメリカの国立衛生研究所の永尾圭介主任研究員と慶應大学などのグループです。

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永尾主任研究員たちは、遺伝子組み換えの技術を使って、ヒトのアトピー性皮膚炎と極めて似た症状を出すモデルマウスを作り出すことに成功しました。
そして、そのマウスの皮膚の表面を詳しく調べたところ、「黄色ブドウ球菌」と「コリネバクテリウム」と呼ばれる2種類の細菌が、アトピー性皮膚炎を発症する過程で、順を追って異常に増えることに気付きました。

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これらの細菌は、もともとアトピーの患者の皮膚に多いことは知られていたのですが、興味深かったのは、その増える順番です。アトピー性皮膚炎を発症する遺伝子を組み換えたマウスは、6週間ほどでアトピー性皮膚炎を発症します。ところが、「黄色ブドウ球菌」が大量に検出され始めるのは、生後4週間の段階から。つまり、アトピー性皮膚炎を発症する前の段階で、大量に増えていたのです。

ひょっとすると、アトピー性皮膚炎は、この黄色ブドウ球菌が、原因なのではないか。研究グループは、これらの細菌がどんな影響を皮膚にあたえるのか、さらにマウスで実験を繰り返しました。すると「黄色ブドウ球菌」は、モデルマウスの皮膚に感染させると強い炎症を引き起こすことが分かりました。アトピー性皮膚炎で起きるのと同じ症状です。一方、「コリネバクテリウム」は、皮膚表面で増えると、マウスの体内で異常な免疫反応につながる「抗体」と呼ばれる物質を作り出すことが分かったというのです。

これまでアトピー性皮膚炎は、▽アレルギー反応による異常な免疫反応→皮膚表面の炎症と考えられてきましたが、研究グループでは、▽黄色ブドウ球菌の急増→皮膚炎+コネリバクテリウムの急増→アレルギー反応という図式で起きるもので、強いかゆみを伴う皮膚炎の本当の原因は、黄色ブドウ球菌の急増にあるのではないかと考えたというのです。

細菌を消すと症状も消えた!0511_05_illisut1.jpg

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研究グループでは、次に、アトピー性皮膚炎のモデルマウスに、生後直後から、大量の抗生物質を投与し、黄色ブドウ球菌とコリネバクテリウムを排除する実験を行ってみました。すると、マウスは10週間経ってもアトピー性皮膚炎を発症しませんでした。一方、抗生物質の投与を止めると2週間でアトピー性皮膚炎を発症したのです。

抗生物質をヒトに投与すれば治る?

今回の研究では、アトピー性皮膚炎のマウスに抗生物質を使う事で発症のコントロールができることが示されました。ただ今回マウスに投与した抗生物質は、非常に多く、ヒトに同じ量の抗生物質を投与することは、実際にはできないということです。また投与を止めてしまうと、症状が再び出てしまうことから、この方法がヒトの治療にすぐに応用できるわけではありません。

研究グループが、新たな治療法の開発に向けて考えているのは、皮膚表面の細菌の量をコントロールし、そのバランスを崩さないことです。アトピー性皮膚炎の治療は、今はステロイドを含む軟こうを塗って皮膚の炎症を抑えるという対症療法が中心ですが、皮膚炎の原因ではないかとみられる黄色ブドウ球菌の量をコントロールできる方法が見つかれば、患者にとって治療の選択肢が増え、大きなメリットになると考えています。

研究グループでは、今回の研究成果をもとに、さらに詳しくアトピー性皮膚炎の発症のメカニズムを解明し、細菌をコントロールする具体的な方法についても研究を進めたいとしています。

 

投稿者:かぶん |  投稿時間:21:02  | カテゴリ:科学のニュース
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