2016年04月06日 (水)

川内原発運転停止の仮処分申し立て 退ける決定

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鹿児島県にある川内原子力発電所1号機と2号機の運転停止を求めている住民の仮処分の申し立てについて、福岡高等裁判所宮崎支部は「原子力規制委員会の安全性の判断が不合理とは言えない」として、退ける決定を出しました。

鹿児島県にある九州電力川内原発の1号機と2号機について、鹿児島県や熊本県などの住民12人は運転の停止を求める仮処分を申し立て、去年4月、鹿児島地方裁判所が退けたため、福岡高等裁判所宮崎支部に抗告していました。
6日の決定で福岡高等裁判所宮崎支部の西川知一郎裁判長は「原子力規制委員会の火山評価の方法は、巨大噴火の時期や規模を発生前に予測できることを前提としている点で不合理な点がある」と指摘しました。
その一方で、「原発周辺で起こりえる巨大噴火は極めて低い頻度であり、原発の運用期間中に噴火の可能性が相応の根拠をもって示されているとは言えず、安全性の確保の観点で原子力規制委員会の判断が不合理とは言えない」などと指摘しました。
このほか、地震などに対する安全性の判断にも不適当な点は見当たらないなどとして、住民側の申し立てを退けました。
川内原発は、福島第一原発の事故後に作られた新しい規制基準の下で、全国で初めて1号機が去年8月に再稼働し、2号機も去年10月に再稼働しています。
原発を巡る仮処分では、先月、大津地方裁判所が稼働中の原発としては初めて、福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機の運転停止を命じましたが、裁判所の判断が分かれる結果になりました。

住民側「地裁の決定より後退」

仮処分の決定文が交付されたあと、住民側の弁護士たちは裁判所の前で「不当決定」や「私達は屈しない」と書かれた旗を掲げました。裁判所の前に集まった住民や支援者からはため息が聞かれました。
申し立てを行った住民の1人で鹿児島県薩摩川内市の森永明子さん(44)は、「決定は残念です。司法に期待していたので、きょうの結果は悔しい」と話していました。また、鹿児島市の井ノ上利恵さん(57)は、「悔しいです。住民や子どもの未来のために訴え続けたい」と涙ながらに話していました。
弁護団長の森雅美弁護士は、「政府や原子力規制委員会の考えを追認した不当な決定だ。火山のリスクや避難計画の不備などの論点では、去年の鹿児島地方裁判所の決定と比べても後退しており、納得できない」と述べ、裁判所の判断を批判しました。

九州電力「妥当な決定」

九州電力は「川内原発の安全性は確保されているとのこれまでの主張が認められ、妥当な決定だと考えている。今後とも、さらなる安全性・信頼性の向上への取り組みを自主的かつ継続的に進め、安全確保に万全を期してまいります」とするコメントを出しました。

原発のある薩摩川内市では

今回の決定について、川内原発がある薩摩川内市の75歳の男性は「原発があることで経済が潤うので、申し立てが棄却されたことは非常によいことです。決定を前向きに捉えたい」と話しました。
また、66歳の男性は「ほっとしています。原発がないと地元の自営業者はやっていけないと思う」と話していました。
一方、71歳の女性は「決定は非常に残念です。危ない原発を子どもや孫の世代に残してはいけないと思います。もし事故が起きたら、薩摩川内市は大きな被害を受けてしまいます」と話していました。
薩摩川内市の岩切秀雄市長は「司法判断に関してのコメントは差し控えるが、九州電力には、安全運転と安全性向上に向けた不断の取り組みに加え、適宜適切な情報提供に努めてもらいたい」とするコメントを発表しました。

分かれる裁判所の判断

原子力発電所を運転させないよう求める裁判所への申し立ては、5年前の原発事故をきっかけに全国で相次いでいて、裁判所の判断は分かれています。
原子力発電所を巡る裁判は昭和40年代後半から起こされていますが、5年前に福島第一原発の事故が起きると、改めて安全性を問う動きが広がりました。
住民などのグループの弁護団によりますと、全国の裁判所に申し立てられた仮処分や集団訴訟は現在およそ30件に上っているということです。
このうち、福井地方裁判所では去年、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない決定が出たのに対して、別の裁判長が関西電力の異議を認めて、この決定を取り消しました。一方、同じ高浜原発3号機と4号機について、大津地方裁判所は先月、運転の停止を命じる仮処分の決定を出し、関西電力が異議を申し立てています。
川内原発1号機と2号機については、去年、鹿児島地方裁判所が住民の申し立てを退け、6日の決定で福岡高等裁判所宮崎支部も申し立てを認めませんでした。
今後も各地で原発の再稼働に向けた手続きが進むなか、運転させないよう求める申し立ても増えるとみられ、司法の判断が注目されます。

専門家は

今回の決定について原子力工学が専門の東京大学の岡本孝司(こうじ)教授は、「地震によって原発の建物や機器が壊れたり、自然災害や人為的なミスなどによって不測の事態が生じたりするリスクが皆無ではないと、裁判所が認めているのは当然なことだ。事故への備えが機能しない場合にもそのほかの多重な設備で対処し、重大な事故を防ぐとした新たな規制基準の理念を理解していて、非常に論理性のある判断だ」と評価しています。

科学史が専門の九州大学の吉岡斉(ひとし)教授は「原発の過酷事故に対するリスクの認識が、裁判官によって大きな差があることを改めて感じる。今回の決定では原発を運転する上での危険性がどこまで許容できるのかの判断は社会通念に基づくと明確に述べているが、裁判官は危険性に寛容だと思わざるを得ず、これが社会通念と言えるか疑問だ」と話しています。

科学史が専門の千葉大学の神里達博教授は「福島第一原発の事故がもたらした被害や教訓を重視するのか、それとも川内原発の安全対策に限って判断を下すのかでおのずと結論は変わってくるように、司法の一連の判断をみると、裁判官の問題のとらえ方に大きく左右され、純粋な科学的な議論だけで結論を出すのは難しい。全体的には司法も迷っているように見える」という見方を示しました。その上で、「原発の再稼働は、私たちがどのような社会を実現したいかに関わるもので、裁判所や専門家だけに議論を丸投げしていい問題ではなく、今も続く福島第一原発事故の大きな影響をみても、議会や行政、市民など社会全体でより真剣に議論しなくてはならない問題になっている」と話しています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:10:38  | カテゴリ:科学のニュース
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