2016年04月09日 (土)

米企業のロケット 高度約70キロから船上に

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アメリカのベンチャー企業が打ち上げた無人のロケットが、高度およそ70キロまで上昇したあと、大西洋に浮く無人の船まで戻ってきて、無事着地することに成功しました。上昇を終えたロケットは「使い捨て」になるのがこれまでの常識で、ロケットの打ち上げコストを下げる画期的な技術として注目されています。

ベンチャー企業のスペースX社は、これまで1回きりの使い捨てになるのが常識だったロケットを何度も再利用できるようにしようと、打ち上げて上昇を終えたあと、特定の場所にみずから飛行して戻ってくる、新型ロケットの開発を進めてきました。
このロケットの実験を兼ねた打ち上げが日本時間の9日午前5時43分に行われ、ロケットはアメリカ南部フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から飛び立ちました。
スペースX社などのカメラが捉えた映像には、高度およそ70キロまで上昇したロケットが、大西洋に浮く無人の船に向けて、ゆっくりと下降して近づいていく様子が映し出されました。そして最後に船のほぼ中央に立つように着地し、スペースX社は実験が成功したと発表しました。
スペースX社がロケットを狙った場所に戻して、無事着地させることに成功したのは、去年12月以来2回目ですが、極めて難しいとされる海を航行する船の上に戻すのは初めてです。
宇宙開発の常識を覆したとも言える成果で、打ち上げコストを下げる画期的な技術として注目されています。
ロケットの打ち上げに成功したあと、フロリダ州のケネディ宇宙センターで開かれた会見で、スペースX社のCEO=最高経営責任者、イーロン・マスク氏は「ロケットを戻すことが可能だと証明できた」と述べ、実験が成功したことへの喜びを表しました。そのうえで、今回戻ってきたロケットに異常がないかどうか、地上でも実験を行い、問題がなければ、来月か再来月には同じロケットを再び打ち上げるとコメントし、「ロケットは将来的には何千回も再利用ができるだろうが、現状では10回から20回程度は可能だと思う。ほかのロケットも含めて、将来的にはすべてのロケットは再利用が当たり前になるだろう」と、今後の展望についての考えを示しました。

打ち上げコストの大幅減が期待

今回、実験に成功した技術が実用化されれば、1回当たり数十億円以上かかるロケットの打ち上げコストを、大きく下げることができるのではと期待されています。
ロケットはこれまで、打ち上げのたびに新品のロケットを製造するのが常識とされてきました。上昇し終えたロケットは多くの場合海に落下しますが、見つけ出して回収し工場まで運んで整備するのは、コストがかかりすぎるからです。
スペースX社が画期的なのは、上昇を終えたロケットを残った燃料を使って下降させて、海の上の狙った場所に着地させるという技術に挑んだことです。なかでも今回の実験は日本時間の9日午前、「宇宙ホテル」の試験機を打ち上げたロケット、「ファルコン9」を使って行われました。
2段のロケットで構成される「ファルコン9」の1段目に、開発中の新型ロケットを組み込み、宇宙空間に届く前の高度およそ70キロまで上昇して、役目を終えたあと、ゆっくりと下降させて大西洋を航行する船の上に着地させました。
この技術であれば、ロケットを海の中から回収する手間とコストがかからないほか、次の打ち上げに向けた整備も最小限に抑えることができます。
スペースX社は過去の実験では着地がうまくいかず、ロケットが爆発するなど失敗を繰り返してきましたが、その経験が今回生かされ、成功につながっています。
ロケットを再利用しようという取り組みは、宇宙開発に新たに参入したアメリカの民間企業に特徴的な傾向といえます。
アメリカのネット販売大手、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO=最高経営責任者が起業したブルー・オリジン社も、再利用のロケットの技術に取り組んでいて、打ち上げの実験を数回、成功させたと発表しています。
ブルーオリジン社とスペースX社との共通点は、一般の人を乗せて地球と宇宙を行き来できるロケットや宇宙船の開発を目指していることで、コストをできるかぎり下げることが「有人宇宙ビジネス」を成り立たせるうえで不可欠だとしています。
スペースX社のCEO=最高経営責任者のイーロン・マスク氏は、電気自動車メーカーのテスラモーターズの創業者としても知られ、マスク氏は「人類の火星移住を実現したい」とたびたび語ってきました。そのために必要なロケットや宇宙船をみずから開発するとしていて、再利用の技術は一般の人が火星に行けるようなるための鍵となる技術だと話しています。
ただ、かつてはアメリカのスペースシャトルも再利用を可能にした夢の宇宙船として大きく注目されました。しかし、想定されていた以上に、安全性を確保するための整備費用などがかかり、結果的には打ち上げなどの運用のコストがかさみすぎるとして退役を余儀なくされています。
再利用の技術は、コストがとにかく高額な宇宙開発においては夢の技術で、民間企業がその新たな可能性を実証したことに大きな意義があります。
ただ、高い安全性を求められるだけに、理想と現実のギャップは大きく、マスク氏らの挑戦が業界の常識をすべて覆して実を結ぶのか、世界の宇宙関係者の注目が集まっています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:17:41  | カテゴリ:科学のニュース
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