2016年05月14日 (土)

非常に強い長周期地震動 熊本地震で観測

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先月、熊本県で発生したマグニチュード7.3の大地震では、震度7を観測した熊本県西原村で超高層ビルなどが倒壊するおそれがあるほどの非常に強い「長周期地震動」が観測されていたことが分かりました。内陸の活断層の地震で、これほど強い長周期の揺れが観測されたのは初めてで、専門家は今後、大都市圏などの活断層周辺では対策の検討が必要だと指摘しています。

先月16日のマグニチュード7.3の大地震では、震度7を記録した西原村の観測点で、木造住宅に被害を与える周期が1秒から2秒の揺れに加えて、3秒から4秒と、超高層ビルなどを大きく揺らす非常に強い長周期地震動が捉えられていました。
地震工学が専門で工学院大学の久田嘉章教授は、東京・新宿区にある高さ140メートル余りの29階建ての大学のビルが、この長周期の揺れによってどのような影響を受けるか、実際の波形を使ってコンピューター上でシミュレーションを行いました。
その結果、長周期地震動によって建物全体が大きく揺れ、最上階の揺れ幅は最大で3メートル50センチ前後に達しました。建物を支えるはりや筋交いの多くが地震の揺れによって激しく損傷し、揺れが収まっても変形が残り、建物が傾いたままになるという結果となりました。
久田教授によりますと、今回の長周期の揺れの大きさは設計で想定する基準の3倍程度に達していて、最悪の場合、超高層の建物の倒壊につながるおそれもあるということです。
今回の長周期の揺れは地震の規模が大きかったうえ、震源が浅く、活断層のずれが地表にまであらわれたために発生し、断層が大きくずれ動いた西原村や益城町の一部地域に伝わったと考えられるということです。超高層ビルが多くある首都圏や名古屋圏、近畿などの大都市圏には、今回と同じ規模の大地震のおそれがある複数の活断層が存在しています。
久田教授は「超高層や免震構造の建物については、これまで直下型の地震によるこれほど大きな長周期地震動への対策は考えられてこなかったが、今後は大地震のおそれがある活断層の周辺では、ビルが倒壊しないような対策の検討が必要だ。また、室内についても安全を確保するための対策の必要がある」と話しています。

長周期地震動とは

長周期地震動は、大地震や巨大地震の際に発生する周期が2秒を超える大きくゆっくりとした揺れです。超高層の建物や石油タンクなどでは地震そのものの揺れと、建物などの揺れとが共振して、揺れが大きくなる特徴があります。
5年前の巨大地震では、東京や大阪でも長周期地震動によって超高層ビルの高層階が揺れ、震源からおよそ770キロ離れた大阪・住之江区では高さ250メートル余りの大阪府の咲洲庁舎で揺れが10分以上続き、最上階の揺れ幅は最大3メートル近くに達しました。
また、震源からおよそ400キロ離れた東京・新宿区の超高層ビルでも、揺れ幅は最大で2メートル近くに達しました。
国が想定している南海トラフの巨大地震では震源域が陸に近いうえ、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の周辺では、軟らかい地盤によって揺れが増幅されるため、東日本大震災のときよりも長周期の揺れが大きくなると想定されています。
今回の地震で観測された長周期地震動は、東北の巨大地震や南海トラフの巨大地震と異なり、継続時間は30秒程度と短いものの揺れ自体が非常に強く、専門家は断層の近くに超高層の建物がある場合には、深刻な被害が出るおそれがあると指摘しています。

都市直下地震での長周期地震動も検討を

首都圏や大阪周辺など都市の直下で起きる地震で、どれくらいの強さの長周期地震動が起きるか、観測された例が少ないことなどから国の検討はこれまで進んできませんでした。専門家は今回、観測されたデータを参考に具体的な検討をしていく必要があると指摘しています。

地震学が専門で、相模トラフなどの長周期地震動に関する国の検討会の委員を務める東京大学地震研究所の古村孝志教授は、先月16日に発生したマグニチュード7.3の大地震の際に震度7を観測した、西原村や益城町の観測点の地震波を分析しました。
それによりますと、今回の地震では木造住宅を壊すような周期が1秒から2秒の揺れが強く、阪神・淡路大震災を引き起こした地震の際に神戸市で観測されたのと同じかそれを上回る揺れでした。
一方、今回の地震波には超高層ビルなどを大きく揺らす、周期が3秒から4秒程度の強い長周期地震動も含まれていました。いずれも震度7を観測した21年前の神戸市と、12年前の新潟県中越地震の小千谷市で捉えられた長周期の揺れと比べて2倍前後強く、5年前の東北沖の巨大地震の際に宮城県栗原市で観測された揺れと比べても2倍から3倍程度でした。
国は南海トラフなど、プレート境界で起きる巨大地震については長周期地震動の影響の検討を進めていますが、内陸の活断層など、都市の真下で起きる直下地震については観測データが少ないことなどから検討が進んできませんでした。
古村教授は「今回の揺れに、これだけ強い長周期の成分が含まれていたことに正直驚いている。想定される首都直下地震や大阪の真下を通る上町断層、それに名古屋圏の濃尾平野などの直下で起きる大地震で、どれくらい長周期地震動が強まるのか、今回の事例を参考に検討する必要がある」と話しています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:19:01  | カテゴリ:科学のニュース
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