2016年07月19日 (火)

大西さんが宇宙から会見「特殊な環境に慣れた 実験頑張る」

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国際宇宙ステーションでの長期滞在を始めて11日目になる日本人宇宙飛行士の大西卓哉さんが宇宙から初めてとなる記者会見に臨み、「宇宙の環境はとても特殊ですが、この10日間でかなり慣れてきました。これからしっかりと宇宙実験を頑張っていきたい」と抱負を述べました。

旅客機のパイロットから日本人11人目の宇宙飛行士となった大西卓哉さんは、今月9日から国際宇宙ステーションで長期滞在に臨んでいます。
大西さんは、日本時間の19日午後9時から、宇宙から初めてとなる記者会見に臨み、東京の記者からの問いかけに答えました。大西さんは冒頭、「日本の皆さんこんばんは。大西卓哉です。7月7日の打ち上げ、多くの皆さんに応援いただき、力になりました。国際宇宙ステーションに到着して10日間がたちましたが、すっかり体も宇宙環境になれましたし、宇宙独特の仕事のやり方にも慣れてきました。宇宙での生活は特殊だと感じます。例えば、何かを探すときも360度探さないといけない。体も2か所固定する必要があります。この10日間で身につけられたので、これからしっかりと宇宙実験を頑張っていきたい」と話しました。
大西さんは、国際宇宙ステーションでの生活について、「ISS(国際宇宙ステーション)での生活の最初の印象は、正直言うといろいろなところが不便です。おいしいご飯も食べられないし、シャワーも浴びることができません。でも、逆に、ここにしかないものがあって、すばらしい景色が広がっています」と答えました。また、地球より宇宙のほうが快適だと思う点、不便だと思う点について聞かれ、「ふわふわ浮いているのが慣れてくると快適です。朝、寝癖の心配も全くありません。不便な点はトイレ一つとっても大ごとで、トイレに行くときは心構えをして行かなければいけないし、トイレが壊れると一大事です」と答えました。
宇宙での視力の変化や、体の予想外の変化について、大西さんは「目の見え方はこの10日間では変化はありません。目がとても充血しやすいというのは感じます。ほこりやごみが空中を漂うので、目が充血しやすいんです。体の変化はいろいろありました。食欲がなくなり、しばらく続きました。食べても胃の中でものが浮いているのですぐ満腹感があります。なかなかおなかがすきにくいのは意外でした」と答えました。
これから飼育実験に臨むマウスが、20日にアメリカの宇宙輸送船「ドラゴン」で到着することについて、大西さんは「小動物の実験に限らず、すべての実験に関して言えますが、宇宙実験は地上の研究者が膨大な時間をかけて準備をしてきたものなので、宇宙飛行士は、研究者の代わりに手となり、足となり、目となり、耳となり、鼻となり、実験をやって、気付いたことがあれば地上の研究者に知らせるのが仕事だと思います。研究成果が大きくなるよう貢献したい」と答えました。
宇宙から地球を見たときに地球が恋しくなったかと聞かれ、大西さんは「幸い地球が恋しくなったことはありません。ソユーズで地球を回る軌道に最初に入ったとき、窓から青い光景がずっと見えていました。あとから気づきましたが、それはすべて海でした。そして、体を起こして下を見ると、漆黒の宇宙空間が広がっていて、そのコントラストが美しかったです。私としては、地球の美しさよりも、国際宇宙ステーションの大きさやそれを地上400キロメートルの軌道上に建造した人間の科学力に感動しました」と答えました。
国際宇宙ステーションで、ロボットアームを実際に動かしてみたことについて、大西さんは「ロボットアームを国際宇宙ステーションで最初に見たときに驚いたのはその大きさです。地上の訓練ではコンピューターシミュレーションで見ていたので、巨大なロボットアームが自分の操作で手足のように動くことに感動しました。特にびっくりしたのがシミュレーターよりも安定していたことです。アームを動かすとき、緊張感をすごく感じたので、今後、日本の宇宙輸送船の『こうのとり』をつかむときには、緊張をどう克服するかが課題だと思います」と答えました。大西さんは、ロボットアームを初めて操作した際、人気アニメ「機動戦士ガンダム」で主人公のアムロ・レイが初めてガンダムに乗ったときに発したのと同じセリフ、「コイツ、動くぞ!」と叫んでしまったことを自身のSNSで紹介しています。このことについて、大西さんは「ガンダムに限らず、宇宙モノのアニメや漫画が好きで、いくつかセリフが頭に入っているので、狙ったわけではなく、素で出ました」と答えました。
記者会見の最後に、大西さんは「きょうは本当にありがとうございました。これから国際宇宙ステーションというすばらしい職場でバリバリ仕事して、地上にいい成果を持って帰れるように頑張ります」と決意を述べました。

大西さんは、ことし10月下旬までおよそ4か月間、国際宇宙ステーションに滞在し、老化現象の解明を目指す実験や、がんなどの治療薬の開発を目指す実験などに臨むことになっています。

大西さん SNSで宇宙日記

国際宇宙ステーションに長期滞在した日本人宇宙飛行士は、これまでもSNSで宇宙での生活の様子を発信してきましたが、いずれも字数制限のあるツイッターでした。大西さんは、日本人宇宙飛行士では初めて字数制限のないSNSを使い、宇宙での体調の変化や仕事や生活の様子をこれまでになく事細かに、実感そのままに伝えています。国際宇宙ステーションでの長期滞在を始めて4日目、今月12日の投稿では、宇宙に来て表れた体調の変化について伝えています。この中では、「・顔がパンパンになった・目が充血する・宇宙酔い・食欲がなくなる・背骨が痛い・尿意をもよおさない」とつづり、それぞれの詳しい症状を書き込んでいます。このうち宇宙酔いについては、「上下の感覚がなくなって顔をいろいろな方向に向けたりしていると、車酔いのような気持ち悪い症状がでます。数日は酔い止め薬が手放せませんでした」と記しています。長期滞在7日目、今月15日の投稿では、尿の処理装置の点検に臨んだことを紹介したうえで、「尿を飲料水に再生するという画期的な装置が作動しているので、そこから『きのうのコーヒーがあすのコーヒーになる』という誰が言い出したかわからない名言が生まれました」とつづっています。また、同じ日、国際宇宙ステーションにあるロボットアームを初めて操作したことについても詳しく書き込み、コントローラーを動かすとそれに応じてロボットアームが動き出した瞬間、英語で「コイツ、動くぞ!」と叫んでしまったと紹介しています。このことばは、大西さんが子どものときに放送されていた人気アニメ、「機動戦士ガンダム」で主人公のアムロ・レイが初めてガンダムに乗ったときに発したセリフで、ガンダムが大好きだという大西さんがとても興奮しているのが伝わってきます。

老化のメカニズムを解明目指す

大西さんは、国際宇宙ステーションに滞在中、老化現象の解明を目指して、マウスの飼育実験に臨みます。日本では初めてとなる哺乳類での宇宙実験です。
飼育するマウスは、アメリカの宇宙輸送船「ドラゴン」で国際宇宙ステーションに届けられます。マウスを乗せたドラゴンは、日本時間の18日午後1時45分にアメリカ・フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、日本時間の20日午後8時ごろ、国際宇宙ステーションに到着する予定です。
マウスを飼育する日本の実験装置は、去年8月、日本の宇宙輸送船「こうのとり」5号機で、国際宇宙ステーションに運ばれ、去年、長期滞在した宇宙飛行士の油井亀美也さんが日本の実験棟「きぼう」に設置しました。この装置は無重力状態で飼育したマウスと、地球と同じ重力を作り出した装置の中で飼育したマウスとを比べることで、成長にどのような変化があるかを調べます。重力がある状態と重力がない状態とで飼育した結果を比較できるのは、世界でも初めてです。実験装置は、1つの部屋が、高さ5センチ、幅10センチ、奥行き10センチほどの大きさで合わせて6つの部屋が、バウムクーヘンのような形に並べられています。実験装置は、合わせて2台あり、1台は回転させて地球上と同じような重力を作り出し、もう1台は回転させずに、無重力の状態のままにします。そのうえでマウスを6匹ずつ、重力がある状態と重力がない状態とで40日間飼育し、骨や筋肉、内臓などにどのような違いが現れるか調べます。
大西さんら宇宙飛行士の役割は、マウスの飲み水や餌の補給と、排せつ物などの部屋の掃除です。補給や部屋の掃除を行う際には、実験装置の回転を止めてしまうため、実験の質の高さを保つためには、宇宙飛行士が手際よく作業を行うことが重要だということです。また、水を与える装置が故障した場合には、宇宙飛行士がマウスに直接、水のゼリーを与えることも想定されているということです。
大西さんが臨むマウスの飼育実験の目的は大きく2つあります。1つは、火星などを目指す、将来の有人宇宙飛行につながるデータを得ることです。もう1つは、私たち哺乳類の老化現象のメカニズムを解明して“予防医学”につなげることです。
これまでに、国際宇宙ステーションで、宇宙飛行士らが行った実験から、人が宇宙で生活すると骨の密度や筋肉の量が減少することが分かっています。このため、無重力の状態は哺乳類にとって老化がより早く進む状態とよく似ていると考えられていて、JAXAと筑波大学などの研究グループは、今回の実験を通して老化現象のメカニズムを解明し、老化を遅らせる運動法や新薬の開発につなげたいとしています。
大西さんが行う宇宙実験を、地上側、日本の筑波宇宙センターから支えるJAXAのフライトディレクタ、中野優理香さんは、打ち上げ前、大西さんとともに筑波宇宙センターで実物と同じ実験装置を使い、実験の手順を何度も繰り返し確認したということです。中野さんによりますと、大西さんはマウスの到着を前に、ここ数日、国際宇宙ステーションでも餌が入った容器を飼育装置に取り付ける手順や、水を飼育装置に補充する手順について、繰り返し確認しているということです。

作業は前倒しで順調に進んでいる

国際宇宙ステーションでさまざまな科学実験に臨む大西さんを、地上側、日本の筑波宇宙センターから支えているのが、JAXAのフライトディレクタ、27歳の中野優理香さんです。
中野さんは、日本の実験棟「きぼう」でそれぞれの宇宙飛行士が行うさまざまな作業のスケジュールを、各国の宇宙機関と調整しながら作成するほか、実験の進め方や注意すべき点について宇宙飛行士と確認し合います。大西さんの長期滞在5日目となった今月13日から翌日にかけて、日本の実験棟「きぼう」では、無重力状態での液体の対流現象を調べる実験が行われました。その際、中野さんは、注意点として、宇宙ステーションのトイレのドアを開け閉めしたりすると、宇宙ステーション全体が揺れて正確なデータが得られないため気をつけてほしいと、大西さんに改めて伝えたということです。すると、大西さんは、仲間の宇宙飛行士にも呼びかけて、この日は全員で、本来の時間より早く就寝したということです。中野さんは「地上から送ったアドバイスを基に、宇宙での工夫につながり、実際に正確なデータも得られてとてもうれしかった」と話しています。
大西さんの長期滞在が始まって19日で11日目となりますが、今のところ、宇宙実験に関連した大西さんの作業はすべて順調に進んでいるということです。中野さんは「大西さんは、勉強家で、必ず予習をして臨んでくれるので、どの作業も今のところ前倒し、前倒しで進んでいます。日本にしかできない、日本の存在感を示せる実験がたくさんあるので、一つ一つ大西さんとコミュニケーションを取りながら着実に実施して、世界に誇れる成果を出していきたい」と意気込んでいます。

投稿者:かぶん |  投稿時間:21:20  | カテゴリ:科学のニュース
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