2016年07月26日 (火)

毛髪再生で初の臨床研究 発毛促す細胞を頭皮に注入

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若いうちから髪の毛の生え際が後退したり頭のてっぺんの毛が薄くなる「壮年性脱毛症」は、日本人の男性の3割が悩むともいわれますが、発毛を促す細胞を頭皮に注入することで無くなった髪の毛を再生しようという初の臨床研究を、東京医科大学などのグループが今月スタートさせました。脱毛に悩む人の根本的な治療法となるのか注目されます。

「壮年性脱毛症」は、男性ホルモンが発毛を抑えることなどが原因で20代の若いうちから生え際が後退したり頭のてっぺんの髪の毛が薄くなったりします。日本人の男性のおよそ3割で発症するといわれ、女性で悩む人も少なくありません。
東京医科大学病院と大手化粧品メーカー資生堂のグループは、こうした人の髪の毛の再生を目指す臨床研究を今月から始めました。
臨床研究では、まず頭の後ろの部分から10本程度の髪の毛が含まれる頭皮を切り取り、この中に含まれる「毛球部毛根鞘細胞」と呼ばれる細胞を取り出します。そしてこの細胞を3か月ほどかけて百万個にまで増やしたあと、髪の毛が無くなった頭皮の部分に注入します。この細胞は、脱毛の原因となる男性ホルモンの影響を受けにくい特徴をもっているほか、注入した細胞が発毛を促進し、細く短くなって頭皮の下に隠れてしまった髪の毛を再び太く長い髪の毛にすることが期待されるということです。
グループでは、男女合わせておよそ60人にこの治療を行う予定で、発毛を促す細胞を頭皮に注入して髪の毛を再生する臨床研究が行われるのは国内では初めてです。
研究に参加した50代の女性は「頭のてっぺんの毛が薄くなり、細くなったのが気になっていました。自分の細胞を使うため拒絶反応の心配も少ないということなので期待しています」と話していました。
研究を行う東京医科大学の坪井良治・主任教授は「育毛剤などは使用し続けないと効果が続かないが、この方法は一度の治療で数年以上、効果が持続する可能性があるのが大きなメリットだ。今後5、6年の間に実用化を目指したい」と話しています。

「壮年性脱毛症」は男性の3割が発症

今回の臨床研究の対象となるのは「壮年性脱毛症」です。この脱毛症は「男性型脱毛症」とも呼ばれ、思春期以降に始まって髪の毛の生え際や頭のてっぺんの毛が次第に細く、短くなって頭皮から出てこなくなり薄毛となるのが特徴です。原因の1つは、男性の場合、男性ホルモンの一種の「テストステロン」です。「テストステロン」が髪の毛の根っこにある毛根に入り込むと髪の毛になる「毛母(もうぼ)細胞」が増えるのを抑えてしまうのです。「壮年性脱毛症」は、日本人の男性のおよそ3割が発症し、全国でおよそ2400万人の患者がいるとする推計があるほか女性でも、割合は少ないものの悩んでいる人が少なくありません。

根本的な治療になる可能性

「壮年性脱毛症」に対しては、これまで男性ホルモンの活性化を防ぐ薬の服用や頭皮への薬の塗布、それに植毛などが行われてきました。
日本皮膚科学会が診療ガイドラインで強く推奨しているのは、脱毛の原因となる男性ホルモンの働きを抑える「フィナステリド」などの薬の服用や、「ミノキシジル」の頭皮への塗布です。しかし専門家によりますと、いずれも薬の使用を続けないと効果が得られなくなり、根本的な症状の改善にはつながらないということです。
一方、今回の細胞の注入は、脱毛の原因となる男性ホルモンの影響を受けにくくしたうえで、発毛を促すもので脱毛症が起きる前の状態にまで症状を改善させるなどの根本的な治療になる可能性が期待されるということです。
毛髪の再生に詳しい大阪大学大学院の板見智皮膚・毛髪再生医学寄附講座教授は「壮年性脱毛症は髪の毛が全く無くなる病気ではなく、毛が細く、十分に伸びなくなり皮膚の表面にまで出てこなくなるものだ。細胞を使った新たな治療で十分に伸びる髪の毛になれば発症する前の状態に回復させられる可能性があり、現状の薬物療法あるいは植毛などの手術療法で十分に満足度が上がっていない人にとって朗報となることが期待される」と話しています。

髪の毛作る器官そのものを移植する臨床研究も

一方、理化学研究所や京セラなどのグループは、髪の毛を作り出す「毛包」と呼ばれる器官そのものを再生医療の技術を使って大量に作りだし、頭皮に移植することで脱毛症の治療につなげようという臨床研究を始めると発表しました。早ければ2020年の実用化を目指すとしています。
研究を行うのは理化学研究所や京セラなどのグループです。グループでは脱毛症の患者の頭皮から「上皮性幹細胞」と「間葉性幹細胞」という2種類の細胞を取り出します。そしてゲル状のコラーゲンの中に入れて培養すると2種類の細胞が混ざり合って、髪の毛を作り出す「毛包」という器官が大量に作られるということで、これを再び脱毛症の患者に移植し髪の毛を作り出すということです。
マウスを使った実験では、再生した「毛包」を背中に移植すると3週間ほどで発毛が確認できたということで、グループでは臨床研究を行い、早ければ2020年の実用化を目指したいとしています。
理化学研究所の辻孝チームリーダーは「実現すれば体の器官を作り出す世界で初めての再生医療技術になる。この技術をほかの臓器の再生に向けた第一歩にしたい」と話しています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:16:52  | カテゴリ:科学のニュース
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