2016年09月16日 (金)

虐待死の乳児 70%は母親が妊娠望まず

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去年3月までの1年間に、虐待を受けて死亡した子どものうち、1歳未満の乳児では、70%の母親が妊娠を望んでいなかったことが厚生労働省の分析でわかりました。

厚生労働省によりますと、去年3月までの1年間に、虐待を受けて死亡した18歳未満の子どもは、無理心中を除いて全国で44人でした。このうち、1歳未満の乳児は、前の年より11人多い27人で、全体に占める割合は初めて60%を超え、調査を始めた平成15年以降で最も高くなっています。

さらに、厚生労働省が詳しく分析したところ、虐待によって死亡した27人の乳児のうち、70%に当たる19人では、母親が妊娠を望んでいなかったことがわかりました。こうした母親の多くは自宅など病院以外で出産し、そのまま放置していたということで、なかには、育児に関する不安や精神障害を抱えていたり、夫などから暴力を受けたりしていたケースもあったということです。

厚生労働省は「望まない妊娠をした女性を支援するため、助産師や保健師などが、妊娠から子育てまでの相談を一括して受け付ける窓口を全国の保健所などに整備したい」としています。

全国で相次ぐ乳児の虐待死

1歳未満の乳児が虐待によって死亡する事件は全国で相次いでいます。

おととし広島県で、住宅の押し入れから生後間もない赤ちゃんの遺体が発見され、母親が死体遺棄の罪などに問われました。母親は自治体に妊娠の届出をせず、母子健康手帳の交付も受けないまま家族に隠れて自宅で出産していました。
同じ年に大阪では、生後4か月の赤ちゃんが母親から体を揺さぶられるなどの暴行を受けて死亡しました。
去年、鳥取県では、生後4か月の赤ちゃんが父親から腹などを繰り返し殴られて死亡しました。

未成年の母親が出産し、事件に至ってしまうケースも後を絶ちません。ことし静岡県で、高校生の男女2人が自宅で出産したばかりの赤ちゃんを殺害して遺棄する事件が起きました。家庭裁判所は、「未成年者が適切な対処方法に思いが至らず起こした犯行で凶悪性は低い」と指摘して2人を少年院に送る決定をしました。

「孤立しない環境作りを」

虐待を受けて死亡した子どものうち1歳未満の乳児の割合が60%を超えたことについて、妊娠や育児の問題に詳しい大阪府立母子保健総合医療センターの佐藤拓代さんは、「母親にとって1歳未満の乳児は、育児に大変な時期で、子どもが泣きやまないとか、思ったような子どもではないと感じた時にどうしたらいいのかわからなくなり、虐待してしまう」と指摘しました。
さらに、「経済的に余裕がない家庭が増えているほか、多くの母親は人に頼るのではなく人から指摘されないように悩みを抱え込む傾向にあることも虐待死の背景にある」と話しています。

今後の対策については、「重大事件を起こしてしまうのは妊婦健診を受けていない人が多く、本人が妊娠を届け出なければ始まらない今の母子保健では限界がある。母親が孤立しないように周囲の人や地域があたたかく受け止められるような環境作りを考えていく必要がある」と話しています。

妊娠SOS相談 課題も

医療機関を受診せずに妊娠に悩んでいる女性を支援している団体があります。民間団体の「にんしんSOS東京」では、東京助産師や社会福祉士など18人が集まり、去年12月から電話やメールで相談を受け付けています。
相談の半数以上は中学生から29歳までで、担当者は寄せられる声を逃さないよう、携帯電話を持ち歩いて外出先や自宅でも対応できるようにしています。

これまでの相談を見ると、10代の女性からは「妊娠したが自分の親から虐待されるので実家を頼れない」とか「子どもを産んでも経済的に苦しくて育てられない」という声が寄せられていました。また、20代の未婚の女性からは「病院を受診せずに1人で出産した。どうやって行政などに頼っていいのかわからない」という相談も寄せられています。

こうした声を受けてこの団体では病院や行政の窓口に担当者が一緒に出向いて必要な手続きなどを行う支援に力を入れています。母親が経済的に自立し、生活を安定させることで虐待を防ぐのが目的ですが、支援を始めたあとに途中で連絡が途絶えてしまうケースもあるということです。

こうした支援団体は全国各地に広がり、去年11月には、それぞれの担当者が情報を共有してより効果的な支援策を検討しようと全国組織が設立されました。
にんしんSOS東京の代表、中島かおりさんは、「専門の職員が同行して支援することで、行政の窓口と確実につなげるだけでなく、本人にかわって複雑な背景事情を説明することもできる。相談を寄せてくれた人とどうやって、つながりを保ち、支援を継続していけるかが課題だ」と話しています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:18:01  | カテゴリ:科学のニュース
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