2016年10月20日 (木)

肺炎 "積極的治療行わない選択も" 学会がガイドライン案

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がんなどの終末期や老衰のため肺炎にかかり死亡する高齢者は、国内で年間10万人以上に上ると見られていますが、日本呼吸器学会はこれらの肺炎について患者本人が希望する場合には積極的な治療を行わない選択肢を初めて認めるガイドライン案をまとめました。これらの肺炎は再発を繰り返すなど苦痛が続き、生活の質が損なわれることが多いためですが専門家は、「人生の最終段階で多くの人がかかる病気だけに医療現場や介護の現場など広い範囲に影響が出ると予想される。本人の意思を尊重するのが大原則で患者や家族の側もどのように死を迎えたいのか日頃から話し合っておくことが大切だ」と話しています。

肺炎は、がんや心臓病、それに老衰などのため体力が低下した高齢者が細菌感染などをおこしてなる場合が多く、毎年、10万人以上が死亡する日本人の死因の第三位を占める病気です。

終末期や老衰の場合、治療しても再発を繰り返し呼吸が苦しい状態が続いたりするほか人工呼吸器を装着して家族と会話もできないまま亡くなってしまうケースも少なくありません。

また学会などによりますと医療現場では高齢者が肺炎で救急搬送され入院するケースが増えていて、長期の入院によってほかの救急患者の受け入れが難しくなったり、人工呼吸器などの医療機器がひっ迫したりする事態がおきている医療機関もあるということです。

こうした点を踏まえ、全国1万2000人の専門の医師らが加盟する日本呼吸器学会は、これらの肺炎の治療をどうすべきか議論してきました。

その結果、ことしの診療ガイドラインの改訂でがんなどの終末期や老衰のため肺炎を起こした場合には、人工呼吸器の装着や抗生物質の投与などの積極的な治療は行わず、痛みを取り除く緩和ケアを優先する選択肢を初めて認める案をまとめました。

具体的には、患者が、がんなどの終末期や老衰の状態にあるか、医学的に判断したうえで、適切な情報提供と説明を行って本人の意思を最大限に尊重するとしています。

そして治療を差し控える場合には、医師が1人で決めるのではなく多くの専門職からなる医療チームが、患者や家族と話し合って決め、合意した内容を文書に残すなど人生の最後の段階での医療の在り方を定めた厚生労働省の指針に従うなどとしています。

ガイドラインを改訂する委員会の委員長を務める河野茂長崎大学副学長は、「終末期の肺炎の場合、繰り返し苦しんだ末に亡くなってしまうことが多く、どこまで治療すべきか、患者や家族、医療者それぞれに葛藤がある。患者にとってどのような選択肢が望ましいのかを一緒に考えてもらうきっかけになってほしい」と話しています。

また生命倫理が専門の東京財団の※ぬで島次郎研究員は、「肺炎は人生の最終段階で多くの人がかかる病気だけに今回の改訂は、医療現場だけでなく介護の現場など広い範囲に影響が出ると予想される。本人の意思を尊重するのが大原則であり、治療をしない選択肢と同様に最後まで積極的な治療を受けたいという希望も尊重されるような支援をどのようにしていくのか考えていく必要がある。患者や家族の側もどのように死を迎えたいのか日頃から家族の間で話し合うことが大切だ」と話しています。

学会では、このあと、一般からも意見を募るパブリックコメントを行ったうえで年明けにも全国の学会の医師にガイドラインを配布することにしています。

※「ぬで」は木へんに勝

選択を迫られる患者と家族

がんや脳卒中などの病気や老衰によって体力の衰えた高齢者が繰り返し肺炎にかかるような場合どこまで治療をすべきか、患者やその家族は難しい選択を迫られます。

東京・江東区の78歳の女性は肺気腫の持病があり、10年ほど前から肺炎のため入退院を繰り返してきました。

一時は、激しいせきや高熱、それに意識障害や呼吸困難に陥り家族は、医師から、命の危険があるので覚悟してほしいと告げられたといいます。

2か月近く治療を受けた結果退院はできたものの、その後も肺炎の再発を繰り返して体力が衰え、トイレなど生活のほぼすべてが夫の手助けなしにはできない状態になっています。

当初は少しでも長生きしたいと積極的な治療を望んでいたといいますが体力が衰えていく中で肺炎のつらい症状にいつまで耐えられるのか、自信がなくなりつつあるといいます。

女性は「肺炎になると全力で走ったときのようにうまく息が吸えない状態が何日も続くので死ぬほど苦しいです。家族のことを考えると生きなければという思いもありますが、最近は苦しまずに亡くなるならそれがいちばんいいのかもしれないとも思い始めています」と話していました。

10年近く妻を介護してきた夫は、今後、さらに症状が悪化し、意思疎通が難しい状態になったとき、肺炎の治療を望むのか、それとも苦痛を取り除く緩和ケアだけにするのか、妻と話し合っているものの決めきれないでいるといいます。

夫は、「妻は強がりなので苦しいとはなかなか言わないのですが、苦しむだけで単なる延命になるなら緩和ケアだけにしたほうがいいのではないかということは妻と話し合ってはいます。ただ、これまでは治療して治っていますし、家族としては元気で長生きして欲しいという思いも当然あるので、また肺炎になったときにどこまでの治療を望むのかはそのときになってみないと正直わかりません」と話していました。

高齢患者が増加 医療の現場では

学会では、今回のガイドライン案がまとめられた背景には、医療機関での高齢の肺炎患者の受け入れが難しくなりつつある実態もあるとしています。

およそ150万人が住む川崎市の救急医療の拠点の1つとなっている関東労災病院では、救急患者のおよそ半数を65歳以上の高齢者が占めています。

地域住民の高齢化に伴って高齢者の肺炎患者は増える一方で、呼吸器内科のベッドだけでは足りなくなり、3年前からは230床ある内科全体で肺炎の患者を受け入れています。

しかし、それでも患者が多い冬の時期はすべてのベッドが埋まってしまい、ほかの救急患者を受け入れられない日がたびたびあるといいます。

去年1年間にベッドの満床が理由で受け入れられなかった救急患者は78人で、人数は年々増える傾向にあるといいます。

さらに、重症患者を受け入れる集中治療室のベッドや人工呼吸器がすべて埋まってしまう日もあるといいます。

人工呼吸器が足りないときは業者からのレンタルでしのいでいますが、集中治療室のベッドが不足することで重症患者の受け入れに支障が出ているのです。

小西竜太部長は、「周辺は古い住宅街で老人ホームも多く、高齢者の肺炎は年々増えていて1つの病院の努力では対応できなくなってきています。病院の医療資源が限られる中でどういった人に優先的に使うべきなのか、判断に悩むケースは多いです」と話しています

投稿者:かぶん |  投稿時間:19:50  | カテゴリ:科学のニュース
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