2017年01月18日 (水)

玄海原発3・4号機 "新規制基準の審査に合格"

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佐賀県にある玄海原子力発電所の3号機と4号機について、原子力規制委員会は、九州電力の安全対策が再稼働の前提となる新しい規制基準の審査に合格したことを示す審査書を正式に決定しました。今後、設備の詳しい設計の審査や地元の同意などが必要で、九州電力が目指す再稼働は早くてことしの夏以降になると見られます。

玄海原発3号機と4号機について、原子力規制委員会は去年11月、九州電力の申請以降、3年余りの審査を踏まえて、安全対策が審査に事実上合格したことを示す審査書の案を取りまとめ、一般からの意見を募集していました。

18日の規制委員会では、原子力規制庁の担当者から「『繰り返し強い揺れが起きた熊本地震の教訓が反映されていない』といった意見があったが、基準では、施設の機能が保たれることを要求しているほか、事業者が地震の影響を点検し、必要な措置が講じられることを確認している」などの説明を受けたうえで結論は変えず、表現を一部修正した審査書を正式に決定しました。

審査書が決定したのは、現在、運転中の鹿児島県にある川内原発などに続き5か所目で、九州電力の原発としては2か所目となります。

今後、設備の耐震性など詳しい設計の審査や検査、それに地元の同意が必要で、九州電力が目指す玄海原発の再稼働は、早くてことしの夏以降になると見られます。

また、玄海原発をめぐっては、事故が起きた際のお年寄りや障害者の迅速な避難や、本土と橋で結ばれていない合わせて17の離島からの避難などの課題があり、佐賀県などが策定した避難計画の実効性を高めていくことが求められます。

九州電力に文書交付

九州電力には、18日午後、原子力規制庁の担当者から、玄海原発3号機と4号機が新しい規制基準の審査に合格したことを示す文書が交付されました。文書を受け取った九州電力発電本部の中村明副本部長は「第一歩が始まったところであり、このあとの審査や検査に一歩一歩、真摯(しんし)に対応していくことが大事だ。安全性や信頼性のさらなる向上をはかり、原子力安全に取り組みたい」と述べました。

佐賀県 山口知事は

佐賀県の山口知事は、世耕経済産業大臣に対して、県民の安全を確保すること、深刻な事故が起きた際の対応やエネルギー政策について国の責任でしっかりと説明すること、それに地元の意見に真摯(しんし)に向き合うことの3点を求めたことを明らかにしました。

そのうえで今後の議論の進め方や最終的な判断の時期について、「第三者による委員会や専門部会でさまざまな意見やアドバイスを頂きながら真摯に向き合っていきたい。県議会での議論もあるので、そうしたなかでおのずとスケジュールは決まってくると思う」と述べました。

地元としての最終的な判断の時期が焦点

玄海原子力発電所3号機と4号機の再稼働について、山口知事は、国が原発の安全確保などに責任を持つことを前提に容認する考えを示しています。今後は、賛否が分かれる意見の集約に向けた手続きの進め方や、地元としての最終的な判断の時期が焦点となります。

玄海原発3号機と4号機の再稼働をめぐって、立地する佐賀県玄海町の岸本英雄町長は、早期の再稼働を求めていて、来月にも議会に諮ったうえで、同意を表明する方針です。一方、佐賀県の山口知事も、再稼働を容認する考えを示していますが、その前提として、原発の安全性や国のエネルギー政策などについて県民に説明する機会を作り、広く意見を聞くことを求めていて今後、具体的な進め方などを国と協議していくとしています。

再稼働をめぐっては、市のほとんどが原発から30キロ圏内となる佐賀県の伊万里市など一部の自治体から反対する声が上がっていますが、いずれも山口知事の判断には従うとしています。

佐賀県は、独自に設置した第三者による委員会に加え、県民から、メールや投書で意見を募ることも検討していて、今後は、賛否が分かれる意見の集約に向けた手続きの進め方や、山口知事が最終的な判断を示す時期が焦点となります。

玄海町長「ほっとした気持ち」

地元・玄海町の岸本英雄町長は「原子力規制委員会にしっかりと技術面の安全性の確認をしていただいた。やっと決めていただいて、ほっとした気持ちだ」と述べました。また、岸本町長は、原発の安全対策などについて、国や九州電力に詳しい説明を求めていくとしたうえで、「2月いっぱいにはある程度の作業を進めたいと思っている」と述べ、来月にも町として再稼働に同意することを表明するよう、議会などとの調整を進める考えを示しました。

伊万里市長「事故がない保証ない」

ほぼすべての地域が玄海原発の30キロ圏に含まれ、再稼働に反対している佐賀県伊万里市の塚部芳和市長は「事故が発生しないという保証はない。今後、地元同意の手続きに移るが、原発の影響範囲を考えれば周辺自治体を蚊帳の外におかないよう配慮してほしい」というコメントを発表しました。

再稼働の課題は避難の在り方

玄海原発の再稼働をめぐって課題になっているのが、事故が起きたときの避難の在り方です。

地元の佐賀県では、重大事故に備えた避難計画に、原発から30キロ圏の唐津市の住民の一部が求めていた福岡県を経由して避難する「広域避難」を盛り込むなど、一定の改善は見られています。

一方、原発から5キロ圏内をはじめお年寄りや障害者の迅速な避難や、天候に左右されやすい船による避難が必要な佐賀県と長崎県の離島の住民の対策など課題も多く、今後、計画の実効性を高めることや一時的な退避施設の整備が求められます。

また、およそ155万人が暮らす福岡市は玄海原発からもっとも近いところで37キロの場所にあり、多くの人が屋内退避の指示に従わず、車で避難し始めた場合、道路の大渋滞などで混乱することが懸念されています。

次に玄海原発では、再稼働すれば、使用済み核燃料を保管する施設内の燃料プールが5年程度でいっぱいになると見込まれています。この問題をめぐって、九州電力は核燃料の配置を変えて、プールの保管量を増やす「リラッキング」という工事の審査を申請する考えを明らかにしています。

一方、原子力規制委員会の田中俊一委員長がより安全性が高いとしている、使用済み核燃料をプールの水ではなく金属製の容器に入れて空気で冷やす「乾式貯蔵」と呼ばれる方式については検討を進めるとしています。しかし、手続きや工事にも、一定の時間がかかるため、具体的な対策の道筋を早期に示すことが求められます。

九州電力「リラッキングを安全に進める」

玄海原発をめぐっては、使用済み核燃料を保管する施設内のプールが再稼働後5年程度でいっぱいになると見込まれ、九州電力は核燃料の配置を変えて、プールの保管量を増やす「リラッキング」という工事を原発事故の前に国に申請しましたが、その後、新しい規制基準ができたため申請を出し直し、審査を受ける必要があります。

これについて、原子力規制委員会の田中俊一委員長は18日の記者会見で、使用済み核燃料を金属製の容器に入れて空気で冷やす「乾式貯蔵」と呼ばれる方法がより安全性が高いとして、「リラッキングは、少し苦し紛れの方策であり、より安全性を求めていくという事業者の取り組みが必要だ」と述べました。

一方、九州電力発電本部の中村明副本部長は「基本的にはリラッキングを安全に進めるという方策を考えている」と述べ、今後、工事を行うための審査を申請する考えを示しました。田中委員長が乾式貯蔵について指摘したことについては、「総合的に勘案して検討したい」と述べるにとどまりました。

全国の原発の運転・審査状況

福島第一原発の事故を踏まえて作られた新しい規制基準の審査には、玄海原発3号機と4号機を含め、これまでに5原発10基が合格し、このうち、鹿児島県にある川内原発1号機と愛媛県にある伊方原発3号機の2基が運転中です。廃炉が決まった原発を除くと、全国には16原発42基があり、建設中の青森県の大間原発を含めこれまでに26基で再稼働の前提となる審査が申請されました。

審査は、「PWR」=加圧水型と呼ばれるタイプの原発が先行しています。原子力規制委員会は、申請のあった8原発16基のうち、5原発10基について、これまでに審査の合格にあたる新しい規制基準に適合していると認めています。内訳は18日に審査書が決定した玄海原発3号機と4号機のほかに、川内原発1号機と2号機、伊方原発3号機、福井県にある高浜原発3号機と4号機、それに原則40年に制限された運転期間の延長が認められた高浜原発1号機と2号機、福井県の美浜原発3号機です。

このうち、おととし再稼働した川内原発1号機は、一時、定期検査に入りましたが、先月再び起動し、2号機は定期検査のため、先月運転を停止し、来月起動する計画です。

伊方原発3号機は去年8月に再稼働し、運転中です。

高浜原発3号機と4号機は、去年1月以降、順次、再稼働しましたが、4号機は再稼働の3日後にトラブルで原子炉が自動停止し、さらに裁判所の運転停止を命じる仮処分の決定を受け、2基とも決定が覆らない限り、運転できない状態です。また、運転延長が認められた高浜原発1号機と2号機、美浜原発3号機は、安全対策の追加工事などを終える必要があり、関西電力は、実際の再稼働にはそれぞれ3年前後かかるとしています。

このほかのPWRでは、福井県にある大飯原発3号機と4号機が事実上の審査合格を意味する審査書の案の取りまとめ作業に入っていて、今年度中にもまとまる見通しです。

北海道にある泊原発3号機は、川内原発などと同じ4年前に審査の申請をしましたが、合格の具体的な時期は見通せない状況です。

福井県にある敦賀原発2号機は、焦点となっている真下を走る断層の活動性から議論を始めていて審査は序盤です。

一方、事故を起こした福島第一原発と同じ「BWR」=沸騰水型と呼ばれるタイプの原発は、これまでに8原発10基で審査が申請されています。新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発の審査が終盤に入り、このタイプの原発のなかで最も進んでいますが、緊急時の対応拠点の設置場所の方針変更に伴い、審査に遅れが出ていて、合格の時期は来年度以降になる見通しです。

投稿者:かぶん |  投稿時間:19:00  | カテゴリ:科学のニュース
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