2017年02月04日 (土)

軍事的な研究と大学の関わり 公開討論会

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防衛省が大学などの研究機関に研究資金を提供する制度を始めたことをきっかけに、安全保障技術など軍事的な研究と大学などとの関わり方について議論している「日本学術会議」が4日、公開討論会を開きました。参加した科学者からは、日本の科学者としてのあるべき姿勢や、安全保障技術の研究に関わることの是非について、さまざまな意見が出されました。

日本学術会議は、“科学者の国会”とも呼ばれる日本の科学者の代表機関で、防衛省が、おととし、将来的な防衛装備品の開発につなげようと、大学などの研究機関に研究資金を提供する制度を始めたことをきっかけに、安全保障技術など軍事的な研究と大学などとの関わり方について検討委員会を立ち上げ、議論を続けています。

この議論で国内の科学者などの意見を広く聞こうと、4日、東京・六本木にある日本学術会議の講堂で公開討論会が開かれ、会場が満席となるおよそ300人が参加しました。

はじめに、検討委員会の委員長が中間取りまとめを報告し、先の大戦で科学者が戦争に動員され協力したことへの反省について触れたうえで、学術研究は、自主性・自律性を担保する必要があることや、防衛省の制度は、政府による研究への介入の度合いが大きいことなどを指摘しました。

続いて、参加者全員で自由討論が行われ、この中では、「軍事目的の研究を行わないとしてきたこれまでの立場を修正したり撤回したりすれば、世界の科学者から日本に対して不信感を抱かれることになる」などとして、軍事的な研究は行わないという姿勢を改めて明確に示すべきだという意見が相次ぎました。

一方で、「学術会議の最終目的は、社会の負託に応えることで、自衛を含めた防衛に関する研究を一切、行わない場合、いったいその研究を誰がやるのか」などとして、安全保障を目的とした研究に関わることは認められるべきだという意見も出されていました。

日本学術会議の検討委員会は、4日の公開討論会で出された意見を踏まえて、来月までに最終報告をまとめることにしています。日本学術会議では検討委員会の最終報告をもとに、ことし4月に開く総会で何らかの見解を示すことを目指しています。

日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」で委員長を務めている、法政大学の杉田敦教授は、公開討論会のあとの取材に対し「参加者からは、『軍事研究を行わない』とする日本学術会議のこれまでの声明を堅持すべきだという意見が多かった」という認識を示しました。
そのうえで、「今回の学術と軍事をめぐる議論は、先の大戦の反省の上に立つ日本学術会議という組織の存在理由にも関わる問題だ。きょうの討論会での意見を踏まえ、国の政策にそのまま対応するのではなく、政府から独立した立場として、日本の学術の在り方を長期的な視点で考えていきたい」と述べました。

日本の科学者が戦後掲げてきた声明

今回の議論の背景には、日本の科学者たちが戦後、掲げてきた、「軍事目的の科学研究は行わない」とする声明があります。

日本学術会議は、先の大戦で、科学者が戦争に動員され新たな兵器の開発などに協力した反省から、終戦から5年後の昭和25年に、「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない」とする声明を出しました。また、昭和42年には、この前の年に日本物理学会が開いた国際会議にアメリカ軍が資金提供を行っていたことが問題となり、改めて、「軍事目的のための科学研究を行わない」とする声明を出しています。

日本の科学界は、戦後、こうした声明を掲げて、民生的な分野を中心に発展してきましたが、防衛省がおととし、大学などに研究資金を提供する制度を新たに設けたことで、科学者と、安全保障技術など軍事的な研究との関わり方が改めて問われることになり、日本学術会議は、去年5月に「安全保障と学術に関する検討委員会」を設けて議論を続けています。

防衛省による研究費の提供制度

今回の議論のきっかけとなった、防衛省による大学などへの研究資金の提供制度は、おととし導入され、これまでに19の研究が採択されています。

政府は、4年前の平成25年に閣議決定した「防衛計画の大綱」で、防衛力を支える基盤を強化するため、「大学や研究機関との連携の充実などにより、防衛にも応用可能な民生技術の積極的な活用に努める」として、大学などとの連携を強めていく方針を掲げています。

こうした中、防衛省では、民間の先進的な技術を将来の防衛装備品の開発に積極的に取り入れるため、おととし、大学などの研究機関に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を新たに設けました。

制度が導入された昨年度は、大学や研究機関などから109件の応募があり、9件の研究が採択されました。このうち大学からは58件の応募があり、4件が採択されています。

また今年度は、大学や研究機関などから44件の応募があり、10件が採択されました。このうち大学からは、23件の応募があり、5件が採択されています。この制度の昨年度の予算はおよそ3億円で、2年目の今年度はおよそ6億円でしたが、3年目となる新年度、平成29年度の政府の予算案では、およそ110億円と大幅に増額する方針が示されています。

研究1件当たりの提供額も、昨年度と今年度は、最大で、年間およそ4000万円でしたが、新年度の予算案では、最大、5年間で数十億円規模とすることが計画されています。

日本学術会議 検討委員会の中間取りまとめ公表

日本学術会議が去年5月に設けた、安全保障技術など軍事的な研究と大学などとの関わり方について議論している「安全保障と学術に関する検討委員会」は、先月、議論の中間取りまとめを公表しました。

この中では、先の大戦で科学者が戦争に動員され協力したことへの反省について触れた上で、「学術研究が、政府によって制約されたり動員されたりしがちであるという歴史的な経験をふまえ、学術研究の自主性・自律性を担保する必要がある」としています。

そのうえで、防衛省による大学などへの研究資金の提供制度については、「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、防衛装備庁の職員が研究中のしんちょく管理を行うなど、政府による研究への介入の度合いが大きい」と指摘しています。

また、「科学者の研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、場合によっては攻撃的な目的のためにも使用されうる」と指摘したうえで、「大学などの研究機関は、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究については、その適切性について、技術的・倫理的に審査する制度を設けることが望まれる」としています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:20:31  | カテゴリ:科学のニュース
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