2017年02月17日 (金)

東大などで作るチーム 深海探査の国際レース参加へ

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深さ数千メートルの深海に眠る海底資源の本格的な開発に向けて、海底の状況を短時間に詳しく調べることができる技術の開発が世界的に求められる中、アメリカの財団などがことし9月、深海探査の国際レースを開くことになり、日本からは東京大学などで作るチーム「KUROSHIO」が参加することになりました。

世界でも初めてとなる深海探査の国際レースを開くのは、ヨーロッパの石油会社大手「ロイヤル・ダッチ・シェル」とアメリカの民間の財団「XPRIZE」で、ことし9月、水深2000メートルの海底で、16時間以内に100平方キロメートル以上の海底地形図を作成できるか、海底の重要なポイントについて写真を5枚撮影できるかを競います。レースが世界のどの海域で行われるかはまだ明らかにされていません。

レースを主催する財団は16日、書類審査を通過した世界の21のチームを発表し、日本からは東京大学や海洋研究開発機構、三井造船などで作るチーム「KUROSHIO」が参加することになりました。

チーム「KUROSHIO」の深海探査ロボットは2機あり、いずれも直径60センチ、全長3メートル、重さ300キロ余りの先がとがった筒型で、姿勢を安定させるための水中翼も取り付けられています。音波探知機やセンサーを使って周囲にある障害物や水の流れの状況を把握したうえで、ロボットみずからどこに進めばよいか自律的に判断しながら地形の探査を行うのが特徴です。

ことし9月の国際レースで上位10位以内に入ると、来年9月には、より探査が難しい水深4000メートルの海底で決勝レースが行われ、24時間以内に250平方キロメートルより広い範囲の海底地形図を作成できるか、海底の重要なポイントについて写真を10枚撮影できるかを競い、優勝チームには賞金400万ドルが贈られることになっています。

深海探査をめぐっては、深さ数千メートルの海底に希少な金属などの資源が眠っていることが、ここ数年、日本の近海でも相次いで確認されていますが、これまでの深海探査機では調査できる範囲が狭いことが、商業化に向けた課題になっています。
このため、今回の国際レースは、深海に眠る海底資源の本格的な利用に向けて、今、世界的に求められている海底の状況を短時間に詳しく調べることができる新たな技術の開発を促す狙いで企画されました。

チーム「KUROSHIO」は17日、東京・目黒区の東京大学のキャンパスで記者会見を開き、共同代表を務める海洋研究開発機構の中谷武志さんは「日本はすでに30年近く深海探査ロボットの技術開発を進めてきていて、海底地形図の精細さでは各国の技術より一歩も二歩も先を行っていると思う。このレースに参加することで、さらに探査技術を大きく高め、海底資源の利用に向けて大きく貢献したい」と意気込みを話しました。

海底の鉱物資源発見で技術開発重要に

日本の排他的経済水域の海底では近年、貴重な鉱物資源の発見が相次いでいます。

このうち、銅や鉛、金、銀などが沈殿してできた「熱水鉱床」と呼ばれる場所が、沖縄周辺の海域や伊豆諸島から小笠原諸島付近にかけての海域の水深700メートルから2000メートルほどの場所で相次いで見つかっています。
3年前の平成26年に石油天然ガス・金属鉱物資源機構が沖縄本島の北西沖の海底で大規模な熱水鉱床を見つけたと発表したほか、その後もこの周辺で同じような鉱床が相次いで見つかっています。

また、希少な金属=レアメタルを豊富に含んだ「マンガンノジュール」と呼ばれる場所も南鳥島の近くで見つかっています。
海洋研究開発機構や東京大学などのグループが、南鳥島近くの日本の排他的経済水域内の水深およそ5500メートル付近で大規模な「マンガンノジュール」を発見したと、去年発表しています。

ただ、海底資源の本格的な商業掘削を始めるためには、掘削から運搬、加工までを低コストで可能にする技術の開発が必要です。
特に質のよい資源が集中的に存在し、掘削もしやすい場所を効率的に見つけるために、短時間で広範囲の海底探査ができる新たな技術の開発が重要になっています。

探査遅れている「海底」

光が届かない深海は、陸上のように人工衛星や航空機を使って探査することが難しく、海底の詳しい地形や状態を調べるためには、潜水艇や潜水ロボットなどを実際に潜らせて行う以外に方法がありません。
このため、研究者の間では、地球の海底は月や火星の地表面よりも探査が遅れていると言われています。

日本では、平成元年に水深6500メートルまで人が乗って潜ることができる潜水艇の「しんかい6500」が完成し、深い海底での火山活動などを発見したほか、平成7年には海上の調査船と通信ケーブルを結んで遠隔操作する無人探査機の「かいこう」が水深1万911メートルまで潜ることに成功しています。
しかし、こうした潜水艇や探査機は特定の限られた場所をピンポイントで調べることしかできません。

一方、ここ数年、世界各地で深さ数千メートルの深海の海底に希少な金属などの資源が眠っているのが相次いで確認されていて、こうした資源の本格的な商業掘削につなげるためには、短時間に広範囲を調べることができる新たな探査技術の開発が世界的に求められています。

こうした深海の“広域探査”で期待されているのが、海上の調査船とケーブルで結ばれたりせずに、独立して動く「自律型」と呼ばれる無人の深海探査ロボットです。
深海では、位置情報を知るためのGPSの電波が届きにくいほか、海上の調査船からの通信用の電波も届きにくいため、遠隔操作が難しく、ロボットみずから情報を収集して、障害物などを避けながら探査を進める必要があります。

今回のレースは、この「自律型」の深海探査ロボットへの世界的なニーズが高まる中、各国間での技術開発競争をより一層促そうという狙いで企画されました。

レース参加の深海探査ロボット 実績は

ことし9月に深海探査の国際レースに参加することになった、チーム「KUROSHIO」の深海探査ロボット、「AE2000a」と「AE2000f」は、5年前の平成24年に伊豆諸島の八丈島の南の海底で、わずか1日という短い探査時間で、貴重な資源を含む可能性がある特徴的な地形をした場所を発見した実績があります。
このときの探査では、合わせて3機の深海探査ロボットを水深900メートルの海底に投入し、このうちの1台が高性能な音波探知機で幅500メートル、長さ1キロにわたって探査したところ、地形の特徴から、わずか1日で、「熱水マウンド」と呼ばれる金属成分を含んだ熱水が吹き出した跡と見られる場所を発見したということです。

今回のレースで、チーム「KUROSHIO」の深海探査ロボットには、海底の地形を立体的に捉え、コンピューターの画面上で3次元の画像として表示する機能が加えられています。
チーム「KUROSHIO」に参加する東京大学のグループが、今回のレースに参加する探査機とは別の探査機を使って、おととし、新潟県上越市沖の水深970メートルの海底で行った試験的な撮影では、探査機が海底を15往復して撮影した画像をつなぎ合わせ、およそ6万平方メートルの海底の様子を立体的な海底地形図として表示することに成功しました。
この地形図では、海底の起伏や岩の様子が手に取るようにわかるほか、天然ガスの成分と見られる白っぽいものも映し出されていました。
さらに、海底に群れるカニもくっきりと写っていました。

投稿者:かぶん |  投稿時間:20:09  | カテゴリ:科学のニュース
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