2017年03月07日 (火)

防衛省の資金提供 日本学術会議「問題多い」

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防衛省が大学などの研究機関に資金を提供する制度を始めたことをきっかけに、科学者と軍事的な研究との関わり方について議論してきた日本学術会議の検討委員会は、防衛省による資金提供について「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募や審査が行われ、政府による研究への介入が著しく問題が多い」などとする新たな声明の案をまとめました。

 

日本の科学者の代表機関として国が設置している「日本学術会議」は、先の大戦で、科学者が戦争に協力したことへの反省から、▽昭和25年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」とする声明を、▽昭和42年には「軍事目的のための科学研究を行わない」とする声明を、それぞれ発表しています。

一方で、防衛省が、おととし、安全保障環境が厳しさを増す中、将来の防衛装備品の開発につながる大学などの研究機関に研究に資金を提供する制度を始めたことから、日本学術会議は、去年5月、科学者と、安全保障技術など軍事的な研究との関わり方について議論する検討委員会を設け、7日、新たな声明の案を取りまとめました。

声明の案では、まず、現在の日本の科学界がおかれた状況について、「学術と軍事が接近しつつある中、大学などの研究機関における軍事的安全保障研究が学問の自由、および学術の健全な発展と緊張関係にあることを確認する」としたうえで、これまでの2つの声明を「継承する」としています。

そして、防衛省が始めた研究資金の提供制度については、「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募や審査が行われ、政府による研究への介入が著しく問題が多い」としています。

そのうえで、「大学などの研究機関は、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的・方法・応用の妥当性の観点から、技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである」としています。

この声明案は、来月開かれる日本学術会議の総会で提案される見通しで、認められれば正式な声明となります。

「否定的メッセージ 非常に強い」

日本学術会議が設けた「安全保障と学術に関する検討委員会」で委員長を務めている法政大学の杉田敦教授は、記者会見で7日、取りまとめた新たな声明の案について「防衛省の資金提供制度への応募について、否定的なメッセージが非常に強いと受け止めていただけると思う」と述べました。

また、日本の科学者と軍事的な研究との関わり方について、「日本学術会議は、この問題について半世紀の間、メッセージを発信してこなかった責任がある。この声明をきっかけに今後も議論を積み重ねていくことが必要だと考えている」と述べました。

防衛省「コメント差し控える」

日本学術会議の検討委員会の新たな声明の案をまとめたことについて、防衛省は「日本学術会議が独立の立場で行っているもので、防衛省としてコメントすることは差し控える」としたうえで、「防衛装備に関連する技術力の向上のための施策は、適切に進めていく必要があると考えている」としています。

研究者たちは…

防衛省の資金提供制度に反対する科学者などで作るグループ「軍学共同反対連絡会」の共同代表を務める名古屋大学の池内了名誉教授は7日、取りまとめられた新たな声明の案について、「声明案では防衛省の制度を『問題が多い』と明記するなど最大限努力していただき評価している。今後は各大学がルール作りを進めていくことになると思うが、この声明案が大学にとってはひとつのハードルになり、軍学共同研究が進むことの歯止めになることを期待したい」と話しています。

日本学術会議の検討委員会の委員の1人で、自衛を目的とした研究は認められるべきだと主張してきた九州大学の小松利光名誉教授は「国際社会でいまだに暴力の論理が働いている中で、自衛や防衛を目的とした研究は必要だと考える。学術界は、戦争に関わったという過去の反省から拒否反応が大きいが、日本の排他的経済水域に向けてミサイルが発射されている現実もあり、今後は、大学や学生も含めて、国民的な議論が必要だ」と話しています。

大学などの19研究に防衛省資金

今回の議論のきっかけとなった、防衛省による大学などへの研究資金の提供制度は、おととし導入され、これまでに19の研究が採択されています。

政府は、4年前の平成25年に閣議決定した「防衛計画の大綱」で、安全保障環境が厳しくなる中、防衛力を支える基盤を強化するため、「大学や研究機関との連携の充実などにより、防衛にも応用可能な民生技術の積極的な活用に努める」として、大学などとの連携を強めていく方針を掲げています。

こうした中、防衛省では、民間の先進的な技術を将来の防衛装備品の開発に積極的に取り入れるため、おととし、大学などの研究機関に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を新たに設けました。

これまでに、大学や研究機関などから153件の応募があり、19件の研究が採択されました。このうち大学からは81件の応募があり、9件が採択されています。

この制度の昨年度の予算はおよそ3億円で、2年目の今年度はおよそ6億円でしたが、3年目となる新年度(平成29年度)の政府の予算案では、およそ110億円と大幅に増額する方針が示されています。

研究1件当たりの提供額も、昨年度と今年度は、最大で、年間およそ4000万円でしたが、新年度の予算案では、最大、5年間で、数十億円規模とすることが計画されています。

資金提供廃止求め科学者らが署名提出

防衛省がおととし始めた、大学などの研究機関に資金を提供する制度をめぐり、制度に反対する科学者などで作るグループ「軍学共同反対連絡会」が7日、防衛省に対し、制度の廃止を求める科学者や市民、およそ6700人分の署名を提出しました。この中で、グループの共同代表を務める名古屋大学の池内了名誉教授は、防衛装備庁の担当者に対し、「制度の廃止を要求します。科学者だけでなく多くの市民もこの制度への問題意識を強く持っていて、危惧の声をぜひとも理解してほしい」と訴えました。

投稿者:かぶん |  投稿時間:19:34  | カテゴリ:科学のニュース
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