2016年04月21日 (木)

耐性菌「CRE」の脅威 国内も


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抗生物質が効かなくなった細菌、「耐性菌」。決め手となる治療法がなくなるおそれがあるとして恐れられ、ことし5月に開かれる伊勢志摩サミットでも対策が議論される見込みです。この耐性菌のなかで、今、「CRE」と呼ばれる新しい種類が問題になっています。医療現場で「最後の切り札」として使われてきた種類を含む多くの抗生物質が効かず、海外では死亡する人も出て、WHO=世界保健機関が各国に対策を講じるよう呼びかけています。これまで、国内でどれほど広まっているかを示すデータはほとんどありませんでしたが、大阪大学や大阪府の研究グループが大規模な調査を行った結果、入院患者のおよそ12%から検出されたことが分かりました。専門家は、手薄になりがちな介護施設などでの感染対策が重要になってくると指摘しています。新しい耐性菌の脅威と、それを抑える対策について、大阪放送局の秋元宏美記者が解説します。

耐性菌とは

細菌に感染して病気になった場合、抗生物質を使って治療が行われますが、この抗生物質が効かなくなった細菌のことを「耐性菌」と言います。これまでに、VRE=バンコマイシン耐性腸球菌や、MRSA=メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、それにMDRP=多剤耐性緑のう菌などで院内感染が疑われる事例が起きています。

新種の「CRE」

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こうした耐性菌のなかで、最近、問題になっているのが「CRE」という新しい種類です。「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」というのが正式な名前です。名前のとおり、ふだんは人の腸の中にいる大腸菌などですが、「カルバペネム系」と呼ばれる種類を含む、多くの抗生物質が効かなくなっています。
「カルバペネム系」の抗生物質は、医療現場で、ほかの薬が効かなくなった場合の「最後の切り札」として使われているため、それが効かないCREは決め手となる治療法がなくなるおそれがあると恐れられています。

<特徴1:強い病原性>
CREには大きく2つの特徴があります。1つは病原性が強いことです。専門家によりますと、CREは腸の中にいる場合は問題ありませんが、血液や肺、尿道などに入ると炎症などを起こします。MRSAなどは、病気や高齢で抵抗力の弱まった人が「日和見感染」と呼ばれる感染を起こし症状が出ますが、CREは、健康な人でも腸以外の器官に入ると症状が出るということです。海外では、血液に入って症状が出た場合、最大で患者の50%が死亡するという報告もあります。

<特徴2:ほかの細菌を耐性菌に>
もう1つは、CREは抗生物質が効かないようにする特殊な遺伝子を持っていて、これをほかの細菌に受け渡すことで次々と耐性菌に変えていくことです。同じ種類だけでなく、異なる種類の細菌にも次々と受け渡し、耐性菌を増やしていくのです。
CREは、欧米などではここ10年ほどの間に医療機関などで急速に広まり、死者も出て社会問題になっています。WHO=世界保健機関は、各国に対策を取るよう呼びかけています。

国内の現状

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国内ではこれまで、一部の病院で院内感染が疑われる事例がありました。
大阪市にある「国立病院機構大阪医療センター」では、おととし(平成26年)までの数年間で100人以上の患者が感染し、死亡した患者のうち2人は、CREの感染が原因で死亡した可能性が高いとされています。
こうしたことを受けて、国はおととし、CREに感染し症状が出た患者全員について報告するよう医療機関に義務づけ、去年1年間に1600例余りの報告がありました。
また、厚生労働省のサーベイランス(調査監視)事業では、おととし1年間に全国の医療機関で検出された腸内細菌科の主な細菌のうちCREが見つかる割合は1%以下でした。しかし、症状はないもののCREを持っている「保菌者」がどれだけいるかを示すデータはほとんどありませんでした。

“入院患者の約12%”

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そこで、大阪大学医学部附属病院感染制御部の朝野和典教授や、大阪府立公衆衛生研究所、それに府の保健所で作る研究グループが、去年12月からことし1月にかけて大規模な調査を行いました。
大阪府の北摂地域にある46の病院の入院患者のうち、おむつを使っていて、栄養をとったり尿を出したりする管をつけている患者、合計1567人を対象に、排せつされた便を感度の高い方法で検査した結果、11.8%にあたる185人からCREが検出されたということです。
栄養をとる管をつけている患者や、入院期間が長い患者で、検出される割合が高い傾向がみられたということです。

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国内で広まる脅威

この結果をどう受け止めればいいのでしょうか。今回の調査は、入院患者の中でも、おむつを使っているなど一定の条件を満たす人を対象にしたため、調査した朝野教授は、「一般の人よりもCREを持つ割合が高い可能性がある」としています。そのうえで、「最初の予測より多く、CREがじわじわと広まっていると考えられる。さらに調査を進め、危険性を解析していく必要がある」と話しています。

「手がつけられなくなる」

研究グループによりますと、今回の調査で検出されたCREのほぼすべてが、「IMP-6」と呼ばれる型でした。これは欧米などで広まっている強い型とは違い、治療効果が見込まれる抗生物質がまだ一部残されていて、今の段階で大きく恐れる必要はないということです。
しかし、多くの人からCREが検出されたという事実は重く受け止める必要があります。朝野教授は「このまま対策を取らなければ、今後、耐性がより強い細菌に変化したり、より強力なCREが海外から入ってきたりした場合に一気に広まり、手がつけられなくなるおそれがある」と指摘しています。

必要な対策~カギは介護施設

それでは、広がる耐性菌にどう立ち向かえばいいのでしょうか。今、求められているのは、医療機関はもちろん、高齢者の介護施設などを含め、一般的な感染対策を徹底することだといえます。
CREなどの耐性菌は、医療機関や介護施設の入院患者や入所者の間で広まっていくと考えられています。そして、細菌を持つ保菌者がこれらの施設を行き来することで、さらに多くの人に広まるとみられます。しかし、特に、人員が不足しがちな介護施設では対策が手薄になりやすく、大きな課題になっています。
CREは便の中に含まれるので、おむつ交換などの際、一人ずつ手袋やエプロンを替えたり、栄養を送る管などの器具の消毒を徹底したりすることが重要です。血液を介して細菌やウイルスに感染することは知られ、介護施設でも血液を扱う際は慎重に行うようになっていますが、便については「危ない」という意識が薄いのではないかと、朝野教授は指摘しています。介護現場などに感染対策の専門的な知識と技術を伝え、さらに国などが資金面で支援する体制が必要だということです。
朝野教授は「行政などが率先して、病院や介護施設、保健所などを含む感染対策の地域ネットワークを、全国各地で作っていかなければならない」と訴えています。

私たちができる対策

こうした医療・介護の現場の取り組みだけでなく、一般の私たちにもできることがあります。抗生物質が過剰に使われると、耐性菌が増えやすい環境を作ると考えられています。このため、医療機関に行ってむやみに抗生物質を求めたり、飲み残しの抗生物質を自分の判断で服用したりしないことも、耐性菌による脅威を抑えるために大切なことだといえます。

投稿者:かぶん |  投稿時間:15:52  | カテゴリ:ニュース解説
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