2016年08月09日 (火)

奇跡の教室 戦争の記憶と向き合う

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フランス人の映画監督、マリー=カスティーユ・マンシオン=シャールさん。第2次世界大戦当時の記憶とどう向き合い、どう語り継いでいくべきなのかを問いかける新作が公開されました。実話に基づく映画に込めた思いを、来日したシャール監督にうかがいました。

奇跡の教室

映画「奇跡の教室」。舞台は移民など貧困層が通うパリ郊外の高校です。落ちこぼれクラスの担任となったのは、ベテラン教師のゲゲン。生徒たちに提案したのはアウシュビッツについてクラス全員でまとめて発表する、コンクールへの出場でした。
しかし、生徒たちからは、『何のためにやるの?、恥をかくだけ』とか『劣等生にできるはずがない』などといった反応が返ってきます。
監督が、映画を撮ったのは、歴史を伝える場として学校の役割に注目したからでした。
「学校は“伝える場”です.そこでは、子どもたちに知識を伝えますが、ただ知識を伝えるだけでは十分ではありません.歴史の生々しい記憶を伝えることも大切なんです」(シャール監督)

現実の国際社会の課題

映画の舞台となる学校の生徒たちは、民族も宗教もさまざま。
今のフランス社会を象徴するような学校です。
生徒たちは最初、お互いを受け入れることができず、いがみ合うばかりでした。シャールさんの頭にあったのは、現実の国際社会だったといいます。
あふれる難民をめぐるさまざまな問題。互いを受け入れることはできるのか、世界は今も、深刻な対立などいくつもの課題を抱えています。
「学校は、外から来る人たちを怖がったり、危険視したりするのではなく、その人たちが持つ豊かさを教えるべきです.子どもたちに他者を怖がることを教えれば、5年後、10年後、想像するのも恐ろしい世の中になっていくでしょう.そうならないために、自分と異なる人を受け入れ、一緒に豊かになることの大切さを、教えなければなりません」(シャール監督)

強制収容所の生還者

映画で、生徒たちの意識を変える重要な役割を果たすのは、強制収容所からの生還者です。出演したズィゲルさんは、実際にアウシュビッツを経験し、生き残った方です。
『診療所に連れて行くから広場のこちら側に並べ父も呼ばれた。父さん、元気になったらまた会おうと言った。父とはそれっきり会ってません。重要なのは、人種差別と戦い続けることです』(ズィゲルさん)

当時を経験した人たちの記憶を受け継ぎ、今に生かし続けることが自分たちの役割だと、シャール監督は言います。
「歴史というものは繰り返すものですからね.人類はどんなに進歩しても、同じ過ちを繰り返してしまうものです.強制収容所を経験した人たちも、日本では原爆の被害にあった方がたも、5年後、10年後、姿を消していくことでしょう。そうした中で、歴史の記憶を残していくためには、伝承するしかないのです.人々が傷ついた記憶を、将来に生かすことが大事です」。

アウシュビッツから生還したズィゲルさんは、映画の完成後、去年1月に87歳で亡くなりました。
フランスには、映画に登場したような、中高生を対象にした全国規模の歴史コンクールが実在します。体験者の話を直に聞ける機会が少なくなる中で大切な取り組みとなっています。

投稿者:かぶん |  投稿時間:19:30  | カテゴリ:文化のニュース
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