2017年01月06日 (金)

News Up「おもしろすぎる」と話題に 辞書編さん者が見た紅白

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「シン・ゴジラ」などの演出面にも注目が集まった去年のNHK紅白歌合戦で、歌われた歌詞や出演者の発言に注目して、専門家の立場から言葉づかいなどを分析した大量のツイートが話題になっています。発信したのは「長年の紅白ファン」であり、リアル「舟を編む」人でした。

「おもしろすぎる視点」が人気

ユニークな発信をしたのは、「三省堂国語辞典」の編集委員をつとめる飯間浩明さん(49)です。

飯間さんが発信したツイートは、例えばE-girlsの「DANCE WITH ME NOW!」を放送中、歌詞にある「スタックスタックしてるだけじゃTic Tac時間の無駄」という表現について、「『スタック』というのは車がぬかるみにはまって出られない状態だと思います」と分析し、辞書にないので載せたほうがいいでしょうか、とつぶやいています。

また宇多田ヒカルさんの「花束を君に」の中で使われた「淋しみ」という表現については「辞書にある」としながら、「『淋しさ』とどう違うか、十分説明していない。どう違うのでしょう?」と、問いかけています。

「おもしろすぎる視点」が人気

また、歌詞の当て字にも注目しており、同じ「とき」という読ませ方でも「時間(とき)」「歳月(とき)」「時代(とき)」と、歌によって当てる漢字が異なり、「『とき』は大人気です」とツイートしています。

飯間さんが紅白の放送時間中に発信したツイートは48件、ツイートをまとめた記事はこれまでに20万回近く閲覧され、「辞典の編集者目線の紅白おもしろい!」とか、「間違いの指摘ではなく、ことばがどう使われているかをみているところが読みやすい」といった多くの感想が寄せられました。

なぜ紅白で「用例採集」を?

飯間さんが行っていたのは、「用例採集」と呼ばれ、国語辞典などに新たに載せるべき言葉を探すために、編さん者が日常的にしていることです。
2012年の本屋大賞を受賞した三浦しをんさんの小説「舟を編む」で、「用例採集」を知った人も多いのではないでしょうか。通常は、テレビや新聞、街なかの看板などを観察しながら行うということですが、なぜ、紅白に注目したのか。

実は飯間さんは、学生時代から30年間ほぼ毎年、紅白歌合戦を見るだけでなく、録画しておくほどの「紅白ファン」。10年ほど前、辞典の編さんに携わるようになったときに、紅白で用例採集をしようと思いました。
「紅白歌合戦はその年のミュージックシーンが1日でわかるので、採集の絶好の機会です。しかもことし売れた歌だけでなく昔の歌も登場するので、多くの人が聞き、歌っている歌をまんべんなく採集できるところも魅力です」と話しています。

実際に紅白歌合戦から「三省堂国語辞典」に新たに採用された例としては、司会のコメントにあった「元気をもらう」が「元気」の用例に加わったり、福山雅治さんの歌から、「とわ」に当てる漢字に「永遠」が加わったりしたということです。

「間違い探し」ではない

多くの歌詞の中には気になる表現もあるといいます。
例えば日本語の乱れなどと批判されることが多かった「ら抜きことば」は、RADWIMPSの「前前前世」の歌詞にあった「私たち超えれるかな」や、SEKAI NO OWARIの「Hey Ho」の中で、「笑顔を見れる権利」などのように使われていました。

ほかにも関ジャニ∞のメンバーのあいさつで、「歌わさせていただきます」といった表現は、本来不要な「さ」が入った、「さ入れ表現」と呼ばれています。

飯間さんは「言葉には本来、正しいとか間違っているということはありません。言葉がその時代にどのように使われているのか、淡々と、また興味深く記録しているだけです」と話しています。

「若い世代が言葉づかいに厳しくなっている」

一方でソーシャルメディアの普及にともない、最近、過剰に言葉の間違いを指摘する意見が増えてきたと飯間さんは感じています。

例えば、ツイッターなどで、「的を得る」という発言があると直ちに「それは的を『射る』の誤用だ」という指摘が投稿されるなどで、「日本語警察」という言い方も生まれています。

飯間さんは、「昔は年配者が若者の言葉づかいを批判していたが、最近はむしろ若い世代が他人の言葉づかいに厳しくなっている」として、背景には、ネットの検索をもとに簡単に誤用を指摘できるようになったことのほか、「メディアの責任」もあると、指摘しています。

「文化庁が毎年行っている『国語に関する世論調査』の報道で、本来の意味を『○』そうでない意味を『×』と伝えられることが多く、視聴者や読者が「本来の意味ではない=誤用」と思い込んでしまうのではないでしょうか。『誤用』と指摘されている用例が、実際に調べると誤用とはいえないケースも多くあります。誤用をたくさん集めて間違いを指摘しても、『その人』自身の言葉は豊かにはならないと思います」(飯間浩明さん)

ソーシャルメディアなどで人の言葉を訂正したくなったとき、いったん手を止めて、飯間さんの言葉を思い出すとよいかもしれません。

投稿者:かぶん |  投稿時間:21:20  | カテゴリ:文化のニュース
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