

後白河法皇が編さんした、今様(いまよう)という当時の流行歌を集めた梁塵秘抄(りょうじんひしょう)に有名な歌があります。「遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん 遊ぶ子供の声きけば 我が身さえこそ動(ゆる)がるれ」。この歌をわれわれは、「生きていればいろいろ大変なことはあるけど、子どもが遊ぶように夢中になって生きようよ」という意味にとらえ、ドラマの節々に登場させています。
最初は清盛の母・舞子(吹石一恵)が子守唄として歌います。次は、白河法皇(伊東四朗)の愛妃である祇園女御(松田聖子)が、舞いながら歌います。その後は、白河法皇のひ孫である雅仁親王(松田翔太)がまた別のバージョンで歌います。
これは1年をかけて、つないでいきます。さまざまな人物が、いろいろな状況下で、それぞれ違う聞こえ方をしながら、でも、「どうせ生きるなら夢中になって楽しみながら生きようよ」というメッセージを伝えていきたいと考えています。
この今様は、今回のドラマを企画する上の大きな原動力であったし、作品のキャッチフレーズであり、テーマです。

約900年前の日本に、都にタイムスリップしたら、きっとこのような状態で、人々はこういうふうに笑ったり、泣いたりしていたのだということをリアルに表現したい。そのために、リアリティーには徹底的にこだわりました。
役者さんが着ている衣装についても、それぞれのキャラクターと同化しているように、着せられている感が一切ないように工夫しました。クランクイン前の衣装合わせに割いた時間はきっと前代未聞でしょうね。詳しいことは、人物デザイン監修の柘植伊佐夫さんのインタビューを読んでいただければわかると思いますが、当時の資料を参考にしながら、衣装、カツラ、メイクのすべてにおいて徹底的にリアリティーを追求しています。
美術では、今回のロケ地の1つである岩手県奥州市にある「えさし藤原の郷」に建てた、私たちが“やぶれ門”と呼んでいる山門。これは、半分崩壊しかかった都の象徴です。山門の下の道も当時は土の道だったので、許可を頂いた上でもともとあった砂利をどけて、土を運び入れ、水たまりがあちらこちらにある、でこぼこ道を再現しました。
そこに役者さんが入って来ると、自分の置かれた状況に触発され、当然芝居も変わってきます。予定調和の芝居ではなく、体の奥底から沸き上がってくるリアリティーのある芝居になる。
ロケの期間はよく雨が降っていたので、土と牛や馬たちのフンが混じり合って、ものすごく臭かった(笑)。でも、平忠盛役の中井貴一さんは盗賊の頭領と、その場所ではいずり回り、泥まみれになりながら戦いました。とても臭かったと思いますが、その臭さも芝居のリアリティーにはプラスになっているはずです。