2016年7月20日(水)

いったい誰の土地? 深刻な実態

鈴木
「土地をめぐる深刻な問題です。」

大雨で崩れた住宅裏の斜面。
6年間放置されています。
この土地の所有者が見つからず、復旧工事に取りかかれないのです。

住民
「この崖、崩れたら大変。
心配です。」



所有者不明の土地が、防災や環境保護の足かせとなっています。

河野
「こうした問題の背景には、土地の所有権が登記されず、放置されている実態があります。
現場で何が起きているのでしょうか。」

国内有数の湿原で“困った…”

北海道東部。
霧多布(きりたっぷ)湿原です。




300種類を超える植物が群生する「花の湿原」。
国際的にも貴重な場所となっています。




細井拓記者(釧路局)
「所有者が分からない土地は、こうした貴重な自然を後世に残そうという活動にも暗い影を落としています。」




湿原に豊かな水を供給する山林。
しかし、荒れ放題となっています。
地元の環境保護団体が調べたところ、山林は私有地で、手入れができないのです。



山林の登記簿です。
所有権が登記されたのは、87年前でした。




当時、9人の共有地とされていましたが、現在の所有者は登記を見ても分からない状態でした。





なぜ、所有者が分からなくなるのか。
土地を所有している人は、所有権を明らかにするために、法務局で登記することができます。
しかし、この手続きは義務ではありません。

所有者が亡くなった後、登記が行われなければ、その土地が誰のものか分からなくなることがあるのです。
土地に一定以上の価値がなければ固定資産税の対象にならず、行政も十分把握できません。



NPO法人 霧多布湿原ナショナルトラスト 三膳時子理事長
「霧多布湿原は私有地で囲まれている。
自分たちが(保護を)やっていこうというところが、難しいところにぶつかっている。」



団体は、弁護士や司法書士に依頼し、現在の所有者を探しました。
戸籍や住民票をあたる調査に大きな費用をかけてきましたが、思うように進んでいません。




NPO法人 霧多布湿原ナショナルトラスト 三膳時子理事長
「費用が続かなかったり、調査が手におえないとなったら、なすすべがない。」

意外な場所にも所有権 防災事業の足かせに

リポート:岡崎瑶記者(釧路局)

所有者がわからない土地は、私たちの生活や命を守る防災事業の足かせにもなっています。
海抜ゼロメートル地帯が広がる新潟市。




大雨のたびに水害に脅かされ、18年前の集中豪雨では、およそ1万棟が浸水被害に遭いました。





市民
「雨が降ると、とにかく水が上がるのが怖い。
堤防つくるんだったら、つくってもらえればうれしい。」



大雨の時に水があふれた、鳥屋野潟(とやのがた)です。
水害を防ごうと、新潟県はこの場所の治水事業に取り組みました。




ところが、排水ポンプは設置したものの、肝心の堤防の建設が手つかずのままです。
意外な場所が問題となりました。




岡崎瑶記者
「妨げとなったのは、この湖の底の土地です。」




実は、湖の底はおよそ500区画に分かれていて、その4分の3が私有地だったのです。

周辺に暮らす人々は、古くから湖の底から土砂を採取し、農地を改良していました。





明治時代に、採取場所が共有地などとして登記されましたが、その後、長年手続きが行われていない土地が多くありました。
県は土地を買い取ろうと、5年かけて権利関係を調べました。
すると、所有者は子や孫にまで広がり、1,200人以上に及んでいたのです。
買収交渉はこれからで、堤防の着工のめどは立っていません。
この治水事業に関わってきた専門家は、もどかしさを感じています。

新潟大学 大熊孝名誉教授
「工事を始めるまでの準備時間を狭められれば、もっと早く新潟市の安全度は高まっていた。
公共的に使う土地の扱いというもの、新たに制度を考えていくのも必要かもしれない。」

“防災”進めるために 被災地では

防災事業をどう進めるのか。
東日本大震災の被災地では、新たな仕組みが導入されました。
津波から町を守る防潮堤の建設。
所有者が不明な土地が多くありました。


国は被災地を対象に、買収が必要な土地の所有者が分からない段階でも、工事を始められるようにしたのです。

岩手県 宮古土木センター 三浦公久さん
「安全が確保されないと、まちづくりも進まない。
早く工事に着手できて、完成もより早くできるものと考えている。」



しかし、こうした仕組みは大規模災害の被災地のみが対象で、ほかの所では利用できません。

所有者不明の土地問題に詳しい 東京財団 吉原祥子研究員
「個人の財産権と公益のバランスをどうとっていくか、非常に大きな問題があるので、行政も積極的に踏み込むことには慎重にならざるをえない側面がある。
国がしっかりと法律をつくり、地域の現状に即した対応策をつくっていく必要がある。」

“登記してください” 自治体の呼びかけ

将来、土地の所有者がわからなくならないよう、独自の取り組みを進める自治体があります。

この日、死亡届けを出しに来た家族。

町民
「登記はしないといけない?」

担当者
「そうですね、登記はできたら。」

この町では、亡くなった人が所有していた土地を相続する人に、登記を呼びかけています。
死亡届けをきっかけに、登記手続きの大切さを理解してもらい、着実にその数を増やしています。




町民
「相続する人に名義を変えてくださいと。
正直なところ私もすべてを把握していなくて。
ありがたい。」


京都 精華町総合窓口課 岩﨑智代さん
「相続人と接する唯一の機会が、窓口に来た時。
その時に話をさせてもらう機会ができる。
不明な土地が増えるのを抑制しているのではないか。」


高齢化で今後、亡くなる人が増えていく中、専門家は、対策は待ったなしだと指摘します。

上智大学法科大学院 北村喜宣教授
「権利関係の明確化をする必要性を関係者に理解いただいて、その点に関する意識の醸成は不可欠な行政の責任かと思う。」

どう減らす? 所有者不明の土地

鈴木
「持ち主が分からない土地が全国にどれぐらいあるのか、実はよくわかっていないんですが、1つのデータとして、国土交通省が4つの集落をサンプルとして調査したところ、50年以上登記が変わっていないケースが全体の2割に及んでいたと。
つまり、そのまま放置されている可能性があるということですね。」

河野
「防災にも影響が出ているということですから、やはり行政も、それから私たちも、土地の登記のあり方についてしっかりと考えていかなければならないのではないかと感じます。」

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