2016年7月27日(水)

副校長“120人不足” 教育の現場で何が?

田中
「学校現場で、学校運営の要ともいわれる『副校長』。
先月(6月)行われた東京都の副校長の募集で、定員に120人足りなかったことがNHKの取材で分かりました。」


河野
「このままでは近い将来、学校に副校長がいなくなるという事態も懸念されています。
学校で、何が起きているのでしょうか。」

深刻な なり手不足 その訳は…

東京・北区の中学校に勤める井上隆さん。
もともとは数学の教員でしたが、この4月、副校長になりました。




朝7時。
誰よりも早く学校に来て、校内の見回りをします。

中学校の副校長 井上隆さん
「破損とか、きのうの雨で雨漏りがあるかどうか。
先生も忙しいので。」

教員の時と違う、副校長の役割に難しさを感じています。

中学校の副校長 井上隆さん
「(ほかの教員が)授業している姿見ると、やはり“授業してなんぼだよな”と思う。
“何やってんだ俺は”って。」



東京都は今から12年前、教頭にかえて、校長を補佐する管理職ポストとして「副校長」の制度を新たに導入しました。

副校長の本来の業務は教員への助言・指導です。
そのほかに、教育委員会への報告や地域対応など、さまざまな業務も同時に担うことになりました。
井上さんが今、多くの時間をさいているのが、教育委員会への報告文書の作成です。
かつては主に校長の仕事でした。

都が推進する少人数授業の計画の作成。
さらに、いじめなどに対応するスクールカウンセラーの配置など、学校に求められる役割が変化し、報告も増えています。




今月(7月)に入ってからは、東京オリンピック・パラリンピックに向けた学校の取り組みも報告しなければなりません。

中学校の副校長 井上隆さん
「毎日やっていけば、けっこうな数。
怒とうのように…。」


地域への対応も、井上さんの仕事です。

グラウンドで水まきをする井上さん。
以前学校に「校庭の砂が風で飛ばされ、洗濯物につく」という苦情があり、副校長として対応を余儀なくされたのです。
さまざまな業務に時間をとられる一方で、副校長本来の業務である教員に対する指導も行わなければなりません。
この日、事務作業中に、若手の教員から生徒の進路相談がもちかけられました。

教員
「(生徒と)成績の話をして。
プレッシャーみたいです、進路面だとか。」

中学校の副校長 井上隆さん
「言い過ぎちゃうと、よけいプレッシャーになっちゃう。
本当は保護者ともっと話を…。」

そのあとも教員が次々と相談にやってきました。





井上さんは、残った仕事を片づけるため、先週の土曜日も出勤しました。
副校長の残業時間は教員に比べて1.5倍に上るというデータもあります。

中学校の副校長 井上隆さん
「良い学校を作ろうというのは変わらない。
そのためには雑用みたいなこともやらないと学校回らない。
学校管理としてはやらなきゃいけない。」


報告業務や地域対応などに追われる副校長。

東京都が教員に対して行った意識調査では、教員の6割が「管理職を目指さない」と答えています。
その理由をたずねたところ、半数は「副校長の業務量が多い」と回答しています。

都内の中学校に勤務する、42歳の教員です。
副校長になれば、月に7万円ほどの手当がつきますが、昇任試験をすすめられても断ってきたといいます。



都内中学校の教員
「管理職になる魅力がない。
現場の職員に声かけて実態把握をしたものを、すぐ報告書を作成してあげる。
とても忙しい仕事。
給与面、処遇に対して見合っているのかというと疑問。」

副校長の希望者が120人も不足する事態に、東京都教育委員会は危機感を強めています。
当面は、退職した元管理職を再び雇うことなどで対処する方針です。
専門家は、今、手を打たないと、近い将来、深刻な影響が出るおそれがあると指摘しています。


日本大学 佐藤晴雄教授
「倍率が下がってくると、問題の無い人ならいいとか、優秀かどうか、すぐれているかより、特に問題が無ければいいやという人が管理職になっていく可能性が出てくる。
そうしたときに、子どもに対してプラスの影響はないだろう。」

副校長 なり手不足 求められる業務見直し

田中
「副校長のお仕事、確かに忙しそうだったんですが、今、学校の現場では一般の教員も忙しくなっていると言われていますから、対応が必要ですよね。」

河野
「文部科学省は忙しさを軽減するために、副校長や教員を補佐する事務専門の職員を配置することも検討しているということなんですが、やはり予算面などで課題は多いということなんです。
ただ、学校の本来の目的というのは、言うまでもなく子どもたちの教育ですから、そこに影響が及ぶことがないように、学校での業務のあり方を見直したりして、ぜひ知恵を絞ってもらいたいと思います。」

Page Top