2016年11月8日(火)

人工知能「東ロボくん」 “東大諦める”

鈴木
「こちらは、東京大学の合格を目指して、4年にわたってセンター試験の模試を受けてきた人工知能『東ロボくん』です。
有名私立大学に合格するほどの成績を収めてきましたが、このほど東大の合格は諦めることになりました。
その理由とは?」

棋士に勝利・自動運転 広がる人工知能の可能性

“好きな番組が始まりますので、テレビつけますね。”

人工知能を搭載したロボットに…。

囲碁で世界トップクラスの棋士に勝ち越した人工知能を駆使したコンピューターソフト。

さらには自動運転の技術と、その活用の可能性が広がる人工知能。

英語・国語など苦手 課題は「読解力」

しかし、東京大学の壁は、人工知能にとっても高いものでした。




 

国立情報学研究所 新井紀子教授
「『東ロボくん』が勉強した教科書とか。」

「東ロボくん」の開発を進めている、国立情報学研究所の新井紀子(あらい・のりこ)教授です。
このほど、東大合格を諦め、“進路変更”することを決めました。




毎年、センター試験の模試を受けてきた「東ロボくん」。

去年(2015年)、470余りの大学で「合格率80%以上」を示すA判定を獲得するなど順調に成績を伸ばしてきました。

得意とするのは数学や世界史など、蓄積した知識や論理を扱う科目。
しかし、英語や国語など「読解力」を必要とする科目は苦手です。
東大合格の水準まで成績を上げることは、現在の技術では難しいと見極められたとして、進路変更を決めたのです。

国立情報学研究所 新井紀子教授
「かなりの有名大学までは入るけど、東大は何年浪人しても今のAI(人工知能)のあり方では合格難しい。
センター入試は文章が長いので、自然言語処理がつまずくことも多く難しい。」

間違った問題は? “人間の常識 知らず…”

田中
「では、東ロボくん、何が壁になったのか見ていきます。

まず、囲碁で盤面を的確に把握するように、人工知能が画像を認識する力は『ディープラーニング』という技術革新によって大きく向上しています。
一方で新井教授も話していた、人が話す言葉を処理する『自然言語処理技術』の向上は難しく、この部分が壁になりました。

例えば、センター試験の模試で東ロボくんが間違った問題は、『暑いのに歩いたの?』『はい。のどが渇いた、だから…』というやりとりに続く文章を英語で答えるものです。

こちらの『cold』『drink』など7つの英単語を並び替えて解答の文を作ります。





人間であれば『暑いのだから冷たいものが飲みたいのだろう』と状況を理解して、『冷たいものが飲みたい』と答えますよね。

しかし東ロボくんが作ったのは、『寒いので何か飲みたい』という解答でした。
東ロボくんは解答の際に、ウェブ上の文章から頻度が高そうなものを学習して解答しました。

ただ、これは問題文の設定から考えれば間違い。
東ロボくんには『暑いときに何が飲みたいのか』という人間の常識は入っていません。
専門家は、この常識がわからないことが課題だと指摘しています。」


 

言語処理学会 会長 東京工業大学 徳永健伸教授
「人間が持っているような常識的な知識を機械が持っていない。
うまく答えられない部分がある。
書かれてない情報をいかにうまく引き出して使えるようになるかが、いちばんのポイント。」

 

一方で、人工知能の中には、ことばを理解しているかのようにふるまうものも。

こちらは、マイクロソフトが運営する「りんな」という人工知能がLINEを使って会話に応じるサービス。
インターネット上の膨大な情報の中から、長く続いたことばなどを統計的に選んだ上で文章を作り出していて、会話の意味を理解して答えているわけではありません。
では、人間のことばを理解したうえでふるまう人工知能の開発は、可能なのか。

言語処理学会会長 東京工業大学 徳永健伸教授
「コンピューターの能力は非常に高くなってきた。
では知識をどうやって技術でつくっていくか。
時間はかかるかもしれないが、徐々に着実にそういった方向に近づいていくのではと期待して研究している。」

東ロボくん“東大諦める” 次の進路で成果いかす

鈴木
「人工知能のめざましい発展には日々驚かされますが、人間の常識を身につけるというところは、まだこれからということなんですね。」

田中
「難しいんですね。
ちなみに東ロボ君の次の進路ですが、各科目で開発した技術を社会で応用していく、例えば得意とする数学などの能力を産業に応用していくことが考えられているということです。」

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