2017年1月10日(火)

トランプ氏「つぶやき」 影響どこまで?

河野
「今、『つぶやき』が世界を動かし始めています。」

鈴木
「ツイッターでトランプ次期大統領に批判されたトヨタは、1兆円を超えるアメリカへの投資を発表しました。
アメリカの大手自動車メーカーも、トランプ氏のつぶやき対応に追われています。」

河野
「『トランプ砲』とも言われる1つ140文字のツイッターは、どこまで影響力を広げていくのでしょうか。」

つぶやき1つで巨額投資 影響 どこまで広がるか

アメリカ・デトロイトで始まった、世界最大規模のモーターショー。
そこに登場したトヨタの豊田章男(とよだ・あきお)社長は…。

トヨタ自動車 豊田章男社長
「トヨタの技術や製造、販売に携わる人は全米で13万6,000人に上る。
トヨタは、過去60年間でアメリカに220億ドルを投資してきた。」

トヨタが、これまでいかにアメリカに貢献してきたかを猛烈にアピール。
そして…。

トヨタ自動車 豊田章男社長
「(アメリカで)今後5年間だけで、さらに100億ドル(約1兆1,600億円)投資する。」

1兆円以上の巨額の投資計画を発表。
きっかけは、トランプ次期大統領のこの“つぶやき”でした。

“トヨタが米国向けのカローラ生産のためメキシコに新工場を作ると言ったが、とんでもない!
米国内に工場をつくらないのならば、高い関税を払うべきだ。”

つぶやき1つで、この発表。
トヨタの決断に、この人は…。

麻生副総理・財務相
「(トヨタが北米で)やろうとしてきてる方向は決して間違っていない。
トヨタとして“俺たちがこれだけのことやっているってあんた知っている?知らないんじゃないの”と。
米大統領が知らなくて驚くことはないが、“そういったことをきちんとやっているんですよ”と。」

日本の経済界を代表する経団連会長は、こう指摘。

経団連 榊原会長
「ツイッターは、いわゆるつぶやき。
大統領の政策発表ではないので、そこら辺はきっちりと峻別(しゅんべつ)して理解しないといけない。
就任演説、その後の一般教書演説等でどういった政策が出されるのか、それがいちばん大事。」
 

波紋はほかにも…。
トランプ氏は、フォードやGM=ゼネラル・モーターズも攻撃しています。

結局、フォードはトランプ氏に批判されたメキシコへの工場建設の計画を白紙撤回。




 

それに追随するかのように、フィアット・クライスラーもアメリカ国内の工場の生産設備を拡充し、新たに2,000人の雇用を創出すると明らかにしました。
まさに思惑どおりとも思える展開に、トランプ氏はツイッターでこうつぶやきました。



 

“ついに現実になる。
フィアット・クライスラーはミシガン州とオハイオ州の工場に10億ドルを投資し、2,000人の雇用を生み出すと発表した。




フォードがメキシコに工場を建設するかわりに、ミシガン州の工場を拡張すると発表したことに続くものだ。
ありがとう!フォードとフィアット・クライスラー。」



 

一方、メキシコでの生産を名指しで批判されたGMは…。

GM メアリー・バーラCEO
「ビジネスもアメリカもより強くしたいが、我々は世界的企業だ。
会社や従業員、車を製造・販売している国のため、正しい判断をしたい。」


 

生産体制については慎重に検討する必要があるという見方を示しています。

攻撃の矛先はほかの国にも及びます。

“中国は一方的な貿易で米国から巨額の金と富を吸い上げているが、北朝鮮をめぐっては協力しない。
たいしたもんだ!”

こんな大物も攻撃対象になりました。
ゴールデングローブ賞の授賞式に出席した女優、メリル・ストリープさんです。



 

女優 メリル・ストリープさん
「この国で最も尊敬されるべき地位に就く人が、障害のある人をばかにした。
胸が張り裂けそうで、いまだに頭から離れない。」

ストリープさんが指摘したのは、トランプ氏のこのスピーチ。

アメリカ トランプ次期大統領
「えーっと覚えてないよ、なんて言ったかな、そんなこと言ったかな。」



 

障害のある新聞記者のことを、このように表現したのです。

女優 メリル・ストリープさん
「権力者が人に屈辱を与えるようなことをすれば、すべての人に影響を及ぼす。
『ほかの人も同じことをしていい』と許可を与えるようなものだから。
軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を招く。
権力者が弱い者いじめすれば、私たちは負けだ。」

トランプ氏は、すかさず攻撃。

“ハリウッドで最も過大評価された女優の1人、メリル・ストリープが私のことを知らないくせに、昨夜、私を攻撃してきた。

彼女はあの大敗したヒラリーの取り巻きだ。
もう100回くらい言っているが、私は決して障害のある記者を『ばかにした』ことはない。”



 

トランプ氏は、選挙戦で勝利したあと一度も記者会見を行っていません。
ツイッターによる一方的な発信には、批判も強まっています。

アメリカ ケリー国務長官
「ツイッターの140文字で、複雑な政策について十分に対応できるとは思わない。」



 

アメリカ バイデン副大統領
「トランプ氏が何に賛成で何に反対か、私たちはどうなのか。
国民の生活に関わる問題を話し合えば、もっと明確にできる。
成長しろ、ドナルド。
大人になる時が来たんだ、君が大統領になるんだから。」

どう見る? トランプ氏の発信

鈴木
「スタジオには、アメリカ政治とメディアの関係に詳しい、上智大学教授の前嶋和弘(まえしま・かずひろ)さんにお越しいただきました。」

河野
「ツイッターでのひと言で、世界的な大企業が動かされるという、すごく異様な状況にも思えるんですが、
トランプ氏のツイートの使い方、戦術的な使い方をしているかも含めて、どうご覧になっていますか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「トランプ氏が記者会見をしないのはなぜかというと、メディアを信じていないんですよね。
あれだけ選挙戦で叩かれたところがあるので、既存のメディアを信じていない。
信じていないけど、逆に自分が、そのまま自分のことを打って140文字で飛ばすことができるツイッターを、とても効率的で信頼をおけるツールだと思っていますよね。
最初のうちは、このツールの使い方についてあまり慣れていないところがあったかもしれませんが、徐々に世界がトランプ氏の動きを見るようになりましたよね。
だんだん、トランプ氏も『こうやったらこうなる』というのを考えるようになり、今回のトヨタのケースを見ても、戦略的に使うようになってきましたよね。」

企業を名指し 狙いは?

鈴木
「改めて、トランプ氏に名指しで批判された企業とその対応をまとめたんですが、トヨタはアメリカに1兆円以上の投資計画を発表しましたよね。
それからフォードは、メキシコでの工場建設計画を撤回しました。
そのほかに、現時点では静観している企業も内心は穏やかではないのではと思うんですが、トランプ氏は何を狙っているんでしょうか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「本当にいろんな企業にとっては穏やかではないですよね。
夜も眠れずにツイッターを見ないといけない感じかもしれません。
トランプ氏が狙っているのは、ひと言で言うと『米国内の雇用をつくっていくこと』ですよね。
これは何かというと、やはり昨年の選挙戦でトランプ氏を応援して、最も中核的なトランプ氏の支持者であった白人ブルーカラー層、ちょうど失業したり、今後どうなるかわからない人たち、この人たちに対しての、言ってみれば恩返しなんですよね。
そのためにいろいろな企業を叩いて、メキシコに行かずにアメリカに投資をしろというふうにしているわけです。」

河野
「選挙戦の延長のような形でやっていると?」

上智大学 前嶋和弘教授
「まさにそうなんですよね。」

次期大統領の発信 問題は?

河野
「ただ、選挙戦の時は効果があったかもしれませんが、間もなく権力を持つ人なわけですよね。
それが140文字という短いことばで発信をしていく。
やはりその140文字という限界もあると思うんですよね。
どこかで誤解とか、そういうリスクもあるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「ものすごいリスクですよね。
トランプ氏の手法って、140文字の中で、これがよくてこれが悪いんだ、マルかバツかというのをわかりやすく見せて言っていくわけですが、これはちょっと間違えたらなかなか難しいことがあります。
例えば、先日もありましたが、アメリカは今後、核開発に向かうんだと。
大きな安全保障上の政策の転換なんですが、これを見て、世界がどうなっていくんだと思っているところですね。
ちょうどロシアの方も核開発に動いていく。
要するに、これまで核軍縮の方向だったものがどんどん変わっていく。
それを、あれだけ短くてフォローアップもないことばの中で言って、果たして大丈夫だろうか、世界はどうなっていくのだろう、と見ているところって大きいと思いますよね。」

河野
「それもやはり意図的にやっている部分もあると思いますか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「かなりあると思いますね。
記者会見でフォローアップなしで意図的にグッと見せることによって、いろんな人がびっくりする、驚く、あるいは深読みさせる。
おそらく深読みさせるというところも大きなポイントかもしれませんね。」

トランプ氏とメディア 今後の関係は

鈴木
「そもそもトランプ氏が使っているツイッターって、もちろん一般の人たちが使っているものと同じだと思うんですが、そうするとセキュリティー上の問題などはどうなんでしょうか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「こわいですよね、誰かが乗っ取って、例えば『今から北朝鮮に核爆弾を落とす』なんて言ったら世界が大混乱しますよね。
それはあまりにも極端な例かもしれませんが、誰かがトランプ氏の名前で特定の企業のことを言って株価を操作するとか、これは大いにありえるかもしれません。
なので、今後セキュリティーと安全保障、ツイッターをめぐる安全保障になってくるんでしょうかね。」

河野
「これは大統領に就任した後も続けると見ていますか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「トランプ氏は言っていますよね。
やはりメディア不信ってとても大きいんです。
自分のことばを短く伝えることができるのはやはりツイッターであって、しかもこれまで、先ほどのフォードの例もありましたが、何となく成果が出ているんです。
カッコ付きの成果かもしれませんが。
なので、トランプ氏は引き続きやっていくと思いますね。」

河野
「先ほど、深読みさせるところにも狙いがあるというお話でしたが、例えば外交上で、深読みというのは非常に危険なことですよね。
日本も含めてなんですが、トランプ次期大統領から発せられることになるひと言をどう警戒していけばいいでしょうか?」

上智大学 前嶋和弘教授
「難しいですね。
どんなことを言うだろうと、ツイッターの短い文字から何を感じるか、ほとんど腹芸の世界ですよね、この中で何が見えるかなかなかわからないところで、実際われわれはどうしたらいいかもわからない。

とは言いながら、トランプ氏はビジネスマンであって、最終的には柔軟に物事を考えて くれる可能性はあると。
ですので、トランプ氏の派手な動きを見ながら、落としどころは何だろうかと、われわれはオーバーリアクションせずに柔軟に考えていかなければいけないのかもしれませんね。」

河野
「そこは冷静に見ながら、どこかに妥協点はきっとあるはずだということであたっていくと?」

上智大学 前嶋和弘教授
「そういう見方がいちばんいいのではと思うんですよね。」

河野
「われわれメディアからすると、例えば記者会見をしないという点とか、これまででしたらスポークスマンという人からメディア向けの発表があったりするわけですが、そこがなくて大統領から直接来ると、しかも大統領には接することがなかなかできない。
これ、メディアとしての役割が問われてくるのではという気がするんですが。」

上智大学 前嶋和弘教授
「そうですよね。
アメリカ、もしかしたら世界かもしれませんが、今回が政治とメディアの関係の一大転換期かもしれません。
トランプ氏はツイッターを飛ばすわけですが、ツイッターの向こう側にいる人たちというのは、トランプ氏を支援する人たちなんですよね。
もちろんトランプさんを支援しない人たちはツイッターを読まないので。

メディア研究で『選択的接触』ということばがあるんですが、これはどういうことかというと、自分の好きなものしか見ない。
要するに、トランプ氏がつぶやいたものは人々に広がっていくんですが、一部でしかないわけなんです。
ただ一方、既存のマスメディアがやることはそういうことではなくて、バランスをとって、政権が、政治が何を言っているんだろうか。

『ウォッチドッグ』ということばがあります。 政府や政権の、権力の監視役なんですが、これをするのが既存のメディアなんです。
しかし、既存のメディアと、選択的接触の小さな枠の中の、この差はやはり大きいですよね。
トランプ氏はこの既存のメディアのウォッチドッグの機能を、なるべく低くしよう、少なくさせようとしています。
そして自分の仲良しグループの中で相手を引きずり込んでと、こう考えているところがあります。
メディアにとっても大きな試練だと思います。」

“トランプ砲” 今後どうなる

河野
「今もお話がありましたが、トランプ氏はツイッターをこれからも使い続けるということになると、例えば日本時間の明後日(12日)の未明に当選して初めての記者会見を予定しているわけですが、ツイッターではなく、初めて自分のことばでどのようなことを言うのか、メディアとトランプ氏の関係がどうなるかを占う意味でも注目されるのではないかと思います。」

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