2017年1月11日(水)

オバマ大統領 最後に語った「未来への思い」

河野
「世界に大きな影響を及ぼしてきた、アメリカ大統領の“ことば”についてです。」

第16代大統領 エイブラハム・リンカーン
“人民の人民による人民のための政治”


 

第35代大統領 ジョン・F・ケネディ
「アメリカ国民諸君、『国が何かをするか』ではなく、諸君が『国に何をするか』を自問してほしい。」



 

第43代大統領 ジョージ・W・ブッシュ
「悪の枢軸は世界平和の脅威だ。」



 

世界を動かしてきたアメリカ大統領の“ことば”。
この2人も…。

オバマ大統領
「YES!We Can!」

トランプ次期大統領
「アメリカを再び偉大な国に。」

アメリカを熱狂させました。
大統領の“ことば”の力を、今日(11日)は読み解きます。

鈴木
「そのオバマ大統領が、日本時間の今日・昼前、任期中最後の演説を行いました。」

河野
「最後に語ったのは、過去8年間の国民への感謝。
そして、トランプ次期政権を意識した『未来への思い』でした。」

8年間の「理想」「現実」 オバマ大統領 最後の演説

地元・シカゴで行った最後の演説。
オバマ大統領がまず述べたのは、国民への感謝のことばでした。



 

アメリカ オバマ大統領
「私は普通の人たちが物事に関わり結束した時に、『チェンジ』が起きることを学んだ。
大統領として8年がたった今も、そのことを信じている。」

そして、大統領選挙で社会の分断が深まる中、今後も多様性を尊重し、民主主義を機能させることが大事だと呼びかけました。

アメリカ オバマ大統領
「未来はわれわれのものだろう。
しかし私たちの潜在力が現実のものとなるのは、民主主義が機能し、政党や利害にかかわらず、私たち全員が共通の目的を再び持とうとしたときだけだ。」

「あと4年!あと4年!」

アメリカ オバマ大統領
「それはできないよ。」


 

8年前、「変革」を掲げ、黒人として初めて大統領に就任したオバマ大統領。

巧みな演説に…。





ユーモアもある、分け隔てのない人柄。
いわゆるマイノリティーから圧倒的な支持を受け、語り続けたのが「理想」でした。



 

アメリカ オバマ大統領
「黒人も白人も、ヒスパニック系もアジア系も先住民も、若者も高齢者も、貧しい人も裕福な人も、障害のある人も同性愛者も違いはない。
アメリカで成功するチャンスは誰にでもあるんだ。」

国内では、医療保険制度改革、いわゆるオバマケアに着手。
国民皆保険に向けた法整備を進めました。





「核兵器のない世界」も『理想』の1つでした。

アメリカ オバマ大統領
「核のない平和で安全な世界を目指す、アメリカの姿勢を明確に表明する。」



 

ロシアとの間で戦略核兵器削減条約を締結するなどして、ノーベル平和賞を受賞。





現職のアメリカ大統領として初めて、被爆地・広島を訪問しました。


一方で、厳しい現実にも直面しました。

イラクやシリアでは過激派組織IS=イスラミックステートが台頭。





ウクライナ情勢をめぐって、ロシアとの対立も深まりました。





海洋進出を進める中国に対しては、有効な対策を打ち出せませんでした。





さらに、トランプ氏が次期大統領に当選したことで、政治的な遺産=レガシーが覆される可能性もあります。
今日の演説でオバマ大統領は、トランプ次期大統領が「でっち上げだ」と述べている地球温暖化について、今後もいっそうの対策を呼びかけました。



 

アメリカ オバマ大統領
「(気候変動の)問題を否定するのは、将来世代に対する裏切りであるばかりでなく、技術革新や現実的な問題解決といった、国の最も重要な精神に対する裏切りだ。」


 

また、今のアメリカの風潮を嘆く発言も…。

アメリカ オバマ大統領
「真偽がどうだろうと、自分に合う情報しか受け入れないようになってきている。
政治とは意見のたたかいだ。
民主主義はそうつくられている。」

『理想』と『現実』のはざまで揺れ続けた8年間。





支えとなったミシェル夫人への感謝のことばでは、こんな場面も…。





トランプ次期大統領への「変革」を選択したアメリカ国民へ。
オバマ大統領、最後のメッセージです。

アメリカ オバマ大統領
「公平で公正、そして包括的なアメリカを皆さんは信じているだろう。
絶え間ない変化はアメリカの特質で、恐れるものではなく、喜んで受け入れるものだ。
皆さんには、民主主義のこの困難な仕事を推し進める意志がある。
大統領としての最後のお願いだ。
皆さんが8年前、私に賭けてくれたときにお願いしたことと同じことだ。
どうか信じてほしい。
『変化』をもたらすのは私の力ではなく、皆さんの力だということを。
そして、われわれの建国の文書に記された信義をしっかり守ってほしい。
奴隷や奴隷廃止論者たちが掲げた理想を。
移民や入植者、正義のために行進した人々が唱えた精神を。
外国の戦場に、そして月面にまで旗を立てた人々によって再確認された信念を。
未来あるすべてのアメリカ人の心にある信念を守ってほしい。

私たちにはできる。
そう、私たちは成し遂げた。
だから、私たちにはできるんだ!」

オバマ氏からトランプ氏へ 対照的な2人 特徴は

鈴木
「河野さんはオバマ大統領に直接インタビューした数少ない日本人ジャーナリストの1人ですが、この8年間を振り返って、オバマ大統領の『ことばの力』をどう思いますか?」

河野
「先ほどの演説もそうですけど、やっぱり力強いですよね。
あえてキーワードで言うと、『理想』や『希望』というものをよく考え抜いた表現で語るというイメージですね。」

鈴木
「印象に残っていることばはありますか?」

河野
「大統領になる前の、2004年の有名な演説ですが、“黒人のアメリカも、白人のアメリカも、ラテン系のアメリカも、アジア人のアメリカもない。あるのは合衆国だけだ”。」

鈴木
「これは覚えてますね。」

河野
「とにかくオバマ大統領は、多様性を尊重して、違いがあっても力を合わせようという考え方は非常に一貫していて、それは、例えば敵対する国に対しても対話を呼びかけていくという外交姿勢にも表れていたと思います。
ただ、そうした理想への期待が高かった分、国民の失望も深まってうまくいかなかった。
結局、『ことばで訴えるだけで実行できなかったじゃないか』という不満が、8年間ずっと溜まってきたという面は無視できないと思うんですね。」

鈴木
「その不満が、今回の大統領選挙で、同じ民主党のクリントン氏の敗北につながったというところもあるんでしょうか?」

河野
「それもあると思いますね。

一方でトランプ氏のことばを見てみますと、オバマ大統領とは非常に対照的で、あえて言えば、狙ったところもあるんですが、『子どもっぽい』『攻撃的』な表現というところはあると思います。」

鈴木
「トランプ氏が何か発言するたびに、多くの批判もありましたよね。」

河野
「『いんちきヒラリー』『イヤな女』『うそつきメディア』などと表現して、これを何度も繰り返して、たたみかけるように使っていく手法ですね。
しかも、事実関係に間違いが多かったりもするわけです。」

鈴木
「ことばが乱暴だったり、間違っていることもあるんですが、でもトランプ氏は支持を得ているんですよね。」

河野
「なぜ、そうなるのか。
トランプ氏が間違った事実を語ってもそれほど信用を失わずに熱狂的な支持を得られた、その背景を探りました。」

“トランプ氏こそ真実” 時代はフェイク=偽へ

リポート:禰津博人

トランプ氏 支持者
「トランプ氏を心から信じている。
信頼できる唯一の人だ。」

トランプ氏 支持者
「トランプ氏のことばは率直だ。
アメリカを偉大にしてくれる。」

支持者は、トランプ氏のことばに絶大な信頼を寄せています。

トランプ氏
「わが国の商業メディアは、まともな報道をしていない!

政治的な特権を持っているやつらと変わらない!
メディアは国民のためでなく、自分たちの権益を追求している!」



 

米ABCの記者
「独特な熱気があるよ。
アメリカ政治で見たことがないような雰囲気だ。」


 

メディア批判を続けるトランプ氏。
支持者の間では、かつてないほど既存メディアへの不信感が高まっています。

こうした中、急速に広がっていったのが、「フェイクニュース=偽のニュース」です。
ネット上で、あたかも本物のニュースサイトであるかのように装って掲載されています。

中には、大手メディアのニュースサイトをまねたものや…。





「ローマ法王もトランプ氏を支持」という間違った情報。





「クリントン氏がIS=イスラミック・ステートに武器を売却」というフェイクニュースもありました。
こうした偽の記事は、SNSなどを介して急速に広まっていきました。




例えば、この「クリントン氏のメール問題を捜査するFBI捜査官が無理心中した」というフェイクニュース。





わずか10日間で160万人以上が閲覧しました。
毎分100人近くがSNSで共有し、拡散したとされています。
大統領選挙では、こうしたサイトが大量に立ち上げられ、有権者の判断に影響を与えた可能性も指摘されています。



トランプ次期政権の大統領補佐官に指名されているフリン氏も、フェイクニュースを拡散していました。
「クリントン氏が児童売春組織に関与している」という間違った情報です。
フリン氏のツイッターです。


 

“ニューヨーク市警が関心。
クリントン氏のEメールに子どもへの性犯罪が…。
必ず読んで!”

この偽のニュースを信じた男が「児童売春組織の拠点」とされたレストランを銃を持って襲撃する事件にまで発展したのです。




 

「残念なことに、ニュースと嘘(うそ)の見分けが付かない人もいる。
『偽のニュース』でなくただの『嘘』。
考えることすらしない人々がいるの。」


 

実際、トランプ氏の支持者にはこんな人もいました。

トランプ氏 支持者
「クリントンは児童売春組織を持ってる。
子どもたちにひどいことをしてるんだ。
奴らは児童売春に関わってる。
捜査して刑務所にぶち込め!」
 

ネットを通じて広がる、真実かどうか分からない情報の数々に、専門家は警鐘を鳴らしています。

ジョージワシントン大学 ニッキー・アシュア助教授
「最も懸念すべきは、彼らが『偽のニュース』こそ『本当のニュース』だと思っていることなのだ。
今はトランプ氏のツイッターをジャーナリストも国民もフォローしており、メッセージは同時に届けられるため、内容をチェックし反映する機会が失われている。
ジャーナリストにとっては、政府の活動をかみ砕いて説明するという役割が難しくなっている。」
 

何が事実かという境界線が、もはやあいまいになった社会。
その危うさが見えてきました。

「真偽」顧みない時代 その危うさとは

鈴木
「うそのニュースがこれだけ受け入れられていたり、過激なことばが飛び交ったりしている現状を見ると、報道に携わる1人として、なんだか複雑で情けない気持ちになりますね。」

河野
「私もアメリカのメディアに何人も知り合いがいるんですが、大統領などの権力者を監視し、多様な意見を伝えることで国民の知る権利に応えているという自負を持っているように感じるんです。
ところが、そのメディアを信用しない人がここまで増えているというのは正直驚きましたね。
オバマ大統領は最後の演説で、『真偽がどうであろうと、自分に合う情報しか受け入れようとしなくなっている』と最近の風潮について警鐘を鳴らしていますが、このままだと異なる意見を尊重するという民主主義の根幹に関わる部分が危うくなっていくのではないかという心配すらしてしまいますね。」

鈴木
「そのトランプ次期大統領ですが、このあとまもなく、日本時間の午前1時から、当選後、初めてとなる記者会見を行います。」

河野
「ツイッターでの一方的な情報発信に頼ってきたトランプ氏が、記者たちとどんな受け答えをして、どんなことばで何を語るのか、注目したいと思います。」

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