2017年5月11日(木)

ダウン症がある子と母 思い写して

有馬
「さて、今月(5月)14日は母の日です。
それを前に、ある写真展が開かれています。」

桑子
「こちら、映っているのは母と子。
共通しているのは、お子さんにダウン症があるということです。
子を育てる母の思いに焦点をあてたかったという、この写真展。
お母さんたちはどのように撮影にのぞんだのでしょうか?」

母の思いを写す ダウン症のある子を育てて

リポート:瀬古久美子(社会部)

多くの若者が行き交う街、表参道。
写真展が行われているのは地下鉄の駅のコンコースです。
展示されているのは母と子の写真。
全部で21組の親子です。

しっかりと前を見据えるまなざし。
多くの人が足をとめています。

「すばらしいと思う。
障害があっても一個人の個性だと思うので。」

「お母さんたちがすごくきれい。
りんとしたお母さんたちだな。」

写真展を企画した、カメラマンの宮本直孝(みやもと・なおたか)さんです。
これまで日本に住む難民や障害のあるアスリートなどの撮影を行ってきました。

今回モデルに選んだのは、ダウン症がある子とその母親。
1枚の写真で、それまでの母と子の人生や心の内面を表現したいと考えたといいます。

カメラマン 宮本直孝さん
「お母さんたちがどういう人かわからないが、たぶんすてきなんじゃないか。
(彼らを)すてきに撮ってみたい、それが僕の力試しでもある。」

撮影に参加した母親の1人、歌手のMIMOさんです。
ダウン症がある13歳の娘を育ててきました。
娘とのいい記念になると軽い気持ちで参加したというMIMOさん。
しかし、カメラマンの宮本さんからは、「笑顔はつくらないでほしい」と意外な注文をうけました。

MIMOさん
「“まず、きれいに撮られようと思わないことだな”と言われた。
今までつらいこともあった、悲しいこともあった、その月日をこの1枚におさめるんだよって、そう言われた。」

戸惑いながらカメラの前に立ったMIMOさん。
撮影が進むにつれて、次第につらかった時を思い出しました。
病気がちの娘が入退院を繰り返し、不安にさいなまれた日々。
周囲の反応を気にして、娘が7歳になるまでダウン症のことを人に伝えることができませんでした。
涙がこみあげてきた時、撮影中の宮本さんから「前を向こう」と声をかけられたといいます。
その直後に撮影されたのが、写真展に出されたこの1枚でした。

苦しかったけどそれをのりこえてきた。
娘がいるから今の自分があると、あらためて気づかされたといいます。

MIMOさん
「いろんなものを受け入れている表情というか、私を全部脱いでいったら、残った一番芯の部分というのは、やっぱり娘なんだなと。
この子が中心になって私ができあがっていると気づけた。」

笑顔で撮影に応じた母親もいます。
都内に住む古市理代(ふるいち・みちよ)さん。
13歳の息子・裕起(ゆうき)くんです。

古市理代さん
「きょう何した?」

息子 裕起くん
「体育。」

古市理代さん
「あしたが体育だね。」

ダウン症のことを多くの人に理解してほしいと撮影に参加した古市さん。
撮影現場では、他の人と同じように「これまでの人生を思い出して笑顔をつくらないで」と告げられました。

カメラマン 宮本直孝さん
「ほんのちょっと強さを。」

古市理代さん
「笑顔じゃないとなったとき、どういう表情をしていいかすごく戸惑った。」

言葉を覚えるのがゆっくりで、予測できない行動をとることもあったという裕起くん。
不安を抱えながら訪れた地元の幼稚園で、「裕起くんを一緒に育てましょう」と受け入れてもらえたことを思い出しました。
今通っている中学校でも、友人や先生たちがいつも温かい言葉をかけてくれます。
周囲の人たちから支えられて日々、成長している息子を思うと、厳しい表情をつくることができませんでした。

古市理代さん
「今の気持ちを出して下さいと言われたので、正直に、今つらさはないと言った。」

古市さんが優しくほほえむ写真。
いかに自分が周囲に支えられてきたか、改めて気づいた瞬間でした。

古市理代さん
「これから先、いろんなことが起きるかなというようなワクワク感が出ている表情だと思って。
(障がいのある子でないと)気づけない幸せがあったり、気づけないおもしろさがあったり、(これからも)すごく豊かな人生を歩めるのではないかなという気づきがあった。」

撮影された21組の母と子の表情。
そこには、それぞれの親子が歩んできた道のりが映し出されています。

母の思いを写す ダウン症のある子を育てて

桑子
「『笑顔をつくらないで』と言われて、でも最終的に行きついたのは笑顔だった。
ただ、この表情、そしてその瞳にはとても深いものを感じますよね。」

有馬
「障害のあるお子さんと一緒に歩んでいくことには、さまざまな苦労や不安があると思いますが、古市さんは『ワクワク感』とおっしゃってましたよね。
これからも一緒にずっと豊かな人生を歩んでいきたい、そういう社会であってほしいという希望が込められているように思いました。」

桑子
「この写真展は、東京メトロ表参道駅のコンコースで今月14日・母の日まで行われています。」

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