2018年1月5日(金)

脱北者が明かす 知られざる実態

有馬
「北朝鮮の社会は今、どうなっているんでしょうか。
北朝鮮に残る人たちと今も連絡を取り合っている脱北者を取材してきました。」

有馬が迫る脱北者のいま 核開発 人々の不安

生々しい今の北朝鮮の様子を知る人がいる、そう聞いて訪ねました。

3年前に脱北した、この女性。
北朝鮮には、今も兄弟や家族が残っているため、身元を明かすことはできません。
しかし、中朝国境にいるブローカーを通じて、今も北朝鮮の家族と連絡を取っていると教えてくれました。

有馬
「北朝鮮の人たちは、今の北朝鮮の政府について、どう思っているんでしょう?」

3年前に脱北した女性
「生活が苦しく、市場で野菜を売る人まで、“もう政権は崩壊したらいい”と言っている。
昔は、こうした発言をすると逮捕された。
でも最近は、これくらい言っても捕まらないようだ。」

厳しい統制が末端の人たちにまで行き届いていない。
初めて聞く話に驚きました。
北朝鮮北東部出身の、この女性。
夫に先立たれ、1人息子が病気になりました。
その治療費を稼ぐために脱北したのだといいます。

3年前に脱北した女性
「お金が無くて、人身売買のルートで脱北した。
私は血の涙を流し、息子と約束した。
“必ず助けるから待っていて”と。」

女性は今、激しい頭痛に悩まされています。
その原因と考える出来事が、北朝鮮に住んでいたころにありました。

朝鮮中央テレビ(2013年)
「(我が国は)3度目の核実験を成功裏に行った。」

2013年、北朝鮮が故郷の村の近くで核実験を行ったのです。

3年前に脱北した女性
「ニュースを見て初めて、自分の故郷が核実験場だったと知った。
市場に行くと、みんな万歳をして喜んでいた。
当時は私も、核兵器をつくれる祖国を誇りに思った。」

女性は韓国に逃れた後、初めて、放射性物質が人体に悪影響を及ぼすことを知りました。
自分や息子の体調不良も、それが原因かもしれない、そう思うようになったと言います。
故郷に残る病気の息子に十分な仕送りもできず、悲しみを募らせています。

3年前に脱北した女性
「落胆する私に息子は言った。
“お母さん、僕が死んだら楽になるのにね”と。」

健康の不安と苦しい生活。
核開発の罪深さを、改めて感じました。

“情報”往来の実態

取材を進めていくうちに、北朝鮮の人たちは考えていた以上に、外の情報に接していることが分かってきました。

有馬
「こんにちは、有馬といいます。」

ユ・サンジュンさん、54歳です。
16年前に脱北し、今、ソウルの郊外で1人暮らしをしています。
ユさんは、今も北朝鮮に出入りする中国人を通して、故郷の様子を確認していました。

見せてくれたのは、先月(12月)入手したばかりの写真です。
牛が引く車で荷物を運ぶ人。
人々が苦しい生活を強いられる様子が映っていました。

有馬
「住宅から湯煙というか、煙が出てもおかしくないんですけど、煙が全然出ていない。」

ユ・サンジュンさん
「燃料が不足しているから、(煙があるのは)ご飯を炊くときだけ。
石炭を燃やすゆとりもない。
木も石炭も貴重だから。」

ユさんは、北朝鮮の人たちに外の状況を伝える活動を続けてきました。
食品や生活物資など、北朝鮮で手に入れるのが難しいものを、定期的に送り届けています。

有馬
「ラーメン、インスタントラーメン。
結構重いですね。
これ何キロですか、ユさん。」

ユ・サンジュンさん
「4.5キロくらいです。」

物資の1つ1つにシールで貼り付けられたメッセージ。
「あなたを愛している」と書かれています。
北朝鮮の外には、彼らを支えたいと思う人がいることを伝えたいのだと言います。

この物資を大きな風船にくくり、風に乗せて、北朝鮮に送ってきました。
さらに意外なものも送っていました。
USBメモリーです。

有馬
「このUSBメモリーの中に、韓国の映画とか音楽が入っていると。」



韓国の新聞や文化に関わる情報を、USBメモリーに保存して送っているのです。

ユ・サンジュンさん
「小さな動きでも、いつか大きな波になる。
北朝鮮に残る人たちに真実を伝え、自由を見つけられるようになってほしい。」

有馬が迫る脱北者のいま

元日のソウル。

脱北者たちが集う新年の催しがあると聞き、訪ねました。
故郷に残る家族や友人を案じる人たち。
せめてこの日だけはと、悲しみを忘れようとするかのようにも見えました。

脱北者
「寂しさを紛らわせるために集まる。
ここでは、故郷の人たちに会える。」




北朝鮮を逃れる人の数は増え続けています。
韓国で暮らす脱北者の数、3万1,000人あまりに上っています。

どう向き合うべきか

桑子
「本当に厳しい暮らし、そして切実な状況っていうのが、お2人の方を取材して、とても私も伝わってきました。」

有馬
「今、映像では紹介しきれない過酷な暮らしを送っていらっしゃるんですよね。
経済は、以前と比べれば改善していると言われているんですけれども、厳しい状況は変わりません。
北朝鮮は、外の世界に対しては強さを誇示して、主導権を持っているかのようにアピールしているんですけれども、足元の国民は、このように結束しきっているわけではない、完全に心は離反しているように見えました。
これからも北朝鮮はさまざまな手段で駆け引きを仕掛けてくるんだと思います。
そのとき、北朝鮮の実態を把握した上で臨んでいかなければいけないなと、改めて思いました。」

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