2018年4月4日(水)

陸上自衛隊 創設以来の組織改編

有馬
「日報問題で揺れる陸上自衛隊で、創設以来、最も大規模な組織改編です。

陸自に「陸上総隊」発足 全国一元運用へ

陸上自衛隊の司令部がある、朝霞駐屯地。
ここで今日(4日)、全国の陸上自衛隊の部隊を一元的に運用する新組織「陸上総隊」の発足式典が行われました。

陸上自衛隊はこれまで全国を5つの地域に分けて「方面隊」という組織が置かれており、それぞれが地元自治体と連携を図っていて、一元的に運用する組織はありませんでした。

今回の「陸上総隊」の発足により全国の部隊運用が一元化され、防衛省はより速やかな部隊の展開が可能になるとしています。

陸上総隊 初代司令官 小林茂陸将
「責任が大きい以上、シビリアンコントロールのもと、付与されている権限にもとづいて部隊を運用していくのが私の責務。」

陸上総隊は、中国が海洋進出を強めていることなど、日本を取り巻く安全保障環境の変化を受けて、部隊をより柔軟に運用する必要があるとして発足しました。

陸自に「陸上総隊」発足 「権限集中」に懸念も

一方で、組織改編には懸念も。
それが「権限の集中」です。
戦前に軍部が政治への強大な影響力を持った反省から、自衛隊の権限の集中に関わることは慎重に検討されてきました。

今回の陸上総隊の発足について、防衛大学校の学校長を務めた五百旗頭真(いおきべ・まこと)さんは…。

五百旗頭さん
「重大な、全国的に出動の必要があるとき、機能的に対応する体制が遅ればせながらできた。」

その上で…。

五百旗頭さん
「自衛隊は日本における最高の実力機関。
視野の狭い自己意識、組織の保身に走る、あるいは政治へのそんたくがゆがんだ方向に行き、筋を誤る危険は常にあり、それは避けるようにしっかりやっていかなければいけない。」

変化は空自・海自でも

さらに、変化しつつあるのは陸上自衛隊だけではありません。
航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機、「F35A」。
これに射程500キロの長距離巡航ミサイルを搭載することなどが計画されています。

2つ目は、海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」。
改修し、戦闘機を発着させることなど新たな運用方法が可能か検討されています。

変わる自衛隊 続く憲法議論

有馬
「自衛隊と密接にかかわるのが、憲法9条です。
その9条で定めているのが…。」

桑子
「『戦争の放棄』『戦力の不保持』『交戦権の否認』です。」

有馬
「自衛隊が、この『戦力』にあたらないのかどうかなんですが、政府の見解はこうです。

桑子
「『我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織。憲法に違反しない』ということですね。」

有馬
「つまり、自衛隊は『戦力ではない』と。
この9条と自衛隊をめぐる議論が、今、大きく動き始めています。」

自民 憲法改正の方向性 市民はシンポジウムも

先月(3月)22日、憲法改正の方向性をまとめた自民党。
3日後の党大会では、「自衛隊の明記」など4項目で憲法改正実現を目指すとして、衆・参両院の憲法審査会で、幅広い合意形成をはかるなどとした今年の運動方針を決定しました。

市民の間でも議論が行われています。
先週、都内で行われたシンポジウムです。
専門家や市民など、およそ50人が9条をめぐって意見を交わしました。

参加者
「現実に自衛隊という組織は存在しているので、自衛隊の存在を否定するのは現実的ではない。
護憲的改憲ですか、それをもう少し進化させていく方向がいいのでは。」

参加者
「国民が判断する対象がまだ整理されてない。
よくわからない形で出されようとしているような気がして。」

自民 憲法改正の方向性 注目点は

桑子
「さまざまな意見がありますね。」

有馬
「議論が動き出していますね。
VTRに出てきた自民党の憲法改正の方向性が、こちらです。

条文案なんですが、今の9条1項・2項はそのまま残して、新たに『9条の2』を設けるという考えなんです。
注目したいのは、ここです。
『実力組織として』『自衛隊を保持する』。」

桑子
「『自衛隊』という文言が明記されているんですね。

有馬
「『自衛隊』を明記したこの案をどうみるか。
9条の改正をめぐり考え方が異なる、2人の専門家に聞きました。」

専門家はどうみる

『改正議論を進めるべき』 九州大学 井上武史准教授
「9条については自衛隊が違憲かどうかというのは60年間ずっと争われてきた。
思うんですよね。
現在も決着がついているとは言いがたい状態。
ただ、実態としては存在している。
自衛隊に対する違憲の疑い、これを払しょくするという意味での改憲というのは、目的としては許容されるのではいか。」

『9条の改正に慎重』 北海道大学 高見勝利名誉教授
「最高規範としての憲法を維持するためには、不必要な憲法改正は絶対やらないという前提で、(自衛隊の)違憲論をなくすために変えるということは意味のないこと。
権力に対する縛りということを、どういうふうに変えていけばいいのか、変えなければどういう不都合が生じるか、その説明がない限り憲法改正は必要ない。」

桑子
「そもそも9条の改正は『必要』『必要ない』と、意見が分かれていましたね。」

有馬
「ただ、井上さん、高見さんともに、この条文案で注目すべきだと指摘したのは同じ文言だったんです。
それが、ここです。
『必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織』。
さっき紹介した政府の見解と比べてみましょう。」

桑子
「『自衛のための必要最小限の実力組織』。」

有馬
「一見似ていますが、ある文言がありません。」

桑子
「『必要最小限の』という文言がなくなっていますね。」

有馬
「この点について、お2人の考えを聞きました。」

『改正議論を進めるべき』 九州大学 井上武史准教授
「新しい案というのは『必要最小限度』という、いちばん肝のところを外している。
改憲によって提示された条文によって何を実現しようとしているのか、もうちょっと議論とか審議で明らかにし、そこを深めて、そのことを国民に問うのが本来だと思う。」

『9条の改正に慎重』 北海道大学 高見勝利名誉教授
「戦力に至らない、そういう自衛のために必要最小限度の実力ということに、いわば限定してきた。
その限定してきた部分がいわば取り払われ、(自衛隊が)実力組織においても大きくなる。
どういう思いで、この9条のある憲法を運用しようとしたのかという、そういう原点に立ち返って問題を考える必要が出てくる。」

変わる自衛隊 憲法議論は

桑子
「これから議論を深めていくことが必要ということですね。
ただ今回、日報の問題で自衛隊への信頼が大きく揺らいでいますよね。」

有馬
「憲法9条、そして自衛隊のあり方、私たちにとって大切な問題を考える上では、自衛隊が信頼される組織であることが大前提です。
そこが問われています。」

Page Top