2018年4月6日(金)

身元保証人がいないと…

桑子
「頼る家族がいなくて、『身元保証人』もいない。
そんな人は入院も手術もできないおそれがあるという実態が明らかになりました。」

有馬
「この番組でも以前、保証人がいないと住宅が借りられないという厳しい現実をお伝えしましたが、医療の現場でも…なんですね。」

桑子
「頼る相手がいない人たちに、今、何が起きているのか。
取材しました。」

医療が受けられない? 身元保証人がいないと…

リポート:飯田耕太(ネットワーク報道部)

山之上巌さん、78歳。
がんを患っています。
今年(2018年)症状が悪化し、入院して治療を受けようとした際、病院から「身元保証人が必要だ」と言われました。
かつて、家族3人で暮らしていた山之上さん。
息子の友一さんは、のどのがんを発症し、一昨年、47歳の若さで亡くなりました。
妻の幹子さんは重い認知症を患い、入院しています。
身元保証人になってくれる家族はいませんでした。
山之上さんは、「保証人は立てられない」と病院側に説明。
しかし、「できるかぎり用意してほしい」と迫られました。

山之上巌さん
「本当に(身元保証人が)いないと言ってもわかってもらえない。
“決まりになっていますから”と言う、病院は。
どうしても書かないわけにはいかなくなって。」

「このままでは治療が受けられない」。
最後の頼みの綱としてすがったのが、身元保証を引き受ける団体です。
預託金を含めおよそ60万円を支払い、身元保証や生活支援などのサービスを受けることにしたのです。

山之上さんが契約した一般社団法人「えにしの会」。
前身の団体は、高齢者を対象に訪問サービスなどを行ってきましたが、お年寄り本人や福祉関係者から「身元保証人がいなくて困っている」という相談が相次ぎ、6年前から身元保証サービスを始めました。

一般社団法人『えにしの会』 笠井久仁彦所長
「保証人のことで困ったことがある、身寄りがない方がどうすることもできない。
少しずつ支援していく中で広まっていった。
前年比1.5倍のペースで今(身元保証の)会員が増えている。」

去年(2017年)、第二東京弁護士会が行った調査では、東京都内の病院の実に9割以上が、入院時、身元保証人を求めると答えています。
その理由は、「医療費の支払いの保証」や「亡くなったあとの対応」などでした。

手術にも“身元保証人を”

「身元保証サービス」によって入院できた山之上さん。
足の骨に転移が見つかり、手術が必要になりました。
すると今度は、手術の説明の際にも保証人に同席してもらうよう求められました。

医師
「異物を入れる、切るという手術。
手術から1か月以内、それを入れて生活してもらうので、半年たった時でも感染症のリスクがある。」

さらに、全身麻酔を伴う手術の当日も、保証人が立ち会うよう求められたのです。

医師
「麻酔をかけた時に、呼吸困難が起きるというのは誰にでも起き得ること。
そのとき本人は意識がない。」

病院側は、不測の事態が起きた時、治療方針をめぐって患者に近い立場の人に同意を求めたいとしています。

福岡大学病院ソーシャルワーカー 田村賢二さん
「(容体が)急変することがゼロではない。
支援する方が誰もいないとなると、治療方針をどうしたらいいか、本人がうまく判断できなくなった時にそれを一緒に考えてくれる人は必要になる。」

生死に関わる重大な場面に立ち会うことに、身元保証を行う側は戸惑いを感じています。
「えにしの会」では、本人の意向をできるだけ反映させようと、延命措置への考え方などについてあらかじめ綿密に確認することにしています。

一般社団法人『えにしの会』 笠井久仁彦所長
「心臓マッサージや延命に関する質問がある。
それに答えてもらい、自筆で署名をもらっている。
ただ、完全ではない。
事務所なりに手を加えて、その方の意向、尊厳を守りながら対応できるものを作成している。」

そして迎えた手術当日。
山之上さんを担当する支援員が、手術室のそばで待機します。

一般社団法人『えにしの会』 廣渡智実さん
「無事に終わることしか考えていない。
血圧が急に下がったとか、輸血が必要になったとか、連絡が来ることには心構えはしている。」

手術は無事終わりました。
山之上さんの容体も安定しています。

一般社団法人『えにしの会』 廣渡智実さん
「もう安心した、本当に。
責任は重大。」

手術を受けることができた山之上さん。
身元保証人は、なくてはならない存在になりつつあります。

山之上巌さん
「身近にいてもらえるから助かる。
今後もよくつきあっていきたい。」

仕組みづくりが急務

有馬
「山之上さん、良かったですね。
でも、保証人が見つからない、第三者に頼む、こんなケースはこれから増えそうですよね。」

桑子
「今、高齢者の身元保証を行う事業者は全国に100か所ほどあるとみられています。
ただ、すべての事業者が、山之上さんが契約したところのように本人の意向を詳しく確認しているわけではありません。
専門家からは、『家族ではない事業者が本人の意向をどれだけ正確に代弁できるか、それを裏付ける仕組み作りが必要だ』という指摘も出ています。」

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