2018年9月21日(金)

ダムの緊急放流 リスク減らす手だては…

桑子
「西日本豪雨で氾濫した愛媛県の肱川。
上流のダムを緊急放流する異例の措置で、流域は浸水。
8人が犠牲となりました。」

有馬
「豪雨で貯水量がいっぱいとなり大量の水を緊急放流したダムは、今年(2018年)に入り、全国で9つに上ります。
異常気象が頻発する中、緊急放流のリスクを減らす手だてはあるのでしょうか。」

逃げる間もなく…

西予市の、入江須美(いりえ・すみ)さんです。
西日本豪雨で、夫の善彦(よしひこ)さんを亡くしました。

入江須美さん
「まだ全然信じられないんですけど、だんだん本当にいないなって、さみしい部分もあります。」

入江須美さん
「ここに2階建ての奥に長い家があったんですけど。」

濁流で、自宅も流されました。

各地で記録的な大雨となった西日本豪雨。
上流の野村ダムでは貯水量がいっぱいになり、緊急放流。
最大で毎秒およそ1,800トンに上りました。

「野村ダムの放流で、ダム始まって以来の状態になっている。」

川が氾濫し、濁流が住宅を襲ったのです。

「怖い。」

当時、仕事で外出していた須美さん。
自宅にいた夫の善彦さんと連絡を取り合っていましたが、ダムの緊急放流のあと、連絡が取れなくなりました。

入江須美さん
「最後の電話の時に、今、氾濫した、避難、避難って。」

その後、避難しようとして流された善彦さんが、車から見つかりました。

入江須美さん
「ダムに殺されたって一瞬思った。
見つけた時、ダムの水に殺された、これは。
今回は、雨は天災だが、あの水の量の加減はそうじゃない。」

大雨を見越して放流も 野村ダムで何が…

野村ダムでいったい何が起きていたのか。
実は、ダムでは大雨を見越して事前に少しずつ放流を始めていました。
野村ダムの最大の容量は1,270万トン。
確保した空き容量は、およそ半分の600万トン。
過去最大の異例の措置でした。

これは豪雨の前日、7月6日のダムの写真です。
水位にはまだ余裕があります。

しかし翌日には、豪雨により、一気に水位が上昇。
緊急放流の措置に踏み切りました。
ダムの空き容量を事前にもっと増やしておくことはできなかったのか。
住民からは今も、疑問の声があがっています。

住民
「全然納得はしていない。
考えて、少しずつでもいつもより多い分量で流していたら、せっぱ詰まってあれだけあの量を流すことはなかったんじゃないか。」

住民
「早くから流さなきゃいけないのに、思い切りが悪い。」

技術的に可能な最大の放流を行ったとする国土交通省。
放流量を大幅に増やせば、水道水や農業用水として使う分をさらに減らし、住民に影響が出るおそれもあり、難しいと話しています。

四国地方整備局 野村ダム管理所 川西浩二所長
「万が一、渇水になったらどうしようという不安を常に抱えながら(水位を)下げているのが実態。
われわれとしては精いっぱいの(水位)低下をさせていただいたと考えている。」

リスクを減らすために 精度高い雨の予測 最新研究

異常気象が頻発する今、どうしたらダム操作のリスクを減らすことができるのか。
カギとなるのは、精度の高い雨の予測です。
現在、ダム操作の参考にされているのは、主に気象庁の「1日半先」の予測です。
しかし、事前放流するためには、少なくとも3日先の、より精度の高い予測が必要だといいます。
そのための最新研究が進められています。
京都大学の角哲也(すみ・てつや)教授が、日本気象協会と共同研究しているのが、「アンサンブル予測」と呼ばれる手法です。
ヨーロッパの気象予報機関のデータを使い、雨が最も降るケースから最も降らないケースまで、「51パターン」の幅広い予測を「6日程度先」まで立てます。

京都大学 防災研究所 角哲也教授
「洪水に備えて事前に水を放流するためには、(予測が)1日前に分かっても間に合わない。
やはり数日前、2~3日前には、ある程度できる情報がほしい。」

アンサンブル予測による肱川流域の雨の様子です。
雨がピークとなった7月7日午前6時からの3時間雨量を表しています。
その4日前に予測しました。

こちらは、実際のレーダー解析の画像です。
予測の中に、ほぼ同じ画像があります。

予測に基づく累積雨量を、グラフにします。
紫色の線は最も雨が降った場合。
下の黄色の線は、最も降らない場合です。
実際の雨量は、予測された範囲内にほぼ入っていることがわかります。

さらに、こうした予測の信頼性が高まれば、急激な放流を避けることもできるのではないかと、角教授は指摘します。
野村ダムの放流量の、実際のグラフです。
毎秒300トンの放流を行いながら、一気に緊急放流の措置に踏み切ったことが分かります。

しかし、アンサンブル予測を使えば、放流量を徐々に増やすことで、急激な放流が避けられ、ピーク時の量も7割程度に下げられる可能性があることが分かりました。
さらに、避難の呼びかけに関しても、今回のような夜間ではなく、より早い段階の日中にできる可能性も指摘します。

京都大学 防災研究所 角哲也教授
「こういう情報が分かれば、もうダムが満杯になってしまうことが、ある程度の確率で予測できるので、例えば昼間の時間帯に危機感を持った情報を流すことができれば、より人を助けることができるのではないか。」

徹底した検証で…

桑子
「角教授は、西日本豪雨で実際に緊急放流を行った他のダムでもアンサンブル予測を活用した検証を進めています。
国もこうした最新の予測技術を使って事前放流に生かせないか、点検を始めています。」

有馬
「被害を抑えることができたのではないか。
徹底した検証で次の災害に備えないといけません。」

Page Top