2019年2月8日(金)

児童虐待で緊急対策 児童相談所 課題抱える現場

桑子
「児童虐待で緊急対策です。
政府は今日(8日)、児童相談所が把握している虐待と疑われるすべてのケースについて、1か月以内に緊急の安全確認を行うことを決めました。
その対象は、数万件に上ります。」

有馬
「ニュースウオッチ9は、今回、ある児童相談所を密着取材。
そこには、増え続ける虐待の通報にどう対応するのか、課題を抱える現場の姿がありました。」

児童相談所 その現場 押し寄せる相談

岡山県の倉敷児童相談所です。
8時半の業務開始直後から、次々と電話が。

職員
「お母さん、それ今の話?
(子どもが)暴れたのは昨日の話?」

倉敷市など、10の市と町を担当するこの児童相談所。
児童福祉司など55人が、家族からの相談だけでなく、近所の人や警察からの情報提供の電話にも対応しています。
相談は、去年(2018年)2,600件を超えています。

児童相談所 その現場 年々増える虐待件数

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「これが、ひとつの市のエリアの子どもたち(の資料)。」

並んでいるのは、児童福祉司が担当する子ども一人一人のファイルです。
多くが虐待についてのもので、その数は年々増え続けています。
この児童相談所に警察から通告されてきた虐待の件数は、5年前の6倍を超えています。

夫婦間でのDV=ドメスティック・バイオレンスも、子どもへの心理的虐待と判断されるようになるなど、虐待が社会に浸透したことで増えています。
虐待の解決にあたって、児童相談所が最も重視している一つが「家庭訪問」。
つまり、親や児童に直接会うことです。

今井翔馬リポーター
「児童福祉司の方が、前の車に乗っています。
児童相談所が虐待と判断した家庭を、これから2件訪問するそうです。」

会いに行ったのは、以前に親から虐待を受けていた子どもです。
状況を聞き取るだけでなく、家の中に何か変化がないか注意深く観察するといいます。

面談中の職員の声
「前よりよくなった?よかった。
他におうちのことで変わったこと、いいことでも悪いことでも何でもいいのだけど、何かある?」

子どもは現在、親と同居していて“今のところ暴力は収まっている”と答えたといいます。

岡山県倉敷児童相談所 児童福祉司 染川智さん
「今日は“たたかなくなった”と聞かせてくれた。
ひとまず良好な経過かなと。」

今井リポーター
「こうやって面談繰り返すのはなぜ?」

岡山県倉敷児童相談所 児童福祉司 染川智さん
「子どもは親がいなくなってほしいのではなくて、たたかなくなってほしいわけなので、そこを何とか解決に結びつけていくのが私たちの役割だと思っているので、面接を重ねている。」

児童相談所 その現場 最も重要「面談」

児童相談所では、毎日のように予定外の案件が飛び込んできます。
この日は、緊急のミーティングが開かれました。

職員
「第一報があったのが(昨日の)夜の9時すぎ。
夜12時前、結果的に一時保護している。」

前日深夜、親子のトラブルが発生したと警察からの連絡を受け、子どもを一時保護。

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「どうするかってお母さんと話するんだよね、今日するの?」

職員
「今日やります。」

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「時間とかは?」

職員
「時間は調整します。」

“トラブルの背景に、虐待が隠されていないか”、常に注意しなければなりません。

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「お母さんの困り感もいくらか聞いてあげられた方がいいと思うし。
虐待の疑いでいうと、ネグレクト。」

緊急性の高い事案であると判断。
職員は、すぐに子どもが保護されている施設へ向かいました。
子どもとの面談を終えると、今度は車で1時間以上かけて保護者の元へ。
話し合いは、3時間以上に及びました。

実はこの日、職員は別の虐待の面談の予定が入っていました。
その面談は、後回しにせざるを得ませんでした。
家庭訪問や面談の予定は、連日組まれています。
突然の案件が入ると、その分ほかの面談が遅れてしまいます。

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「予約でスケジュールを管理していて、この中に虐待の通告が急に入ってくるとか、何かアクシデントが起きて、緊急に対応がいるということが出てくる。」

増え続ける虐待に対応するため、今、全国の児童相談所では児童福祉司の数を大幅に増やしています。
去年4月時点で、全国に3,252人。
これでも、15年前の2倍近くに急増しています。
政府はさらに、2022年度までにおよそ2,000人増やす方針です。

しかし、児童相談所の所長は、単に児童福祉司の数を増やすだけでは、課題の解決にはつながらないといいます。

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「入ったばかりの人がいきなり難しい問題に1人で対応、これはやっぱり難しい。
複雑な情報を聞いて、その場所で瞬時に判断し、方向性を出す。
虐待なんかまさに難しい問題になる。
そういうところまでは少し時間をかけてトレーニングする必要がある。」

児童相談所 その現場 職員の育成が課題

急務となっている職員の育成。
この児童相談所では、今ある取り組みを行っています。

職員
「今の段階で会わせて、話し合わせても、絶対話し合いにはならないと思う。」

若手職員1人につき、先輩職員を1人配置。
その日担当した面談の内容を詳しく聞き取り、改善点を指摘します。

児童福祉司になって、1年目の金木雄一朗さんです。
担当している家庭との面談を終えた金木さんに、先輩の職員が声を掛けます。

児童福祉司 山添陽子さん
「どんな面接だった?」

児童福祉司 金木雄一郎さん
「家では何して遊びますかと聞いて、お母さんが(子どもは)プラレールが好きといわれて、どんな様子でされているかと聞いたら、楽しそうにしていると思うと。」

指導する上で、特に大切にしているのが、表情やしぐさまで細かく観察し異変を見逃さないことです。

児童福祉司 山添陽子さん
「今、ふと思い返すと、違和感があったり、あらためて、あれってどうなったのだろうとか?」

児童福祉司 金木雄一郎さん
「お子さんに寝癖がついていたのは、何だったのかなと、いま思い返せば。」

児童福祉司 山添陽子さん
「なんだったと思った?」

児童福祉司 金木雄一郎さん
「朝忙しかったり、起きるのぐずったのかなと。」

児童福祉司 山添陽子さん
「私が『こうしなさい、ああしなさい』ではなく、彼自身が自分で体験をつみながら気付いて、判断して、考えて、わからないことは自分で知識を学んで。
そこの手助けになることを日常の中でやっています。」

しかし、こうした育成には時間がかかります。
対応件数は今後もさらに増えていくおそれがあります。
子どもの一時保護からその後の支援に至るまでを任されている児童相談所。
浅田所長は、十分な支援を行っていくために、警察などとの役割分担を進める必要性を訴えています。

岡山県倉敷児童相談所 浅田浩司所長
「警察だとか司法だとか、そういうところがきちっと最初に入って支援関係に結びつける。
そういう形があれば、もっともっと変わってくるだろう。」

児童相談所 課題抱える現場

桑子
「職員の育成をしながら、押し寄せてくる相談に何とか対処しているというのが実態でしたよね。」

有馬
「児童相談所の皆さんは、とにかく精一杯現場に対処していることはわかりました。
ただ、支援が行き届かないということはあってはなりません。
この現状にどう対応していくのか、浅田さんもおっしゃっていましたけれども、児童相談所だけでなく、他の機関の役割も一緒に考えていくべきではないかと思いました。」

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